受験数学の勉強法

今日は本職の仕事関係で、数学の勉強法について発信してみたいと思う
これは毎年度開始時にプリントで配っている内容の2020年度版であり、想定しているのは大学受験を控えている高校生や浪人生である
全体の概観としての勉強法であり、個別の問題集の使い方などについては触れていないことはご承知いただきたい(後々別のnoteとして記事を作成しようと計画している)

1:高校における数学とは

高校で学ぶ数学は「定義を元に定理 · 公式 · 性質を導き、それらを応用して個々の問題を解決する」ことが要求される
これは大きく分けると次の3つの段階に区分できる
(1) 定義や計算方法を正しく理解し、定理の証明や公式 · 性 質の導出ができる、これらを利用できる
(2) 典型的な問題の解法が理解でき、解くことができる
(3) 既存の知識や考え方を応用し、複雑な問題が解決できる
これらは順に
(1)基本 · 計算問題 (2)標準 · 典型問題 (3) 応用問題
とも区分でき、数学の学習がこれらの段階を経ているということを認識し、各分野で自分がどの水準にいるのかを把握する必要がある

2: 実際に問題が解けるようになるには

実際に問題が解けるようになるために特に大切なこととして下記の 4 つが挙げられる
・手を動かすことを面倒くさがらない
・何故そうなるのかを考える
・わかりやすく説明できるかを考える
・わからないことは誰かにすぐ聞く
これらについて1つずつ詳しく説明していこう

2−1:手を動かすことを面倒くさがらない

1 つ目の大切なことは、「手を動かすことを面倒くさがらない」ことであるたとえば、普段問題を解いているとき、「この問題や計算は簡単だし、できそうだから」という理由で実際に解くことを省略していないだろうか
実際に容易に解ける問題もあるだろうが、そのような問題でも面倒くさがらず手を動かし、実際に解けることを確認する習慣をつけよう
計算力のような基本能力は、日頃からの地道な訓練によってのみ向上する
計算しながら、より簡単に計算するための工夫はないかと考えたり、ミスなく速く計算し切るにはどうすればいいかを考えたり、日常的に「試行錯誤」できているかが物をいう

さらに、難しい問題に取り組むときはただ問題を眺めるだけではなく、実際に手を動かしながら考えることが大切である
例えば図形問題ならば、図を書きながらわかる値を入力し、必要な図や注目している部分を再び書き出してみよう
例えば整数問題ならば具体的な数で実験してみよう
時間のある今の内にこそ、 手を動かすことを億劫がらずに試行錯誤という経験を積み上 げていくことを心がけなくてはならない
そういった泥臭い経験を通じて、将来的に様々な問題を解けるようになるための下地が完成していく

2−2:何故そうなるのかを考える

2つ目の大切なことは、「何故そうなるのかを考える」ことである
言い換えると「自分は理解できているか」と自問し、さらに自答できるかを考えるということである
例えば定理や公式を利用するときには、なぜその定理や公式が成立するのか、なぜこの定理や公式を利用すればよいのか、といったことが自分で説明できるか考えてみよう。
難しい問題においては、なぜそのような解法が思いつ くのかを考えながら問題に取り組んだり解説を読んだりしてみよう
自学中でも授業中でも、どんな場面においても「何故そうなるのか」を一つずつしっかりと考えることで、自分が本当に理解できているのかを確認することができる
自分の理解できていることと理解できていないことの境界線がどこにあるのかを意識し、少しずつ理解できることを増やしていけるよう頑張ろう

2−3:わかりやすく説明できるかを考える

3 つ目の大切なことは、「わかりやすく説明できるかを考える」ことである
数学は自分が理解していれば良いと言うものではなく、自分の理解を適切な日本語や数式を用いて表現できることも大切だ
「相手」はその説明で理解できるだろうかと考える習慣を身につけよう
受験に絞って考えると、例えば記述式の解答は自分が理解で きていることを採点者にアピールする場と言える
自分の説明で相手(=採点者)は正しく意図を読み取れるかを考えてみよう
なお、自分の説明で本当に相手が正しく理解できるかを一人で確認するのは難しい
誰かに自分の解答や説明を見たり聞いたりしてもらえるチャンスは積極的に活かし、自分の理解を相手に正しく伝える訓練を積もう

2−4:わからないことは誰かにすぐ聞く

大切なことの 4 点目は「わからないことは誰かにすぐ聞く」 ことである
どれだけ考えてもどうしてもわからないことは、そのことに詳しい誰かに聞くことが大切だ
例えば友人や先生など「人」に聞くことが考えられるだろう
例えば参考書やインターネットといった詳しい情報が載っているものを参照してみることもできるだろう
わからないことを解決するためのありとあらゆる手段を講じることを忘れてはいけない

3:暗記か理解か

誰しも一度くらいは「数学で大切なのは暗記か?理解か?」という問いを耳にしたことはあるのではないか
この問いに対する私の答えは「暗記も理解もどちらも段階的に必要」である

例えば、新しい分野を学ぶ中で様々な定義が現れるが、初学時点でこれらの定義を完璧に「理解する」ことは困難であり、一度は覚えるために「暗記する」必要があるだろう
しかしその分野の学習を進めていくうち、初めは暗記していた定義が具体例やさまざまな定理を通じて自然なものとして納得できるようになっていく
そうなれば最早それは暗記ではなく、歴とした理解と言える

そもそも暗記、つまり覚えること自体は学習の中で必須だ
しかし、字面だけ覚えようとしてもそれは長期記憶として定着しないし、たとえ問題の解答を一字一句覚えようとしたところで、条件が少し変われば応用が利かなくなってしまう
数学においては、例えば具体例をいくつも示してみたり、例えば類型の問題を解くなかで条件を一般化したりと、具体化と抽象化を通じて理解に至り、結果的に知識として定着するのだ

このように知識として定着させるために、「何故そうなるのか」「何故そうい言えるのか」を常々考え、あれやこれやと「試行錯誤」する習慣が必要となる
最終的に自分の言葉で一から内容を構成し直せるようになれば完璧と言えるので、そこを目指して学習することを推奨したい

4:最後に

最初にも述べた通り、上記の内容は概観としての勉強法である
そのため、具体的な内容ではなく心得のようなものとなっていることを心にとめてほしい

「具体的に何をどのように使えば良いのか」というのは、学習の段階が人によって違うことから一概に言えるものではない
大体の方向性は指南可能なので、それは別の機会に紹介したいと思う

どのような段階で何を使って勉強していようとも、数学を学ぶ以上はここまでの内容(心得)は必須である
自分の普段の学習の中でこれらのことが実践できているかを顧みて、できていないことがあれば一つずつできるように日々頑張ってほしい

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