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さようなら、晴海客船ターミナル

晴海客船ターミナルの正式な閉館の日が決まった。

東京都港湾局の発表によれば2022年2月20日の営業をもって閉館し、建物を解体するための準備に入るとのこと。解体工事の着手時期は各種報道から2022年7月ごろと見られる。
竹山実氏が設計し、東京ベイエリアのシンボルとして長年にわたって親しまれていた三角屋根のあのターミナルビルは、近い内に姿を消すことになる。

30年間、東京港を見守った晴海客船ターミナル

晴海客船ターミナルと聞いて皆さんは何を連想するだろうか?

東京港の海の玄関口として作られたこの場所には、郵船クルーズの「飛鳥Ⅱ」や商船三井客船の「にっぽん丸」、日本クルーズ客船の「ぱしふぃっくびいなす」はもちろん、コスタクルーズの「COSTA neoROMANTICA」のような外国客船も寄港していた。

1年間で受け入れた隻数は約30隻(2019年時点)と、横浜港の188隻(2019年実績)には遠く及ばないものの、東京都心から近いという利便性では随一の立地だ。
実際、晴海からクルーズ船に乗ったという人も多いだろう。外国人観光客の中には日本の一歩目が晴海だったという人がいるのかもしれない。

しかし晴海客船ターミナルが愛されている理由はクルーズ船だけではない。

そこでコスプレイベント、野外フェス、ホールでのライブが開かれた。
そこで特撮作品、ドラマ、ミュージックビデオのロケが行われた。
そこは大ヒットしたアニメ作品のクライマックスの舞台となった。
そこは海上自衛隊や外国艦艇を間近で見られる場所だった。
そこは誰かがドライブで夕陽を見に行く所だった。
そこは誰かの初デートの地だった。

そこは、さまざまなジャンルの人の姿をずっと見続けて来た。

私にとって晴海客船ターミナルは、艦艇や珍しい船を見に行く場所だった。
トルコ海軍のフリゲート「GEDIZ」チリ海軍の帆船「Esmeralda」のように中を見学させてもらったこともある。


海上自衛隊の艦艇は毎年、東京みなと祭で公開が行われており、2016年には退役間近の木造掃海艦「つしま」、2018年には護衛艦「はたかぜ」を見学した。浚渫船という種類の船に触れたのもここ晴海だった。


2020年には東海汽船の2代目「さるびあ丸」が一足先に晴海客船ターミナルを背景に東京港を離れている。
実は晴海客船ターミナルは1991年竣工、2代目「さるびあ丸」は1992年竣工と登場した時期が近い。見比べてみるとまだバブルの残り香がある90年代初期の日本を表すようなデザインをしている。


ここ晴海客船ターミナルから眺める夕陽に染まる東京の風景はとても美しい。
オブジェ「風媒銀乱」の水面に映る都市や、徐々にライトアップしていくビル、そして正面に見えるレインボーブリッジと素晴らしいロケーションがそろっている。

風媒銀乱
夕焼け色に染まる晴海客船ターミナル
晴海客船ターミナルから都心を臨む


晴海客船ターミナルの解体後、代替の客船受け入れ施設が出来るという。

「『未来の東京』戦略 3か年のアクションプラン」や「東京港第9次改訂港湾計画に向けた長期構想中間まとめ」によれば、東京国際クルーズターミナルの第2バースが完成するまでは、晴海埠頭も使うとしている。
今は寄港が止まっているクルーズ船や大型クルーザーが、再び晴海に接岸することは間違いない。

2022年10月にオープンする晴海ふ頭公園からは、変わらずベイエリアの夕焼けを眺めることが出来るだろう。

それでも、私は晴海客船ターミナルが好きだった。
あの三角屋根の建物が、送迎デッキの列柱が、海に大きく開かれた窓が大好きだった。
その雰囲気の全てが何物にも代えがたい場所だった。

さようなら晴海客船ターミナル。

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