見出し画像

復活と彼女たちの祝祭 IZ*ONE「FIESTA」

日韓合同アイドルグループ「IZ*ONE」が2月17日にカムバックし、アルバム「FIESTA」を発表しました。


本来IZ*ONEは昨年の11月11日にカムバック予定でした。
カムバックとは簡単に言うと新曲を発表する事です。

今回カムバック直前でIZ*ONEに関するある疑惑が発覚し、produce48のプロデューサーが逮捕されるという事件が起こりました。


produceシリーズの功罪

今回IZONEに降りかかった問題を簡単にまとめたいのですが、それには韓国で放送されていたオーディション番組「produceシリーズ」について知る必要があります。

画像1


「produceシリーズ」とは韓国のケーブルテレビ局「Mnet」で2016年に「produce101」から始まったオーディション番組で、
女性版のproduce101」、
2017年の男性版produce101 season2
AKB48とコラボした2018年produce48
最も新しい2019年に行われた男性版produce X 101の4つが存在します。

このproduceシリーズは101人のアイドルを目指す練習生が様々な事務所から集まり、歌やダンス、ステージパフォーマンスを披露しながら、視聴者の投票を元に選ばれた練習生がデビューを目指すというオーディション番組です。

このproduceシリーズは
「視聴者の投票によってデビューするアイドルが決まる」、という部分がとても画期的でした。
produceシリーズ以前にも韓国では「スーパースターK」やtwiceを輩出した「sixteen」等人気を博したオーディション番組はいくつか存在しましたが、どれも審査員が最終的に勝者を決めるという形式でした。
produceシリーズは自分の推している練習生に対してほぼ毎日投票が出来、その投票結果とステージパフォーマンスの現地観覧の評価で毎週足切りされ、デビュー出来る人数まで脱落していき最終的にデビューメンバーが決まります。

画像2

produceシリーズは「練習生のコンテンツ化」という新たなビジネスを確立しました。

日本のアイドルで言う所のジャニーズ.Jrや研究生にあたる韓国の練習生は例に漏れず「練習生オタク」というのも存在していましたが、様々な事務所の練習生を集めてそれを視聴者が投票によってメンバーを決めデビューするという形は、日本のAKBが行っている「総選挙」の様なシンデレラストーリーを生み、また完璧な存在としてのkpopアイドルから、番組を通して成長するアイドルを評価するといった新たな価値観も生み出しました。

そうする事で投票によってよりアイドルが身近になり、デビュー前からファンが付き、デビュー後の活躍も確約されるというシステム。
それまではデビューするまで知られることのなかった練習生が「タレント」としてコンテンツ化していったのです。

日本のアイドルとは異なり事務所からアイドルとしてデビューする事も難しく、その後の活躍も一筋縄ではいかない韓国の練習生にとっては最後の希望であり、その辛さを知っている視聴者は一生懸命に推しの練習生に投票します。

この画期的な番組によってデビューした「I.O.I」「Wanna One」「IZ*ONE」「X1」はいずれもアイドルとして成功を収めています。

しかし、このproduceシリーズからデビューしたIZONEは一時活動を休止し、X1は解散に追い込まれました。
その理由は冒頭に出てきた問題

「番組の投票操作による不正なメンバー選考の発覚」

によるものです。

発端はPRODUCE X 101で最終デビューメンバーが決まった際の不自然な投票数に疑問を持った視聴者が疑惑を解明するという形で「真相究明委員会」を立ち上げ、弁護士を雇い訴えを起こした事から始まりました。

その後警察が介入し、produceシリーズの番組PDが練習生の事務所から接待を受けていた事、不正投票における詐欺の容疑で逮捕される事態となりました。

これまで視聴者が行ってきた投票が無意味であったのか、本来デビューしていた練習生がいたのではないか、といった番組自体の意義が否定される事実の発覚に韓国では怒りを買い紛糾する事態となりました。

この問題が発覚しPDが逮捕されたのが昨年の11月頭で、11月11日に新曲を発表する予定だったIZONEは騒動によって活動を休止。
発端となった「produce X 101」が輩出したX1は各練習生の事務所判断によって解散となってしまいました。

これが今回韓国で騒動となったproduceシリーズ問題の簡単な経緯です。

私自身IZONEのファンでしたので、新曲の発表を待っていたら活動が休止となり、X1は解散となった時点でIZONEの解散も覚悟していました。
それ以上に韓国国内で勃発していた不正操作を発端とした彼女たちに対する攻撃、世間の厳しい目に晒される彼女たちが深く傷付かないか、それがとても心配でした。


吹き上がる批判と耐えて待ち続けたファン

画像3

問題が発覚した後、韓国では逮捕者が出たこともあって地上波のニュース番組でも取り上げられる事態となり、「真相究明委員会」が本来合格するはずだった練習生の実際の順位を公表する様に制作側に求めたり、izoneに対する誹謗中傷がネットに溢れ返りました。

ファンにとって最も不安だったのは騒動後izoneについて制作側、事務所側から何のアナウンスも発表されなかったことです。

11月7日にizoneのカムバックが中止になるとアナウンスがあった後次々と出演予定だった番組も中止となり、上映予定だった彼女たちのドキュメンタリー映画も公開を中止。
公式ファンクラブやメンバーからのメールサービスも新規受付を中止し返金対応となり、メンバー個人のラジオ番組も代役を立てて何とか放送枠を維持する状態。

その後ほぼ2ヵ月近く何の音沙汰もなく、ファンは漠然と「解散」の文字を頭に浮かべながらただただ待ち続けました。

izoneの復活を待っていた所に後発で番組からデビューした「X1」が解散するというニュースが飛び込みました。
この知らせを聞いた時、izoneも同じ様に解散するんだなと思ってしまったファンもいたと思います。

どうする事も出来ないファンは少しでも声を上げ、それでいて韓国国民の怒りに触れない様にtwitterでのハッシュタグイベントを行いました。
毎日違うハッシュタグでツイートし、ファンはizoneを待っていると示し続けました。


また請願書やファン連合での声明も発表し、izoneの活動の継続と本来の順位発表を行わない様に運営側に求めました。

ファンがどうしてここまでizoneの存続を望んだのか。本来合格していたかもしれない練習生を応援していたizoneのファンも多く居た筈です。

そこにはizoneがizoneとして活動した1年間の軌跡が大きく関係しています。

produce48はそれまでのproduceシリーズとは異なり、AKBグループと合同で行う
「日韓合同アイドルグループ」でした。
韓国で練習生生活を行ってある程度の語学力を身に着ける他の外国人練習生とは異なり、デビュー後直ぐに韓国に住むことになった日本人メンバーは活動初期の段階では言語の壁によってメンバー同士で円滑な意思疎通が取れず、またkpopアイドルとして他のアイドルと同様に最低限必要なステージ上でのスキルを身に着ける為にそういった環境の中で努力していることをファンは良く知っていました。

また日韓合同アイドルであり、AKBグループのメンバーが居た事から、他のデビューしたkpopアイドルよりも日本での活動が多く、韓国と日本を行き来する彼女達の多忙なスケジュールは彼女達の時たま見せる疲れた表情から察する事が出来ました。

デビューからライブ、日韓での活動、カムバック、サイン会やハイタッチ会、テレビ出演等、活動を始めて1年ちょっとのアイドルとしては考えられない程の多忙さで、現にメンバーの2人は活動に専念する為にホームスクーリングを選択しました。

その活動を知っているファンだからこそ、結成に不正があったとしても、彼女達が進んできた道を知っていますし、その思い出に嘘はありません。

「解散」という言葉が囁かれ、誹謗中傷が溢れ返ったとしても、彼女達と一緒に共有した思い出は消えないのです。


produceシリーズで厳しい指導で有名だったダンストレーナーのペユンジョン先生がizoneの先行きを不安視するファンの声に答えた事があります。


「耐えれば、勝つ」

この言葉を胸にファンは活動再開を待ちました。


結果としてproduceシリーズを放送していた運営元のCJ ENMが利益を放棄し、関わった練習生への補償、内部での措置を行うといった形で活動再開に理解を求め、再開へと動き出しました。


待ち続けたファンはようやく彼女達のステージを見る事が出来る、新しいアルバムを聴く事が出来ると喜びました。
活動再開が発表され、徐々にSNSやyoutubeで彼女達の近影が公開されている間も、音楽番組への出演を取り止めるべきだ、と言った請願が集まり、現に韓国の国営放送KBSは一度だけizoneを出演させ、その後は出演させませんでした。

それでも解散するかもしれない、という状況から活動を再開し、ステージ上で12人が華麗に踊っている姿を見れただけで、私は満足でした。


押さえつけられていたファンは今までの鬱憤を晴らす様に、新しいアルバムを積みまくります。


「BLOOM*IZ」は韓国のガールズグループのアルバム初週売上を更新しました。
初週売上は事前の予約分等が加味される為、特にそのグループのファンの大きさを表す指標になります。
最終的に累計で50万枚を売り上げ、女性アイドルグループで最も売り上げたアルバムとなりました。
それまでじっと耐えて待っていたファンは何かから開放された様に、必死で彼女達を支援したのでした。
彼女達を応援する声は数字にも表れました。


茨の道ではなく花道で

画像4


カムバックを果たし、沢山のファンに祝福されたizone。
しかし、その後の彼女達の活動、未来に目を向ければ決して輝かしい未来だけを想像する事は出来ません。

izoneはその他のproduceシリーズから誕生したグループの例に漏れず、活動期間が決まっています。
様々な事務所から集まった彼女達は、活動が終わった後各々の事務所に戻り、新たな活動を始めます。

どれだけizoneのファンが彼女達を応援しても、「不正によって生まれたグループ」というイメージは払拭出来ません。
それはizone自身に罪がなくとも、イメージというものは付き纏ってしまうからです。

解散後日本人メンバーはどういった進路を辿るのか、事務所に戻ったメンバーは新たなスタートを切れるのか。

実際produceシリーズから最初にデビューしたI.O.Iのメンバーは全員の活動が上手くいっているとは言い難い状況です。
AKBのメンバーは解散後どういった活動をするのかも分かりません。

それでもここまで応援してきたファン、騒動後も応援し続けたファンがいる限り、izoneとして幸せに活動が出来る様に全力でサポートしていく筈です。



先日アナウンスがあり、izoneが6月15日に新曲でカムバックする事が決まりました。

前回の騒動の最中でのカムバックとは違い、今回はカムバックと合わせて彼女達の普段の生活を追うリアリティ番組や様々なテレビ番組への出演が見込まれています。

彼女達の活動期限である2021年の4月に解散するのか、騒動によって休止せざるを得なかった期間、コロナによる活動休止期間を含めて活動を延長するのか。
まだ分からない事がたくさんありますが、いずれ来る解散という決められたエンディングまで彼女達に花道だけを歩いてもらう為に、ファンとして応援していきたいと思います。



#izone #kpop  

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?