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曲線の長さを測りたい。

初めは原点にある動点$${P}$$の$${t}$$秒後の座標$${(x(t),y(t))}$$が

$$
x(t)=e^{t}\cos{t}-1\\y(t)=e^{t}\sin{t}
$$

で与えられているとする。$${P}$$が$${2}$$度目に$${x}$$軸の正の部分に到達するまでに$${P}$$が動く道のりを求めよ。
                            (早稲田大)

【解法のアイデア】
[その1]
曲線に沿って紐をはわせ、ものさしの上に伸ばせばいいのでは……。

……。

どうにも、具体化の手がかりがない。

[その2]
時刻に応じた位置が与えられているので、これに着目する。
位置から水平方向と垂直方向の各速度を求める。ただし、その大きさ(速さ)を知るには三平方の定理を用いる必要がある。
そして、この値(時刻の変数)を時刻で積分する。

これでいくこととする。以下解答。

【解答】
まずは、原点$${(0,0)}$$を出発することを確認しよう。

$$
x(0)=e^{0}\cos{0}-1=1・1-1=0\\y(0)=e^{0}\sin{0}=1・0=0
$$

確かに、$${(x(0),y(0))=(0,0)}$$である。

2度目に・・・到達する」という日本語の解釈に当惑するが、原点をはなれて一度$${x}$$軸の正の部分を通過し、その次に$${x}$$軸の正の部分に到達するという意味と(ひとまず)解しておこう。さて、

$$
y=e^{x}
$$

のグラフを考えると、$${e^{t}}$$は常に正なので、$${y(t)=0}$$となるのは、$${\sin {t}=0}$$のときに限られる。$${t\gt0}$$においてこれを満たすものを列挙すれば、

$$
t=\pi,2\pi,3\pi,4\pi,…\\x(\pi)<0,x(2\pi)>0,x(3\pi)<0,x(4\pi)>0
$$

であるので、「2度目」は、$${t=4\pi}$$のときである。

次に、動点$${P}$$の$${x}$$軸、$${y}$$軸への射影の移動速度を考える。これは刻々変化しているようなので、$${t}$$の関数であり、原点からの距離、すなわち座標を時間で微分すれば得られる。

$$
\frac{d}{dx}x(t)\\=(e^{t}\cos{t}-1)'\\=(e^{t})'\cos{t}+e^{t}(\cos{t})'+(-1)'\\=e^{t}(\cos{t}-\sin{t})\\\frac{t}{dt}y(t)\\=(e^{t}\sin{t})'\\=(e^{t})'\sin{t}+e^{t}(\sin{t})'\\=e^{t}(\sin{t}+\cos{t})
$$

ここで2つの射影と実際の動点の移動速度との関係を検討すれば、垂直ベクトルの和の関係となっているので、「三平方の定理」により、

$$
\sqrt{\{\frac{d}{dt}x(t)\}^2+\{\frac{d}{dt}y(t)\}^2}
$$

として求められる。
さらに動点$${P}$$の移動した道のりは、微小時間の移動速度を積算した距離となることから、まさに上式の定積分として表現される。よって、求める道のりは、

$$
\int_{0}^{4\pi}\sqrt{\{\frac{d}{dt}x(t)\}^2+\{\frac{d}{dt}y(t)\}^2}\\=\int_{0}^{4\pi}\sqrt{\{e^{t}(\cos{t}-\sin{t})^2\}+\{e^{t}(\sin{t}+\cos{t})^2\}}\\=\int_{0}^{4\pi}\sqrt{2}e^{t}\\=\sqrt{2}[e^t]_{0}^{4\pi}\\=\underline{\sqrt{2}(e^{4\pi}-1)}・・・[答]
$$

【コメント】
今回はやりませんが、増減表を丁寧に書けば、原点から周期$${t=2\pi}$$で渦を巻いている様子がうかがえます。なお、$${\sqrt{2}(e^{4\pi}-1)\fallingdotseq 4.1*10^{5}}$$とその加速ぶりが指数関数級です(あたりまえか)。

今回導出した公式をまとめておきます。覚えましょう。

$$
媒介変数tで座標(x,y)が与えられたとき、\\時刻t_{0}からt_{1}における道のりは、\\\int_{t_{0}}^{t_{1}}\sqrt{(\frac{dx}{dt})^{2}+(\frac{dy}{dt})^{2}}dt\\として得られる。
$$

長さを測るのに、いったん速度を経由するというアイディアが秀逸ですね。

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