電力業界のマーケティングってなんで上手くいかないの? - 米国戦略マーケティングファームCEOインタビューから考える電力業界の未来 -

"The biggest thing that's missing in this sector is the inspiration behind how amazing it is to have electricity and the sector as a whole." -エネルギー業界における大きな欠陥の一つは、電気を得られることがいかに素晴らしいかという事実の裏側にあるインスピレーションです- 

これは Essense Partners のCEOのMei Shibataさんのインタビューの引用です。Essense Partnersとは、進化するエネルギー分野において、戦略的マーケティングサービスを提供する会社です。

We disrupt energy conversations and help clients lead market change. (HPより)

今回はそのEssense PartnersのCEOのインタビューから電力業界の未来について紐解いてみたいと思います。


【2つのマーケティング戦略】

そもそも、マーケティング戦略とは、大きく2つに分けられるとのこと。

①企業ブランディング:

より全体的であり俯瞰的なブランディング戦略であり、企業のビジネス戦略とカスタマーをつなげるという文脈

Corporate branding corporate branding is the way you connect your business strategy with your customers so it is much more
holistic

②プロダクトブランディング:

商品が提供できるバリュープロポジション(顧客に提供する価値であり対価を払う価値)のストーリー

Product branding then you realize that it's more about the story of the value proposition that the product offers that you need to convey


しかし、電力業界ではこれらのブランディングを通じた顧客とのコネクションが上手くいっていないと指摘しています。

その一例として、彼女はアメリカで普及しているサーモスタットと呼ばれる温度調節機械について面白いエピソードを話しています。

※サーモスタットとは、温度の変化を検知してスイッチやバルブを電気的・物理的に調整する機械のことです。車のエンジンの水温調節のためにラジエータについているバルブ部分や、コタツやトースターの温度が高くなった場合にスイッチを絶縁状態にして加熱を抑えたりしてくれる機械で、温度変化による気体や金属の膨張・収縮を使った単純なものから電気的な温度計が内蔵された複雑なものまで様々です。実はアメリカでは、多くの住宅でこのサーモスタッドが暖房などの空調設備と連動しており、室温の調節を担っています。(引用


例えば、グーグルでスマート サーモスタットを画像検索すると、「人が温度調節機械(サーモスタット)に触れようとしている瞬間」の画像が出てくる or 「温度調節機械そのもの」の画像が出てきます

例えば、こちら (Goolge searchより)

Screenshot by Google Accessed at 2018.11.21

しかし、このサーモスタットのバリュープロポジションは人がこのサーモスタットの機械に触れる瞬間ではなく、機械そのものでもなく、その温度調節をiphoneなどのデバイスを通じて家の外からコントロールし、可視化できることである。

この時点でプロダクトブランディングとして、カスタマーに対して正しい価値訴求ができていないということです。



また、冒頭でも紹介したように、彼女は電力業界の課題について、誰もが「電力が供給されて当たり前」「スイッチを入れれば電気が通ることを当然だと思っている」という点についても言及しています。

この点は電力業界がさらにマーケティング戦略を難しくしている要因ではないでしょうか。

電力の自由化が始まっても、”電力を届ける”という観点において、バリュープロポジションは”電力を適切に届ける”こと以上に価値がおけないからです。顧客はそのバリュープロポジションが当たり前だと感じており、そもそも価値だとも感じてないでしょう。

マーケティング戦略のみならず、電力業界は自由化に伴い他社との差別化を測る中で、確実に「ビジネスモデルそのもの」の変革が求められています。

顧客に刺さるバリュープロポジションとは何か。過去の記事でも紹介しましたが、「モノ」という電気そのものにお金を払うのではなく、電力を通して価値を感じる「体験」にお金を払う時代に移行しているのではないでしょうか。



(引用:家計から電気代が消えていく? Utility 3.0の世界を解説する


Cheers,


この記事が参加している募集

推薦図書

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?