古後家の信仰の調査

正月に故郷に帰り、正月料理を囲みながら、両親と話しをする。

長い間謎だった事を聞いてみた。

まず、なにゆえ、クリスチャンでもないのにカトリック系保育園に入れたのか、という謎。

理由は単純だった。それまで、公立の幼稚園が一つしかなく、小学校に入学する1年前からしか入れなかったらしい。複数年保育してくれる民間施設がお寺が経営している所しかなかったところ、カトリック系の施設がオープンしたから、というものだった。

ついでに、叔父が唯一のクリスチャンであった理由も聞いてみた。戦争体験で地獄を見たからだと思っていたが、当時の若者でちょっとしたブームになったらしい。若い男女の交流の場として教会に行くという動きがあったらしい。祖父である米造さんは、そんな敵国の宗教にわが子が入信するなど、と、ほぼ勘当状態になったという。きっかけは軟派な理由のようだが、生涯信仰を貫いた叔父の信仰はどこかで本物になったのだと思う。

そして、なぜ曹洞宗の安楽寺にお墓があるのか?という理由も聞いた。

もともとは、古後の本家の墓は、先祖代々の山奥にあったという。分家の米造一家もその周辺にお墓をつくるべきであっただろうが、参拝に不便という事と、ちょうど、お寺に新しい墓地区画が出来て売り出されたらしい。
曹洞宗の安楽寺は森藩主の歴代の墓がある。藩御用達の寺である。そこの家臣として徳川時代を過ごした古後家にとって、ゆかりもある。そういった理由であった。その後、古後本家も、山奥の墓所を整理して安楽寺に移ったのだった。

であるから、曹洞宗にこだわりがあったわけではないというのが真相である。

そもそも、曹洞宗というのは日本で一番多い寺らしい。禅宗は武家に流行ったが、なかでも曹洞宗は地方の武士や下級武士などに好まれたという。いくぶん緩いらしい。

であるから、座禅をすることもなく、葬式や法事の時にお世話になるくらいのものだったらしい。

その安楽寺も、後継者問題で存続が危ぶまれている。住職のいない寺になってしまうのだろうか。曹洞宗本山から誰かが送り込まれてくるのだろうか。

産土神社とされていた若宮八幡も神主がいない神社になっている。正月に行っても、地元のおじさん二人が焚火をしていたくらいである。ここも、時間の問題のような気がしている。

日本人の多くは無宗教とされている。しかし、現実には、神道、仏教にゆるやかな信仰を持っているという事になるだろうか。

曹洞宗というキーワードでいろいろとリサーチすると、開祖の道元にたどりつく。映画化されていたものも見た。

曹洞宗のよいところは、日常生活そのものが禅であるという事。食事、掃除。典座といわれるものを重視している。スティーブジョブスがとりくんだのも曹洞宗である。現在ブームのマインドフルネスのルーツでもある。

総本山である永平寺では、三泊四日くらいの禅寺体験コースがあるらしい。一度は体験してみようかという思いもある。

道元は日本を代表する哲学者であるという評価があるらしい。正法眼蔵を読み解いてみるのもいいかもしれない。

信仰する対象がルーツをたどってもそれほどない。それはそれでさみしいものだとおもうのだった。

わずかなきっかけである曹洞宗。只管打坐。ただひたすら座禅する。日常生活が禅。シンプルであり、求道者のような美しさもある。建築道を極めようとする私の性分にもマッチしているように思うのだ。

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