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絵本『かにむかし』/感想

猿に親ガニを殺された子ガニたちは、
きびだんごを腰につけ、親の仇討ちに出かける。

その道中、子ガニたちはきびだんごを利用して、
ぱんぱんぐり、蜂、牛の糞、
はぜぼう、石臼を仲間にしていき、
猿の家に潜伏する。
そこへ猿が帰ってくると・・・。

4・5歳から。

親ガニの仇である意地悪な猿を
子ガニたちがやっつけるという
痛快な筋はもちろん、
その方法・作戦が面白かったです。

まず、猿がいない間に、
子ガニの仲間たちがそれぞれの位置に潜伏します。
「成功するんだろうか」
「どんなふうに猿をやっつけるんだろう・・・」
というスリルや期待感が膨らみます。

猿を攻撃する場面では、
それぞれの位置取りがピタリとハマり、
子ガニたちの作戦が狙い通りに
実行されていくことが気持ちいいです。

そしてその攻撃方法は、
それぞれの仲間の特徴を
生かしたものになっています。

囲炉裏の灰の中から
「ぱんぱんぐり」が飛び出し、
猿の背中へ跳ねくりかえる。

驚いた猿が水おけに手を突っ込んだところへ、
潜んでいた「子ガニ」たちが
猿の体をじゃきじゃき切る・・・・・・
というように。

これ以上書かないけど、
蜂、牛の糞、はぜぼう、石臼も活躍して、
大満足でした。

『エルマーのぼうけん』、『シナの五人きょうだい』、
『ぐるんぱのようちえん』、そして『かにむかし』と、
最近読んだ名作は、事前に提示されたもの
(道具や特技、作成物、仲間など)が、
物語のクライマックスなどで
次々とその特性を生かしていくという
面白さがありました。

繰り返しの表現も巧みに用いられています。
柿の種が芽を出し、木になり、実をつけ、
熟れるという過程が、
それぞれ繰り返しの表現で語られています。

はよう うれろ、かきのみ、
うれんと、はさみで、もぎりきるぞ

また、ぱんぱんぐり、蜂、牛の糞、
はぜぼう、石臼を仲間にしていく過程にも、
繰り返しの表現が楽しく用いられています。

はじめは「がしゃがしゃ」という
カニの足音だけだったのに、最後には、

がしゃがしゃ、それに ころころ、
ぶんぶん、ぺたりぺたり、
とんとん、ごろりごろりという さわぎになって

と、増えた仲間の独特の足音が積み重なっていき、
仇討ちに出かける一行が賑やかになっていきます。

物語の面白さ、言葉の面白さを
存分に味わえる作品でした。

『かにむかし』
木下順二  文、清水崑  絵
岩波書店、1959年

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