あいだ

京都鴨川在住。たまに詩みたいなものを書いたりします。

あいだ

京都鴨川在住。たまに詩みたいなものを書いたりします。

マガジン

  • 詩集2023

    2023年に突如書き始めた詩たちです。自分でも気に入ったやつをセレクトしました。

最近の記事

ホタルイカと春キャベツのパスタ…ではなくうどん

今夜いただくのは旬のもの。 シンプルに王道のレシピで作ることが、あまり好きではありません。なぜなら、説明書どおりにレゴを組み立てるみたいで、余計なアイデアを入れる余地がないから。 いいえ、それもそうなのですが、格好をつけました。 シンプルであればこそ、腕前がわかってしまうから、というのが理由の大半です。 まあでもやっていきましょう王道レシピ、そんな夜もあっていい、なぜなら明日は休日、心に余裕がある… シンプルであれば、余計なものを足さない、引き算は大事です。が、本当に

    • トマトと卵の炒めうどん

      トマトと卵の炒めもの、中華料理で何が好きかって、これである。 トマトの酸味と旨味を卵のまろやかさが受け止め、そこに生まれる渾然一体唯一無二のハーモニー、調和する大宇宙、さながら生命の大合唱、大脳に走る戦慄と魅了、荘厳である。 さて、そんなメニューは店で食べるのが一番だが、自宅でコンパクトに再現し、同時にお腹も満たすならこれ、スーパーに半額で売ってる細うどんの出番である。 雑に炒めていく。強火にしてた。気がつかんかった。トマト、いい感じにほの焦げ。 このために買ったオイ

      • 春菊とひき肉の焼パスタ、ではなくうどん

        醤油がない…! いや、そんな予感は少しした、けれどフライパンにくるっと1〜2周ほど回しかけるぐらいは残っているのではないかと、そう期待して家路についた。 残っていたのは期待だけであった…。 味付けは塩で代用して、どうにか炒めてみた。どうしたことか、弊アパートの弊冷蔵庫、花椒はあるのに醤油がない。 およそ「ストックする」という考え方からして、本来ホモ・サピエンスには1億年早いのではないか。明日のために、明後日のために、来るかわからないいつかの未来のために、醤油をストック

        • 白菜と豚肉とレモンのスパイス和そば

          急に寒くなった、きょうは。 こんな日は白菜と豚肉のあたたかい何かを食べたいな、そう思っていつものスーパーにやってきた。 昨日まで、「なんちゃら剤不使用なので皮まで安心して食べれます」とポップに謳われていた位置に、まだレモンがあった。ポップはただの値札に変わっていたけど、今日もワンチャン、なんちゃら剤不使用で安心だ。しらんけど。 このレモンをアクセントに、白菜と豚肉で暖をとることにした。 豚肉をフライパンにin、コリアンダーとカルダモンと醤油をかけて焼いていく。こういう

        ホタルイカと春キャベツのパスタ…ではなくうどん

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        • 詩集2023
          10本

        記事

          五感が自然にさらわれるとき

          2月の岐路に立っている。 仕事をやめるか、続けるか、やめても結局、社会の掌からは逃れられない、人は怖い生き物で、それに囲まれるのは苦しいことだ。かといって山奥へ逃げ込めば、身はもはや凍えるばかり。 そんなことが頭をめぐっていた折、しばらくぶりに川辺へ出た。常緑の葉を縫って差す木漏れ日、空の青をうつして鴨を走らせる水面。閉じていた五感が活性しはじめる。思考は力をなくし、感覚が脳の所有権を奪っていく。 ふと、こんな言葉が湧いた。 「五感が自然にさらわれるとき、わたしは人間

          五感が自然にさらわれるとき

          原始のシーラカンスは食パンに足を生やす

          言葉とは、ときに人を縛る鎖ともなれば、人を導く指針ともなる。 現代を生きるわれわれが、その人生において最も多く目にする言葉のひとつとして、次のようなものがある。「開封後は冷暗所に保管してください」。 冷暗所。それはこの蒸し暑い梅雨時において、その存在すら定かならぬ絶滅危惧の空間。たとえるなら砂漠のオアシス、琵琶湖のシーラカンス、都心部で出会う人のやさしさ。 さて、言葉とはときに明示されることのないものでもある。冷暗所で保管すべきことを、パッケージ側面下部欄外がいつも丁寧

          原始のシーラカンスは食パンに足を生やす

          繰り返される過ちと、起死回生のたらこスパ

          「たらこ…スパゲティ…」 思わず口をついて出たのがこれだった。 体調を崩して寝込んでいたので、同じ市に住む妹が買い物を頼まれてくれた。「なんか食べたいものある?」に対して出てきた回答が、冒頭のそれであった。 たらこスパゲティにさして特別な思い入れはない。味は嫌いじゃないし、おいしいと思うが、ふだんわざわざ選びはしない。 しかしこの弱った病身にも優しく染み入り、かつ体力を授けてくれそうなのは、こってりとして重みのあるミートソースやホワイトソースではなく、喉の炎症に油を注

          繰り返される過ちと、起死回生のたらこスパ

          立ち上がれ、アパートの一室から

          働きたくないなあ、と思ってきたし、それは今も変わらない。 仕事の存在圧みたいなものを感じていた。そこにある仕事の量以上に、仕事があるということそのものに圧を感じる。それはいつでも待ち構え、いつ襲いかかってくるか知れない猛獣のように思われた。しかし私の食べ物は猛獣の足下にあり、私はそれを取りに行かねばならない。 仕事とは私にとって、「自分を自分でないものにする力」の象徴だった。 ここから先は浮世によくある話ではあるが、個人的な痛みを少々ともなう記述である。読まれる方からは

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          立ち上がれ、アパートの一室から

          雨に遠吠え

          狐狼よ今宵はどうしたい 探しているのは幸せかい それともほかの何かかい 月はおまえを照らさない 土砂降りだけがせめてもの心情 狐狼よ最期はどうしたい この夜とさして違わない 丘から見下ろす街あかり おまえの棲家は何処かね 土砂降りだけがせめてもの抱擁

          雨に遠吠え

          かけくらべ

          理性と感情は駆けくらべをしている。 理性のほうが足が早いから、いつも先回りして答えを出す。 「こう考えるのが得策」「どうしたってそうなるから」「そこに足を取られるのは無駄なこと」 そんなふうに言って、感情の歩みを止めてしまう。 でも、感情はそれを望んでるわけじゃない。 たしかに、感情はどこかに落ち着きたい生き物だ。だから答えを知りたがっている。 けれど、答案用紙に書かれたような、たった一言が欲しいわけじゃない。ゆっくりと、周り道かもしれないけれど、納得への通り道を

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          おかえり美術、こんにちは

          美術というものを語れるほど美術について知らず、美術に関わる生活をしてもいない。なんなら美術の対義語みたいな工場で働いている。 ここでいう美術とはあくまで俗っぽい意味での美術であることをことわったうえで、俗人たる私と美術にまつわるしょぼい個人史の一幕を、なんとなく書き置きたい。 ーー 私は子どもの頃から、色や形に多少のこだわりをもって物を見ていたように思う。美術の成績は5段階評価で4〜5をウロウロしており、他の科目よりは得意だった。 高校生の頃から、たまに美術館に行くよ

          おかえり美術、こんにちは

          ほしいと思って手にしたものは

          ほしいと思って手にしたものは、ほんとうは要らないものだったりする。 けれどそのことは無駄ではなくて、ほんとうは要らないと気づけたという、形のない収穫がある。 形のない収穫は、たくさん集まって納得に変わる。 自分に持てるぶんはこれだけで、それは持つにはちょっと重すぎて、あれはわざわざ持つ必要がない。 だったら、自分はこれぐらいの分厚さなんだと納得ができる。100ページあるのに10ページしか書かれてないのはどこか空虚だけど、10ページ中に8ページ書かれていたら、それは腹八

          ほしいと思って手にしたものは

          壜と花束

          感情は知覚の花束である その姿をいつまでも留めおくための 時よ止まれ そうしてできた不夜城の窓辺で 壜に傾げた花の束 姿よく、苦しげな ただひとくちの甘露を 含みつづけようとして口を塞ぎ 壜の底に沈み込もうとしている いつまでも いつまでも透明な

          浮世の風船

          腹をすかせた風船が 虚しさをいっぱいに詰めて浮く 色とりどりをまといながら 頼りなげにふわりふわりと 空っぽのかなしみを はち切れそうなほど裏返しにして にこやかに ぷかぷかと首を垂れて どうかわたしの中身になってくださいと 抱え込めないものを乞うている

          浮世の風船

          裂け目のうた

          むかしむかし あるところ 大地がふたつ 裂け目がひとつ まっくら闇の大陸と のどかな花の浮き小島 ひねもす小島に寝そべれば はるか大陸は蚊帳の外 されど暗闇の霧深く 小島をとらえ渦を巻く 繰り返す波のような日々 にじり寄る霧に果てはなく 怯えた子らは裂け目に落ちて かなしみの歌がこだまする ある朝見知らぬ来光だ 雲を背負った来光だ 月かあるいは太陽か 大陸も島も飲み込んだ 光は注ぐ三日三晩 裂け目に海ができたとさ ああここはひと続きの世界なのだ へただり

          裂け目のうた

          春がゆく

          春がゆく あの山間の線路の上を 花びらが埋めた石段の下を 芽生えたばかりの青葉の川辺を いつかの思い出が弾ける胸中を あなたとわたしのあいだを 春がゆく 荷を抱え小走りの青年の横を 煙管を咥え腰掛ける老人の背を 風にめくられたカレンダーの前を 光の差し込むカーテンの向こうを 人と街のあいだを 春がゆく いま、ゆく 目を腫らしてゆく 忘れたようにゆく ふざけながらゆく 戸惑いながらゆく 最後になった葉桜の 土産とばかりに風が吹く はたと振

          春がゆく