6月3日

ぼんやりと、近づいては通り過ぎていく光を感じていた。目を閉じてもわかる。あなたはまるで光のよう、とはよく言ったもので、目を背けても閉じても、感じてしまう存在は本当にある。つぎに会う約束があることに安心し、何かあるごとに報告が増え、焦がれて焦がれて仕方がない。

「香川で乗り換えがあります。」
突然、そんなことを言われたものだから眠れなくなってしまった。そっと両腕を服の中に隠して、冷えた二の腕をさわる。カイテキではないこの空間が、わたしにあの人のことを考えさせる。

こんなにも焦がれているのに、近ごろ何をしていて、どれくらいの髪の長さで、どんな曲を聴いているのか、お互いに知らない。
でもきっと、誰にも言わずに何かおもしろいことをして、髪は邪魔にならない長さを保ち、陽気で朗らかな曲を聴いているのだろう。わたしと同じで。

会ったらまず、とりあえずトイレに行きたいとわたしたちは思うだろう。しばらくは待ち合わせ場所に着くまでの冒険の話で盛り上がり、良いところでトイレを見つける。トイレから出たら「さあ何処へ行こうか。」ととりあえず口に出し、探り合う。今回はちゃんと調べようなんて思っていたのがどこかへ飛んでいき、結局歩く。気の向くまま、いつも通り。

やっぱり寒いな、と二の腕をさすってみる。はあ、乗り換えがあるとブランケットを用意してくれないなんて聞いていない。からだの「しん」が冷えてきたような心細さを感じたそのとき、ようやくバスが止まった。

真っ暗な闇に青い光がたくさん灯る不思議な場所にいっしゅん放り出され、2台目のバスに案内される。

半個室のようにできるカーテンのついた、広くてあたたかなバス。ブランケットを目一杯ひろげて、大袈裟にからだを背もたれに沈める。深く。

夢の中ではひとり寂しく本を読めますようにと願って、目を閉じる。

そんな夜。

#日記 #福岡旅行 #姉

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