M-1に出た

なんでM-1に出ようと思ったのか、思い出せない。
ただ何か新しいことをやりたかったんだと思う。いつもと違うことを。

それで、俺が知る限り一番おもしろい奴に連絡して…

それで、週末にファミレスに集まってネタを書くという不思議な日々がはじまった。

クソ暑い代々木公園で練習して、デカい木にスマホをひっかけて撮って、それを見返してネタを直して…ということもやった。

夏が終わる頃に応募がはじまって、二人で証明写真機でぎゅうぎゅうになって写真を撮った。俺が何かをミスった結果、沼津の会場に割り当てられた。相方は何してんだよってダルそうに笑ってた。

そして本番当日。

マラドーナのシャツを着た俺は、東京駅で相方と合流した。新幹線でシウマイ弁当を食べて、匂いで周りのお客さんに迷惑をかけつつ沼津に到着。

「日曜日にこんなところまでM-1出るために来たのか」と、相方がつぶやいていた。俺はというと、もう若干緊張し始めていて、それな!やべえな!!!とかいってごまかしていた。

直前までカラオケボックスで練習して、ネタを微修正して、CHEHONを歌った。CHEHONを歌いすぎた相方の声が枯れてきていた。

そして会場入り。

芸人さんがたくさんいる。みんな壁に向かってネタを練習してる。おっさんも結構いる。入ってきた俺らに視線を向ける人もいる。真っ青なマラドーナのシャツを着ている俺がどう思われているのかわからない。わからないけどマラドーナに罪はない。

自分達の番が近づいてきた。舞台袖に呼ばれる。本番は2分。相方が「最後に練習しとく?」と言うので、一発通してみる。大丈夫。噛まずに通せた。

「エントリーナンバー、〜!!!」

コンビ名が呼ばれた。マイクに向かって走り出す。

「どーーーーもーーーー!!!!」

そこからの2分はあっという間だった。

最初のボケで手前の子供が笑った。次のボケで左の美人なねーちゃんがニヤける。半分過ぎたぐらいから真ん中の集団も笑い始めた。そこからはボケというボケがウケた。

やべえ、ウケるってこんな楽しいのか。ウケればウケるほどこっちもノってくる。いつもよりたっぷり間をとれる。相方も楽しそうにしてる。なんだこれ。超気持ちいい。

「もうええわ!」「「どうもありがとうございました!!」」

舞台を降りると、相方が手を上げてきた。迷わずハイタッチ。こいつのドヤ顔久々に見たなぁ。うわー、うまくいった。よかった〜。

ウケたねぇ!と言い合いながら会場を颯爽と後にする。これ、ベストアマチュア賞取れるんちゃう?2回戦のネタどうする???とか言いながらとりあえず居酒屋に入る。気持ち良すぎる乾杯。

「会社とか入ったりするとあんまないけど、自分の作ったもの見てもらうってなんかいいな」と相方が言っていた。確かにそうかもなぁ。

夜も遅くなってきたので、東京に帰らねばならない。明日は月曜日だから。

割と酔っ払った状態で、新幹線のシートに座る。ツイッターを開くと、もう結果が出ていた。

「え、もう発表されてる」

雰囲気で察したのか、相方が「落ちてる?」と聞いてきた。

「うん、落ちてた」

「じゃあ来年リベンジするか」

ということで、来年も出ることになった。とりあえず来週、2回戦を一緒に見に行く。まずは漫才を見ることから始めよう。

全部が終わってからぼーっと振り返ると、そもそもこんなことに付き合ってくれる友達がいることが一番すごいことなんじゃないかと思い始めた。

小学生の時に塾で会って、同じ中学に行って、銀魂がきっかけで仲良くなって、海に行ったり、温泉旅行したり、体育祭で実況もやったな…。それが大人になって、M-1に出ることになるとはね。

なんで俺みたいなちゃらんぽらんなやつと、こんなに縁が続いているんだろう。なんでかは知らんが、ありがたいことだと思う。

いや、なんかあんまりイイ話にするような関係でもないし、この辺でやめておこう。よくわかんないけど、とにかく来年も出るってことです。

来年は2回戦いきたいな。




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