昔の女
少し前に義父が亡くなり、法事関連のあれやこれやの連絡に住所録が必要になり、夫のパソコンに入っている筆まめを借りた。
ふと女の勘らしきものが働き、やめればいいのに吸い込まれるように開いたファイルの中には、今から20年前、30代とおぼしき夫と可愛らしい女性の写真がわんさか
そりゃそのお年頃ならおかしくない、いやむしろ何もない方がおかしい。お似合いのカップルやんけ
薄化粧でちょっと儚げ
はにかむように笑う女性
ふーん
わかりやすいタイプやね
相手がどうこうというより思いの他ぐらぐらと揺れたのは、背景の景色に見覚えがありすぎること
水族館、USJ、高山、上高地、郡上八幡
写真が撮られた十数年後、全く同じ場所を私と訪ねている。
あのとき夫は私と一緒にいながら、同時にこの人といたのだと気付く。あの瞬間と思い出を往復しながら当たり前のように初めて来たという顔をしていたのだ。
もちろんそれはエチケットとして正しい。そして大概の正しいことは正しすぎて寂しい。だから私も立派になにも見なかったことにするし、もうこういうことはしない。
たぶんきっと
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