見出し画像

Block Periodizationについて

トレーニングのプランを考える際に、皆さんはどのように組み立てていますか?TrainingPeaksのブログで、ブロックピリオダイゼーションについて紹介されていたので、備忘録としてまとめてみようと思います。

1.古典的なピリオダイゼーションとその欠点

古典的なピリオダイゼーションは、1960年代に広まったそうで、
基礎的な体力を準備する期間:General Preparation(12週~)
競技特異的な準備をする期間:Specific Preparation(4~8週)
試合に向けて調子を整える期間:Peaking(2~4週)
の、三つの期間で構成されています。

期分けしてトレーニングを進めるという考え方は画期的だったのかもしれませんが、広まるにつれていくつかの欠点が明らかになってきました。

試合数の増加
スポーツの商業化が進むにつれて、試合数が増加しました。その結果、Peakingの期間が長くなってしまい、パフォーマンスを維持できなくなってしまいました。

トレーニングのバリエーション不足
特にGeneral Preparationの期間が長く、トレーニングのバリエーションが不足して、トレーニングの刺激に対してプラトーの状態になってしまいがちです。また、精神的にも飽きやすく、モチベーションを維持することも大変でした。

非現実的
General Preparationの期間は、一般的には冬の寒い時期にあたりますが、その期間にボリュームの多いトレーニングを長期間行うことは、かなり難しいことです。仕事や家族との時間を犠牲にしなければなりません。

2.Block Periodizationとは

従来型のピリオダイゼーションの欠点を受けて、ブロックピリオダイゼーションが生まれました。
 ブロックピリオダイゼーションは従来型のピリオダイゼーションよりも、各期間が短く、またそれぞれの期間のトレーニング目標を絞っています。それにより、身体に常に新しい刺激を加えることができ、また複数の試合に向けたピーキングが可能となります。

ブロックピリオダイゼーションは次の三つの期間で構成されています。

蓄積期(Accumulation phase)
次の期に向けて、低強度で高ボリュームのトレーニングを行う期間です。従来型のピリオダイゼーションのベーストレーニングの期間(General Preparation)に近いですが、2~6週間と短めです。

移行期(Transmutation phase)
高強度の練習を行い、蓄積した体力を競技パフォーマンスへと移行する期間です。アスリート各自のリミッターの改善や、試合に特化した練習を行います。精神的にも肉体的にもきつい期間なので、2~4週間と短めに取り組みます。

実践期(Realization phase)
試合に向けてピーキングをして、パフォーマンスを発揮する期間です。8~14日かけて、休息とピーキングを行います。

これらの期間を合計するとわかる通り、一連のブロックは5~10週間と短いです。一つのブロックが20週以上になる従来型のピリオダイゼーションとはだいぶ異なります。

3.Block Periodizationのコンセプトと欠点

ブロックピリオダイゼーションには次のようなコンセプトに基づいています。

トレーニング効果の維持期間
例えば、試合に向けてピーキングばかりしていると、基礎的な体力が落ちてしまいます。また低強度のトレーニングばかりしていると、高強度のパフォーマンスが低下します。
 これらのトレーニング効果は、その強度によって異なりますが、有酸素運動能力のトレーニング効果は25~35日継続します。そのため、それまでの間に試合を実施できれば、向上した有酸素運動能力を生かすことが可能になります。

トレーニングのバリエーション
トレーニングの種類がフェーズごとに異なることで、身体に常に新しい刺激が加わり、プラトーになることなくパフォーマンスが向上し続けていきます。

適切な身体的な負荷
各フェーズでは、一つの能力やスキルにフォーカスしたトレーニングを行うので、身体に適切な負荷をかけることができます。特に上級者のパフォーマンス向上のためには、強い負荷を身体にかける必要がありますが、それを可能にします。
 一方で、期が変わるとフォーカスしている能力やスキルが変わるので、その間に身体をリフレッシュさせることができます。これにより、オーバートレーニングを防止できます。


上記のように、ブロックピリオダイゼーションにはたくさんのメリットがあります。特に忙しいベテラン競技者にとっては、役立つことが多いでしょう。一方で、以下のような欠点があります。

トレーニングモデルが複雑
ブロックピリオダイゼーションはトレーニングモデルを理解するのが大変です。もし理解せずにトレーニングブロックを、過度に細かく変更してしまうと、身体にも良い刺激とはならず、パフォーマンスが向上しません。多分2~3週間は同じターゲットに絞ってトレーニングする必要がある、ということだと思います。

初心者向けではない
ブロックピリオダイゼーションは、中級者以上向けの考え方です。初級者は複雑に考えるよりも、一貫した同じトレーニングを続けた方が、得られるものが多いようです。
 まずは一定のボリュームを乗るようにしてみる。その後は古典的なピリオダイゼーションに取り組んでみる。それで伸び悩み始めてから、ブロックピリオダイゼーションを取り入れる感じで良いでしょう。

4.Block Periodizationの各期間の設定方法

各期間をどれくらいの長さに設定するか決めるためには、トレーニング効果がどれくらい続くのかを理解することが重要です。

この本でも紹介されている通り、運動強度によって、トレーニング効果の残存期間は変わってきます。

有酸素持久力:30±5日
最大筋力:30±5日
無酸素解糖系持久力:18±4日
筋持久力:15±5日
最大スピード(非乳酸性):5±3日

重要な点は、長期間効果が残る能力ほど、能力を向上させるための期間が長く必要であるという原則です。

次に予定しているレースの種類によって、期間の長さは変わってきます。
 例えば長距離レースを予定している場合は、有酸素持久力が重要です。そのため、蓄積期を長くして有酸素持久力をしっかりと高めます。一方で、移行期を長くしてしまうと、有酸素持久力のトレーニング効果が失われる可能性があるので、こちらは少し短めにするということになります。
 一方で、クリテリウムなどの短距離レースを予定している場合は、有酸素持久力よりも無酸素持久力や最大スピードなどの方が重要です。そのため、蓄積期はそれほど長くなくて構いません。一方で、移行期は長くとる必要があります。

実践期の長さは上記の考え方からは少し離れ、長距離レースであれば短め、短距離レースであれば長めにすることがお勧めのようです。
 長距離レースでは、長くピーキングしてしまうと、持久力低下のネガティブな影響が出てしまいます。一方で短距離レースでは、高出力を出すために完全にフレッシュな状態が望ましいので、長めのピーキングでしっかりと疲労を抜くことを意識します。

5.Block Periodization の実践例

ブログではマスターズのシクロクロス選手の例が紹介されていました。

興味深いのは、一般的には冬には長距離を低強度で乗り込んで、春から徐々に上げていく、イメージを持つ方が多いと思いますが、紹介された例では気候の関係で冬はあまり外で走れないので、シーズン最初の蓄積期では室内のテンポ走を中心としている点です。

2~3カ月の蓄積期の後、移行期に入りますが、そこでは2週間の中~高強度(5~10分間、L4強度)のインターバルに取り組んだ後、VO2Max強度のインターバルに取り組んでいる点です(これもおそらく2週間)。これで移行期は終了です。
 ブロックピリオダイゼーションにおいては、高強度に取り組む期間は、結構少ない印象を受けました。でも継続するにはこれくらいの期間、集中して取り組むのが良いのでしょうね。

続いて、このシーズンはレースがキャンセルされたために、再度蓄積期に戻りますが、春になって外をたくさん走れるようになっているので、今度はLSDのような長距離低強度の練習に取り組んでいます。
 ここで特徴的なのは、一度移行期で高強度の練習に取り組んでいることもあってか、高強度でのパフォーマンスを落とさないように、インターバル練習も週1回取り組んでいる点ですね。

6.所感

ここからは個人的な考え方ですが、トレーニングは継続してできることが一番重要だと感じています。辛すぎてトレーニングに取り組めない期間が発生してしまうことや、メニューをこなせない日が続いてしまうこと、あるいはモチベーションが下がってしまって自転車に乗らなくなってしまうことは、パフォーマンスの観点からあまりよくありません。

そうした観点から、ブロックピリオダイゼーションを見てみると、適切な負荷を短めの期間、継続してかけることで、全体的には十分な負荷をかけている、と感じました。少し意識してみると良いかもしれませんね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?