webマガジン盗用問題の顛末。ごはん同盟シライジュンイチさんの場合。

仲良くさせていただいている友人のひとりで、以前にぼくと同じように思わぬ形でwebマガジンに著作物が使われるという経験をしたことのあるシライさんにお話を聞いた。

このインタビュー内容は、今後、もし誰かに同様のことがあった場合、その対応に関して参考になる点が多く含まれているように思う。

実際に参考にしなくてはいけない場面が起きないにこしたことはないけれど、万が一当事者になってしまった場合、その人はとても少数派であり、過去に同じ経験をした人を見つけて話を聞いたり相談することはきっと難しい。

そんなとき、検索流入などを含め、どんな形でもこの記事を見つけてもらうことで、どのように対応すべきなのかの助けになり、ヒントになればうれしい。
※なお、下記に記した件は既に解決済みであり、コトを掘り返し、インタビュー中に出てくるwebサイトの糾弾を目的としたものではないことはシライさんともども意見を一にしています。ぼく自身は当事例に対して一般的に想定される疑問を、客観的な立場でインタビューすることを心掛けました。また、掲載にあたってはシライさんにすべて確認のうえ、意向を反映したものとなっています。

【発端】
今から3年前、webマガジン『lifehacker』の掲載記事として、ごはん同盟(※)のシライジュンイチさんが「フライパンでもご飯が炊ける!炊飯の基本は10分+15分+10分=35分」を執筆。
その告知をごはん同盟のFacebookページで画像付きで載せたところ、webマガジンTABI LABOが、そのFacebookの画像の埋め込みコードを使用し、「【超時短!】フライパンを使えば、たった5分でご飯が炊けるって!?」という内容で別記事を掲載。
TABI LABOの記事内容にごはん同盟が関わっていると読者に誤解を与えてしまうと実害を被る可能性があったため、TABI LABOに抗議した。

※「ごはん同盟」は、ご飯好きの、ご飯好きによる、ご飯好きのための、炊飯系フードユニット。www.gohandoumei.com

―最初、TABI LABOの記事を見つけたときはどう感じましたか?

スマートニュースのフィードで見つけて、なんでスマニューに自分が撮影したフライパン炊飯の画像が載ってるんだろう?って思いましたね。直接無断使用されたのは画像3点のみですが、最初知った時、PV狙いといってもひどすぎるなぁ、と感じました。それで公開から2日後に抗議を入れました。以下、抗議文です。

貴サイト「TABI LABO」の記事「【超時短!】フライパンを使えば、たった5分でご飯が炊けるって!?」にて、私が運営しているFacebookページ「ごはん同盟」にて、掲載した画像が無断で使用されておりました。この画像はWebサイト「ライフハッカー」にて掲載したコラム「フライパンでもご飯が炊ける!炊飯の基本は『10分+15分+10分=35分』」のために、新たに撮りおろしをしたものです。
しかし、掲載にあたり、貴社から画像使用のご連絡をいただいておりません。また、該当記事の内容につきまして、ライフハッカーにて掲載されたコラム記事の内容に大変酷似しており、ごはん同盟のFacebookページからの画像を引用することで、貴サイトの記事がごはん同盟執筆によるものと誤解を受け、不利益を被る可能性がございます。
つきましては、該当記事掲載に至るまでの経緯をご説明いただき、該当記事に無断引用されている画像の削除を早急に求めます。

―TABI LABOとはどんなやり取りがあったんでしょう?

このとき、私が考えていた着地点は、まずは該当画像の削除。そして、経緯と謝罪を公の場で公開してほしいってことでしたね。
それで最初に「・記事掲載に至るまでの経緯 ・該当記事に対して貴社がお考えの問題点 ・再発防止のために貴社がお考えの対策を文書でください。」と連絡しました。
するとまず経緯説明が文書で送られてきたのですが、全然話にならなかったので直接会ってあらためて抗議することになりました。

―それが最初の面会?

そうですね。TABI LABOからの文書の回答が十分だったら、ぼくは会う必要もないと思っていたんですけどね。というのも、TABI LABOは「著作権的には問題ないんだけれど、そちらが不快なようだから謝るね」というスタンスだったので。頭は下げるけれど文書には残さない、と。

―そうだったんですね…。実際のところ著作権的にはどうなんでしょう?

埋め込みコード(※)を使っての画像挿入なんで、複製権や自動公衆送信権は侵害していないんですよね。なので、残念ながら著作権を争点にすると平行線をたどってしまう状況でした。
もともとそういうことを分かっていて、埋め込みコードを使ったのでしょう。確信犯です。「画像は使ってない、コードを使ってるんだ」ということらしいです。だから著作権侵害はしていないという主張で…。

※埋め込みコード:ウェブサイトやブログ記事に外部のコンテンツを挿入することを埋め込みと言う。埋め込みコードとは埋め込み時に使われるコードのこと。HTMLコードを使い、自分のwebサイトにSNSなどからインタラクティブコンテンツやビジュアルコンテンツを引っ張ってきて表示することができる。

ー面会はどんなものでしたか?

面会に来た社長、編集デスク(的な人)、とライターの3人は平謝りで、「記事は非公開にするし、公に謝罪文も出します」と言っていました。ですが、最初の経緯説明の文書に、「かくかくしかじかで著作権は侵害してません」という一文があって、それがもめる原因になりました。あなたたちは、何に対して謝っているんですか?と。「ミスはミスとして認めましょうよ」というのがこちらの主張でした。
そのときの面談で「この文書内容では不十分だから書き直して、公開用の経緯説明と謝罪文を用意してくださいね」ということになり、以降はメールでのやりとりで交渉が進みます。
しかし、最終的にはメールで「(謝罪文の内容について) お互いのスタンスの違いもございますので、お持ちの問題意識にすべておこたえできるわけではありませんが、いただいたご意見やご質問を踏まえつつ、社内で内容を調整させていただきます。」というものが送られてきました。一貫して、「法的には問題ない。でも不快にさせたから謝る」ってことでした。

―シライさんもFacebook等でこの件について書いてたし、まわりの反応も結構あったんじゃないですか?

かなりありました。ちょうどキュレーションメディアの闇が取り上げられてたころだったですし。

―少し調べたら著作権侵害(※)って、思った以上に罰が大きいんですよね。
※著作権、出版権、著作隣接権の侵害の場合、罰則は原則として「10年以下の懲役」または「1000万円以下の罰金」。また、侵害者が法人の場合には「3億円以下の罰金」となり、その法人の従業員で著作権法違反行為を行った個人に対しては前述の刑罰が科せられる。

そうなんですよ、ただそこまで法的に争うにはこちらも弁護士にお願いしないといけなかったので、現実問題としては厳しい。それで社会的に謝罪してもらうというのが落としどころだろうと。実際にTABI LABOサイトに謝罪文を掲載するという確約を取ることができました。これがTABI LABOの最終的な経緯説明と謝罪文です。
https://tabi-labo.com/page/announcement-2
でも今はURL直打ちしないと見られないのです。その姿勢もどうなんだと思うけれど。

―シライさんから見て、この件以降、webマガジンとしてのTABI LABOはなにか変わったと思いますか?

あれからサイトを見てないんでその変化はよくわかりません。引用記事が多いけれど、ちゃんと許諾を取ってるっぽいので、その点は改善したのかもしれないです。

―シライさんとして、社会的にwebメディアのモラルが改善されていくためにはどうしたらいいと思いますか?

んーん、難しいですね。こういう事例は無くなって欲しいけれど、無くならないという諦めもややあります。
TABI LABOの場合は、確信犯だったんで完全に駄目なんですが、新人ライターが間違ったやり方で記事の書き方を覚えて、悪気なくやっちゃうパターンもありそう。法的にもそうなんですが、まずモラルとして駄目。「こういう記事の作り方はダメなんだ」という事例がないと、学びようがないのかもしれないですね。

『忙しい朝でもすぐできる ごはん同盟のほぼごはん弁当』 (家の光協会)
しらいのりこ (著)
冷めてもおいしい、作るのがラク、仕切りなし、詰めるのがラク、盛り付け簡単、毎日続けられる...ごはんのおいしさがお弁当のおいしさの決め手となる「ほぼごはん弁当」。

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磯木淳寛

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