「理不尽」という世界で生きる私たち

昨日(5月26日)は、様々な資格の試験日が集中したようで、私の周りでも様々な資格試験にチャレンジされた方が多いようでした。私もその一人です。

今回は、2回目となる試験なのですが、まぁ難しい内容でした。

その前に、試験本番前にテレビ朝日開局記念番組ということで、5夜連続で、山崎豊子さん原作「白い巨塔」が放送され、勉強がてらにチラ見をして、先ほど全部ようやく最後まで見ました。

SNS上では、今回の「白い巨塔」についての批判コメントや山崎豊子さん作品への批判コメントがちょこちょこっと出ていました。

山崎豊子さんの作品の代表作というと「白い巨塔」はもちろん「沈まぬ太陽」「華麗なる一族」「不毛地帯」「大地の子」などたくさんあります。
テレビドラマ化を2回ほどした作品もあります。

私は、テレビドラマで「大地の子」がNHKで放送された時に、初めて山崎豊子さんを知り、ドラマは最後まで見て、原作本も読みました。

あとの作品は、原作本で読んだり、ドラマ化された時にも見ました。

今回は岡田准一さんが財前を熱演されて、昔の医学知識をどう現代の医療知識に置き換えたり、工夫するのかを期待して見ていました。
確かに無理な部分はありましたが、作品で伝えたかったことは、大切にしていてくれたと思います。

しかし、一部の方から「今ではこんなことはありえない」「山崎豊子さんの作品は、過去の恨みから出ているものもありますからね」と批判コメントが出ました。

思うに、小説というのは、作者が受けたつらい思いを反映させる部分は多々あります。もしくは「心の中で叫びたいこと」がたくさん詰まっているものでもあります。いわば、ひとつの小説は、作者の分身です。

山崎豊子さんは、病気で受診した病院でいやな思いをした経験から、取材を重ね「白い巨塔」を生み出しました。ただ、この当時の医療技術や病院内の問題というものは、今と比べるとかなり違って、今の時代に置き換えるにはかなりしんどかったはずです。

「沈まぬ太陽」を最近渡辺謙さん主演で映画化されていますが、あの中で登場する事故は、私が中2の吹奏楽コンクールの地区大会で起きたもので、かなり古い話になります。

「大地の子」は、中国残留孤児になった子供と父と、引き裂かれた時間の中でどう生きていくかという話です。

他にもたくさんの作品を生み出していますが、執筆した時代が違うから、価値観も違うのかもしれませんが、よく読んで欲しいのはどの作品にも、「理不尽さ」というキーワードが埋め込まれていることです。

生きていく中で、自分の満足のいくように生きていけている人って、本当に少ないと思います。「私は自分の生きたいように生きている」という人もいるけれど、実は「世の中の理不尽さ」は、今やもう誰もが背負っていることなのではないでしょうか?

まともなことをしているはずなのに、逆手に取られてしまう。
正しいことをしているはずなのに、裏切られて、とんでもない火の粉をかぶる。

そういう「理不尽さ」は誰もが経験しているのでは?

その中で、自分を貫いて正しく生きていくか、理不尽さに負けて人としては最低なことを知らない間にしてしまう。「理不尽さ」というものは、神様が与えた試練なのかもしれません。

「白い巨塔」では財前は貧しさからの脱出、「沈まぬ太陽」では、会社の労使闘争で裏切りを受ける、「大地の子」では、戦争での親子の生き別れ、他にもエピソードはありますが、自分の生まれや育ちの中で受けた「理不尽さ」からどう生きていくかが描かれているのです。

「理不尽さ」から人はどう生きていくかは、読んだ人それぞれで違います。良書か悪書かは、読者が判断することでありますが、ここまで「理不尽さ」について追求し続けた作家さんも珍しいです。

しかし、今の世の中、大きな大きな理不尽な出来事が起きていて、そして今後私たちは、老後まで無事に生きていけるのかという課題をぶつけられています。

そういう時だから、山崎豊子さん作品がまた注目されたのではないでしょうか?

医療技術やチーム編成、診察の仕方などは、大きく違います。
そこに目を向けるのもよいでしょう。しかし、もっと深く掘り下げて欲しかったのは、財前の生き方を見ることが、一番の作者からの願いだったはずです。

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