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ねこさん・わんちゃんの下部尿路疾患 その5  下部尿路疾患の対策 中編


はじめに

前回は、ねこさん・わんちゃんの下部尿路疾患の対策として、
● 下部尿路疾患対策の基本 ー おしっこの量を増やす ー
● ネコの特発性膀胱の対策 ー ストレス対策 ー
について解説しました。

ここで、「ネコの特発性膀胱の対策 ー ストレス対策 ー」をおさらいしておきましょう。

前回の記事と重複しますが、ネコの特発性膀胱は、ねこさんの下部尿路疾患で一番多い病気ですから、ぜひもう一度、お読みください。
(必要のない方は、目次から「ねこさんのストルバイト結石対策」にとんでください。)

ネコの特発性膀胱の対策 ー ストレス対策 ー

ネコの特発性膀胱の原因と考えられるのが「濃いおしっこ」と「ストレス」ですから、ネコの特発性膀胱の対策には、おしっこの量を増やして濃くなりすぎないようにすることと、ストレス対策が必要です。

ネコの特発性膀胱炎の原因

おしっこの量を増やすために重要なことは、前回解説したとおりです。


ここではストレス対策について、おさらいします。

ストレス対策の一番はストレスの原因を取り除くことですが、なかなかストレスの原因を特定することはできません。
そのため、ねこさんができるだけストレスをやわらげられるようにしてあげることが必要です。

そのための方法をふたつ紹介します。

1.隠れられる場所をつくる

ひとつめは、ねこさんが隠れられる場所をつくってあげることです。

ねこさんはストレスを感じると、せまくて、暗くて、静かなところに隠れようとします。
ですから、ねこさんの避難場所として、そのような場所を用意しておいてあげてください。


2.ストレス反応を抑える栄養素

ストレスをやわらげる方法のふたつめは、ストレス反応を抑える働きのある栄養素を取ることです。

ストレス反応を抑える働きのある栄養素はいくつか知られています。

そのひとつが「トリプトファン」です。

ストレスを受け続けると、脳で精神を安定させる働きのある「セロトニン」の働きが弱くなってしまいます。
セロトニンの多くは腸で作られているのですが、セロトニンは血管から脳の中に入ることができません。

そこでトリプトファンです。
トリプトファンは血管から脳の中入ることができ、脳の中で代謝されてセロトニンになります

ですから、例えばサプリメントなどでセロトニンそのものを摂取してもストレス対策にはなりませんが、トリプトファンはストレス対策に有効なので
す。

トリプトファンとセロトニン


ストレス反応を抑える働きのある栄養素をもうひとつ紹介します。
それはミルクに含まれるタンパク質の一種です。

名前はややこしいのでスルーしてもらってもかまわないのですが、
「アルファS1エスワントリプシンカゼイン」という名前のタンパク質です。

みなさんは「GABAギャバ(ガンマ‐アミノ酪酸らくさん)」という名前を聞いたことはありませんか?
GABAが入ったチョコレートなども販売されていますね。

このGABAには神経が過剰に反応するのを抑える働きがあります。
そしてミルクに含まれるタンパク質はGABAの作用を強めてくれます。

このミルクのタンパク質を使ったフードを、こわがりのねこさんにあげると、こわがりがおさまることがあります。

じつをいうと、うちのチビは以前はとてもこわがりで、家の中でもなかなか顔を見せない子だったのですが、このミルクのタンパク質を使ったフードあげるようにしてからは、ずいぶん甘えん坊になりました。

ただ、今のところ、このタイプのキャットフードは療法食などにしかありません。試してみたい人は、かかりつけの動物病院で相談してみてください。

すっかり甘えん坊になったチビ

※ 今回は、ねこさんのお話だけになってしまいます。
  わんちゃんの飼い主のみなさん、ごめんなさい🙇
  次回はわんちゃんのお話です。


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2頭のねこさんと暮らす、ペットフード会社に25年以上勤めた獣医師が、ねこさん、わんちゃんの健康と栄養学、ペットフードの本当の中身について、…

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