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2050年に展示会の「木材廃棄量」をゼロにする試み / JAPANSHOPに試験設置を行って

3月12日から15日に開催されたJAPANSHOPにて、木材を使用せず、従来の木工ブースとほぼ同じ形状製作が可能な「再生板紙構法」によるブースを試験製作し発表を行いました。

同じ形状・レイアウトのブースを「木工」と「再生板紙構法」で製作。

展示会ブースデザインという仕事に携わっていると、毎週にようにビッグサイトで設営→撤去という状況を繰り返しており、撤去時には大量の廃棄物を、会場内で見ることになります。出展社の方の成功が最優先とは言え、このままでいいのだろうか、とはずっと考えていました。

以前、ちょっとしたことがきっかけで日本化工機材さんにお伺いする機会ができ、その際に工場内を見学させていただき、様々な素材を拝見させていただきました。それらを見ると、木工という素材そのものを置き換えることができるのではないか、という考えに思い至りました。本当は、私がプロデュースしているJAPANSHOP内のIDMブースで実践したかったのですが、予算の関係で釣り合わず。そこで今年は自社出展という形で実践してみよう、と思い立った次第です。費用は掛かりますが、自由に計画をできるので、その点良かったと感じています。

展示会業界だけでなく、多くの商業関係の方にもお立ち寄りいただきました。

再生板紙構法とは?

再生板紙構法とは、展示会ブースの主な構法の1つ、木工ブースにおいて、その「木材」の部分を「再生板紙」という古紙をベースにした素材に「置き換えよう」というもの。木工ブースがこれまで持っていた寸法自由性やデザインの自由性をそのまま引き継ぐことができ、かつ、この構法が一般化した際に、木工職人・木工所が再生板紙を扱うように変化すれば、大きな業務体系に変化はありません。

今回、JAPANSHOP会場内の裏手(IDMの後方)だったにも関わらず多くの方にお越しいただきました。お越しいただいた中で最も多かったのがやはり展示会業界の方々。私の知る限り業界の大手企業さんはほぼいらっしゃったのでは、という感覚です。

手前が木工ブース。木工で製作した形状に壁紙を貼って仕上げます。

お話をさせていただいた皆様には、ブースを製作してみての現状での課題点や将来性などをお話させていただきました。どの方も、どの企業も概ね、本プロジェクトに賛同していただき、将来性も感じていただいたようです。

多かった声としては、「材料を置き換える、という発想はいままでしていなかった」「現在作業している職人の方々の仕事を無くさないことへの配慮がとてもいい」などのお言葉をいただいています。反面、コスト面はどうなのか、などといった疑問点もいただいています。

展示会業界の年間木材廃棄量は?

今回のプロジェクトに当たって、展示会業界においてどのくらいの木材廃棄量があるかを調べたところ、かなりざっくりとした計算ですが、東京ビッグサイト・幕張メッセ・インテックス大阪といった主要会場だけで、年間約2万トンの木材を廃棄しているのが現状です。

これは、今回製作した2小間ブースの木工量を算出し(およそ400㎏)、それを年間の総出展面積、そして木工ブースとシステムブースの割合を仮に6:4と仮定して算出した数字です。低めに見積もってこの数量なので、実際にはもっと多い可能性があります。ブースの構造を木工から再生板紙構法に変更することによって、年間2万トンの木材廃棄量を削減できることになるので、決して軽視はできない数量ではないでしょうか。

もちろん、完全にゼロにする、と言っても様々な課題がもちろんあることでしょう。実際の構法では、材料をつなぎとめるビスの扱い方や素材が持つ重量、効率的な資材のサイズの製作など細かな部分で課題があります。また、防炎処理の施し方にも効率化が必要です。

壁紙を貼る前の様子。木工ブースとほぼ変わりはない。

今回のこのブース。コスト的には、木工ブースに対して、再生板紙構法のブースは、1.5倍掛かりました。主な要因は、防炎処理を施す費用と、資材の基本サイズから来る手間の問題です。ですが、今回関わった面々からは、近い将来、需要が増えてくれば、どの課題も解決可能なもので、少なくとも価格を今の木工ブースと同じくらいにするのは可能ではないか、との感覚を得ています。

ただし、木工ブースからいきなり100%の再生板紙構法によるブースに移行するのではなく、2つの構法のハイブリット版にまずは移行し、その後完全な再生板紙構法を実現する、という流れが自然なのではないか、と話しています。それは、再生板紙構法で使用する「角材」にまだ課題があるから。紙を使っているので「軽い」と思われがちですが、実際には圧縮してあるものなので木材に比べてかなりの重量になること。また、面によってビスの効きが違うことなどがあります。そこで、角材のみ木材にする、というハイブリッドが初期の頃は現実的かもしれません。

壁面パネルの構造。従来と再生板紙構法とそのハイブリッドと。

展示会業界において、木工ブースは寸法自由性やデザインの自由度という観点から今後も無くならない構法だと感じています。だからこそ、同じ機能性を維持することができる「材料の置き換え」による本構法はかなり現実的な手法なのだと考えています。

現在の展示会業界において、様々な企業が廃棄量ゼロ目指して活動しています。しかし、展示会終了時の片付けの風景を見ると、その廃棄量の山は一部の企業だけの活動でどうにかなるものではなく、展示会業界全体を上げて、そして出展社も含めたその場に参加する全ての企業の意思を持って臨むべきなのでは、と感じています。

本プロジェクト、ご要望があれば、どこかで詳細な報告会のようなものができればと考えています。賛同していただける皆様、是非その報告会の実現が叶いましたら是非ご参加ください。


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