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組織カルチャーをみんなでつくる、伝え方のデザイン

みなさま、こんにちは!
先日は初めてのnoteにたくさんの反響を頂戴し、ありがとうございました。

この記事を読んでくださった方からご連絡をいただき、実際にお話を伺う機会もありましたが、組織は常に生き物、そして「十人十色」で思いどおりになどならないものだということを痛感するばかりです。

一方、私たちグッドパッチがこれまでに学んだことや、いまの取り組みをお伝えする中で「ヒントになるかも!」「やってみる価値があるかも!」「そこは気にしなくていいのかも!」と、ちょっとだけ前向きな気持ちを提供できるシーンもありました。

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私たちグッドパッチの「デザインの力を証明する」というミッションの対象はサービスやプロダクトに限定されません。組織のカルチャーやコミュニケーションにおいてもデザインの力で貢献していくことができればと思い、今回また記事を書いてみることにしました。

社内のコミュニケーションにネガティブな空気を感じたら?

例えば特定のチームや個人を名指しで批判したり、言いたいことはわかるけどちょっとキツすぎる言い方をしたり。そしてそんなやり取りが公開の場で行われて目にした人がちょっと引いたり、逆に見えないところで悪口を言っているなんてウワサを聞いたり…。

それらはどんな組織でも起こり得ることだと思います。それでもみんながポジティブな気持ちを保てればいいのですが、多くの場合はそうなりません。一生懸命やっている人が傷付いたり、たまたまやり取りを見かけた人が嫌な気持ちになってしまうのは何とか避けたいところです。

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私たちは伝え方をデザインすることによってそんな状況を回避できると思っています。

組織はまず、個人へのリスペクトを前提とすべき

組織にはいろんな人がいますので伝え方も人それぞれです。わかりやすく愛を口にしてくれる人もいますし、言葉のナイフが切れ味鋭く近寄りがたい人もいるでしょう。しかし、まずは言い方云々の前にその場にいる誰もがみんなで何かを実現しようとする意志を持って組織のために時間を使っていという事実に対するリスペクトが大切なのではないかと思います。仮にその意志がゼロだという人がいるなら、それは船に乗せる人を間違えているということになります。

個人の意志に目を向けず、表面的な言い回しだけをあげつらうだけでは本質にたどり着けません。まずは組織のために個として何を実現したいのか、何に課題を感じているのかを理解し合う必要があると思います。そこがズレているとしたら、伝え方以前の問題だからです。

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年齢が若いことや経験が浅いことを理由に、自由に意見する機会を奪うような組織づくりはもはや過去のものになろうとしています。本質的でない慣例や上司の好みに合わせて意見を引っ込めるようなことばかり強いられていると「何が正しいか」よりも「相手に受け入れられるかどうか」が発想の軸になり、自分の頭で考えられない人材を育ててしまいます。

目線が揃えば基準ができる

伝え方もそうですが、その時の心の状態も人それぞれです。情熱が迸りすぎたり、暴走したときに配慮を欠いた伝え方になり、誰かを傷つけてしまうこともあるでしょう。しかし、組織としてどこを目指しているかの目線が揃えば、個々のメッセージがそこに近づくことを後押しするものなのか、むしろそれを妨げるものなのかが見えるようになります。

異なる人が集まった組織が共通の目標に向けて仕事をする以上、コミュニケーションも目標に近づくためにデザインされたものであるべきだと思います。伝え方のデザインを忘れたメッセージは意図せず人を傷つけ、組織のモチベーションにも悪影響を与える可能性があるのです。いたずらに人を傷つけ、組織のモチベーションを下げるようなメッセージに対して、組織は毅然とした姿勢を見せるべきではないでしょうか。

気を付けたいメッセージ

ほんの一例ですが、伝え方のデザインが忘れ去られると以下のようなメッセージが飛び交いがちだと思います。

[1] ギャップに対する怒りを込めた言葉
[2] 特定の部門や個人に対する公開の場での批判
[3] 事実だとしても配慮を欠いた表現

ここからは、そんな「あるある」をどう受け止め、渦巻く感情に向き合っていくために考え方と伝え方はどうあるべきかを書いてみたいと思います。

「混乱期」は組織にとって必要な進化の過程である

1つめは「ギャップに対する怒りを込めた言葉」です。意見の不一致やお互いへの理解不足を感じたときに「アイツはわかってない!」とか「あの人とは合わない!」みたいなことを言ってしまうイメージですね。人間なのでそういう気持ちを持つこともありますが、それをそのまま周りにぶつけてもあまりいいことはありません。

全員の思考が最初から一致していれば最高ですが、それぞれに経験も得意分野も違う人たちが同じ目標に向かっていく過程で衝突はつきものです。目的はひとつでも、やり方がひとつとは限らないからです。

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チームが成長していく過程を4段階に分けて説明したタックマンモデルでは、メンバーがお互いの考え方の違いをぶつけ合い、理解しあう混乱期を経て、単なる人の寄せ集めに過ぎない「グループ」が1+1を2以上にする「チーム」に進化していくと説明されています。

混乱期には意見がかみ合わないような感覚を持つことや組織の意思決定に納得できないと感じることもあると思いますが、それは組織にとって必ずしも悪いことではなく、むしろ進化の兆しであることをタックマンモデルが教えてくれます。「ズレ」や「違和感」は積極的にテーブルに上げ、みんなで意識をすり合わせて組織の進化につなげていくべきなのです。

このフェーズのコミュニケーションには、何がズレているのか、何が違和感の元になっているのかを言語化する努力が求められると思います。「わかっていない!」とか「合わない!」という伝え方はちょっと拒絶的で、ギャップを埋めようという気持ちは削がれてしまうメッセージではないでしょうか。それは伝える側にとっても本意ではないはずです。

混乱期は一時的に組織のパフォーマンスも下がるので、互いにストレスを感じやすく感情的になりやすい状況だと思います。しかしそれが組織の進化のサインであることをポジティブに捉え、お互い冷静にギャップに向き合おうというコミュニケーションが大切なのではないでしょうか。

意見の相違とか、見解の違いを埋めることで組織は進化するんだから「ズレ」や「違和感」はチャンスだと受け止めよう!でも拒絶してたら前に進めないから、なぜギャップが生じるのかを言語化してテーブルに上げるる努力が大事。お互いが冷静に向き合えるような伝え方をしよう!

まとめるとこんな感じになりますね。

「何が悪いのか」だけでなく「どうしたいか」

気を付けたいメッセージの2つめは「特定の部門や個人に対する公開の場での批判」です。会議の場やSlackの公開チャンネルなどに辛辣な言葉が投げ込まれるようなイメージですね。

「心理的安全性の担保とは、ネガティブな内容を一切伝えずにぬるま湯につかることではない」という考え方は大いに理解できます。時には相手にとって耳の痛い指摘もあって然りでしょう。しかしその際には納得感のある状態での建設的な議論を前提とすべきだと思います。

アドラー心理学には「原因論と目的論」という考え方があります。過去に起きた悪いことに立脚するのが原因論、未来に起こしたい良いことに立脚するのが目的論です。

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過去に起きた悪いことに注目した議論、つまり原因論は、何が悪かったかを分析する観点では有効ですが、それ単体では未来を良くすることにつながりません。「代案なき批判」が好まれないのはそこに改善の効果も当事者としての意思もないからです。建設的な議論には、未来にどんな良いことを起こしたいかという観点と、それに向けた当事者の意思が入っているはずです。

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例えば会議の場で、問題点だけをあげつらうような会話は誰かを悪者にし、改善の意思を伴わずに終わってしまいます。改善の意思があるなら、未来志向に立脚したメッセージや提案を入れるべきでしょう。解決策まで出すのは簡単ではないですが、少なくともどういう状態になりたいかは頭の中にあるはずです。ダメな点ばかりをあげつらい、改善の効果につながらないと受け取られる表現については未来に向けたものにデザインし直すべきだと思います。

原因を議論することは大事だけど、ただの批判は前に進むエネルギーを生まない。未来にどうなりたいか、みんなで考えよう!伝え方も、なるべく未来のいい状態を意識しながら建設的なメッセージにしよう!

…と考えるとよいのではないかと思います。

フィードバックは相手を支援するためのもの

3つ目のあるあるは「事実だとしても配慮を欠いた表現を用いること」です。「確かに正論なんだけど、そんな言い方をしなくても…」「ちょっといい方キツすぎませんか…」というシーン、けっこうよくありませんか?

改善すべきことをビシッと指摘していくことは確かに必要です。時には相手がショックを受けたり一時的に傷付くことも覚悟の上で、勇気を持って伝えなければならないこともあります。

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しかし、本来フィードバックとは悪い部分を指摘することだけではなく、相手がさらなる成長を遂げたり、より積極的になることを支援するために情報を提供することです。その目的は常に相手が今より良い状態になることであるはず。どんな表現をすれば相手は問題に気づき、行動を変えてくれるかを考えた伝え方をしなければ、十分な効果が期待できないどころか、ただ相手を傷つけるだけで終わってしまいます。

ここでも前述の「目的論 / 未来志向」が参考になります。

例えば、××が悪い」よりも「○○な状態を目指したい」という未来志向の表現を使うのはどうでしょうか?たったそれだけでも「ただの批判ではない」「一緒に解決したい」というニュアンスが含まれ、メッセージが随分と建設的な印象に変わるのではないかと思います。

フィードバックは自分の不満をぶつけるんじゃなくて相手の改善につながる情報を提供するもの!どうやったら相手がやる気になれるかを考えて伝え方も工夫しよう!

…ということですね。

情報共有ツールの使い方について

Slackなどの各種コミュニケーションツールがもたらす恩恵は大きなものである一方、公開の場でのやり取りには注意すべき点があります。当たり前の内容ではありますが、敢えて記載してみたいと思います。

■自分の発した情報の実際の影響範囲がわからないこと

ダイレクトメッセージや参加者が限られたスペースなら影響範囲をコントロールできますが、公開の場ではそこにアクセスできる全ての人が情報の受け手となり得ます。全ての人が同じ前提を共有できていればよいですが、前提知識のない人が批判的なメッセージを目にしたときにそれを正しく解釈できず、傷ついたり怖いと感じたりする可能性は考慮すべきでしょう。

■相手にどう伝わったかをリアルタイムで確認できないこと

「伝えたこと」と「伝わったこと」を完全に一致させるのは非常に難しいことです。対面での会話であれば反応を見ながらフォローできますが、テキストでは相手がメッセージをどう受け取ったか、リアクションを返してくれないことも多いでしょう。自分の意図が誤解されたり、人を傷つけたり、悪意を持っていると勘違いされる可能性がある場合は必ずしもベストな選択肢にならない手段だと思います。

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一方的な発信よりも対話を大切にしたい

私個人としては、どこかで一方的に発信すれば誰かが拾ってくれる状況よりも、堂々と意見や議論ができる環境を作りたいし、グッドパッチのカルチャーもそっちに向けていきたいと思っています。

まとめ

自由に意見が言えるカルチャーは個人の当事者意識を高め、やがて組織を強くしてくれるものだと思います。一方で自由と責任は常にセットであり、相手に配慮せずに自分の言いたいことを言っていいということにはなりません。

人を不用意に、不必要に傷つける発言はテキストでも対面でも行われるべきではないと思います。これは心理的安全性を拡大解釈した「ぬるま湯」の状態を回避することと相反しません。

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相手に対する尊敬や愛情が前提となっているからこそ、足元が揺らぐような厳しい指摘にも向き合い、改善に向けて努力しようという気持ちが生まれるものです。

組織で共創する私たちが負うべき責任は、伝え方もデザインすることなのではないかと思います。

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