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『最強のふたり』(新・旧)

'Intouchables' dir. by Olivier Nakache & Éric Toledano, 2011
'The Upside' dir. by Neil Burger, 2017

理由はよく判らないもののアマゾンプライムで500円分レンタルできます券が来ていたので呼ばれるようにまずは古い方の『最強のふたり』を観て、したら今度はアマゾンプライム無料体験を申し込むと1000円分レンタルできますクーポンをそのうちあげます、という表示が出てきて2日ほど悩んでから申し込み、ああそうだ自分にはステファン・ジェームスが足りない、と『ホームカミング』シーズン1を一日で観終わってからさて次、と新しい方の『最強のふたり』を観てみた。

旧『最強のふたり(Intouchables)』はフランスで実際にあった、事故で頸髄を損傷して首から下が動かない大富豪と、その介護人になった貧困層出身の若者の日々を映画化して2011年に本国で大ヒットした。新『最強のふたり(The Upside)』はそれをリメイクした米国版で、2017年には完成してその年のトロント国際映画祭でプレミアされたものの、配給のワインスタイン・カンパニーがハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ告発に伴い経営危機に陥り、今年になってやっと劇場&配信公開された。

どちらの映画でも「ベースとなった実話」と最も違っている点は富豪の介護をするのが黒人に設定されていることで、実際はアルジェリア出身のAbdel Sellouさんという人で、ご本人の写真も見ましたが取り敢えず黒人ではない。が、白人の富豪にぶつける貧困層出身者役として一番わかり易いのは肌の黒い人だろう、と誰もわざわざ表立っては言わないけれど「…だよね」な設定変更ではある。順風満帆な人生を送ってきた白人大富豪がパラグライダーの事故により半身不随になる。こんな死にぞこないの余生を送るよりは早いとこ死にたいし、とか厭世的になってるおっさんのところに、威勢はやたらいいけどリアルライフ詰みかけの若者が(とはいえ旧版で演じたオマール・シーは1978年生で、新版のケヴィン・ハートも1979年生なのでどちらもざっくり30歳台)介護人の応募ってことで来たけど勿論オレを雇わなくていい、求職活動の実績にするだけだから「不採用」ってことで役所に出す書類に署名だけしてくれ、と臆面もなく言うのですっかりシニカルな気持ちの大富豪は「ほほう、これは面白いな」とか思って(どうしようもねえ爺だな)気まぐれにそいつを採用してみる。そうしたらあら不思議…てな話。

あ、どちらのヴァージョンも映画としては楽しく観終えられます。お互いが育ってきたカルチャーの余りの違いが日常の中でぶつかるたび、お互いに「発見」をしてそれが「化学反応」を起こすさまを描くことについては新旧版ともにあからさまな下手は打つような事はないので「おはなし」としては安心して最後まで観られてよかったね、ではあるがしかし、どちらも観終わってどうしても考えてしまうのは、一体いつまで黒人に「粗野で性欲旺盛で下品な貧乏人だけど、心根は優しくて才能もそれなりにある若者」というのを表象させれば気が済むのか?ということ+金持ちの白人おっさんがまるで貴族の如くに平民が暮らす路上に「降りてきたら」超リフレッシュ、というエピソードで感動してていいのか?この先も?メン?の部分ではある。

まあその構造をほぼ「人種だけ」くるっとひっくり返したのが『グリーンブック(2018)』なわけで、時代設定は60年代とはいえあの映画の鈍くてどんくさい感触を思い出せば、これら『最強のふたり』2作のほうがまだアクチュアルではある。舞台を実話に近いフランスに設定した、8年前のオリジナル版のほうが表現としてはずっとラディカルに攻めていた事を思うと、新版はそつなくまとめてはいるものの専らケヴィン・ハート(今年9月に交通事故に遭ってえらいことになったらしいのですがその後どうなったのか)のチャーミングさだけで乗り切った感はあり、あと個人的に出てくるたびに映画を観る脳が一部分バカになってしまって集中できなくなる俳優ナンバーワン、のニコール・キッドマンさんも出ているのですが、今作では割と余計な事を考えずに観られました(髪型がおかしくなかったせいかも知れん)。

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