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エイハブの六分儀 ~7月の星空案内~

『天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に出でし月かも』

百人一首にある和歌ですから一度は耳にしたことがあるかと思います。PEQUOD内で開催される天体観望会を「仲麻呂会」と呼んでいます。アメリカ、イギリス、日本各地それぞれ離れた地で星空を見上げよう、という趣旨で発足者および命名者は小野さんです。


この和歌を詠んだ安倍仲麿(百人一首での表記)は平安時代に遣唐使として唐に渡り、時の玄宗皇帝に仕え当時の著名な李白といった詩人とも交流があったそうです。長年の宮廷での勤めを終え、故郷の日本へ帰るその送別の宴で詠まれた故郷の月を想う歌です。

しかし、彼の乗った遣唐使船は難破し日本へ帰還することができず、結局彼は生涯を唐の地で終えました。

千数百年を経て、今からちょうど50年前に人類は約38万キロ彼方の月の大地を歩き、ふり返って故郷の地球を眺めました。月から宇宙飛行士たちは無事に帰還することができ、その一歩の重みを今年はより多くの方が噛みしめていることでしょう。


いつも当たり前のように存在している月ですが、誕生したタイミングから距離から、何から何まで絶妙なタイミングかつ絶妙な影響力のおかげで、地球は生命を育む惑星へと進化することができました。太陽や他の条件ももちろんですが、月がなければ、私たちはここにこうして存在していなかったのです。そんなことに想いを馳せながら、見上げているといつにも増して月の輝きが愛おしく感じられます。

古くから日本人の月への思い入れは深く、たくさんの月を詠んだ和歌が残されています。
和歌を通して、かつて故郷に帰ることが出来なかった人物がどんな想いで月を見上げたのか、時をこえて共感できるのはとても豊かなことですね。

さて7月17日が満月ですが、月の観測は満月よりその前後がオススメです。光が当たっている場所と陰の部分の境目の凹凸がよりクリアに見えて、まるで手が届きそうです。望遠鏡を覗きながら、想像の翼を広げて50年ぶりに月面を歩いてみましょうか。
(アポロ50周年記念号につき、今月が旬のさそり座のご紹介はいずれ必ずいたしますね)


コスモプラネタリウム渋谷 解説員 西 香織


『宇宙に命はあるのか 人類が旅した一千億分の八 』

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想像してみよう。遠くの世界のことを。

明日もお楽しみに。


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