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文章の未来

文章を書いていくにあたって、どこで何を書いていけばいいかちょっと迷っている。

こないだふと、雨宮まみさんが亡くなってまだ一年か(もっと長い気がした)(雨宮まみのいないインターネットをもう一年も生きてしまった)、と思って、ウェブ連載はときどき読んでいたけど単行本は買ったきり積んでいた『東京を生きる』を読んでいて思ったのが、これめちゃめちゃいい文章でいい本なんだけど、こういうのを作っても今はそんなに売れないのかもしれない……、ということだった。
東京という街と雨宮さん自身の生き方について綴られた本で、ひりひりと切実で、文章は研ぎ澄まされていて、美意識もスッと通っていて、綺麗に磨かれた宝石のような本だ。だけどそんな磨き抜かれた宝石のようなハードカバーの本を作っても、今はあまり買う人いないのかも、と思ってしまったのだ。

本を買うとき、何か実用性があるものにはみんなお金を出しやすいけど、コラムやエッセイだと「こういうのはウェブで読めばいいや」ってなって、わざわざ紙の本を買う人は減っているんじゃないだろうか。僕が子供の頃はウェブなんてなかったので、文字を読みたいときは軽いエッセイ集とかを貪るように紙の本で読んでいたんだけど、そんな日は過ぎ去ってしまったのかもしれない(遠い目)。

僕は文章を書くのが好きなので、今まで自分の目指すところとして、もっともっと文章が上手くなってすごく良い本を作れるようになればいいんじゃないかと思っていたんだけど、今の時代そういうのもちょっと時代に合わないのかもしれないとか思ってしまった。じゃあどこを目指せばいいのだろうか。ちょっと目標を喪失してしまっている。
良い文章自体は滅びはしない。時代が変わっても、良い文章は良い文章として評価され続けるだろう。でも例えば、詩とか短歌とかを例に出すと、それをどこかでふと目にしたら「良いな」と思う人は多いだろうけど、一冊丸ごと詩とか短歌とかが詰まってる詩集とか歌集とか買う人は少ない。そういうのはよっぽどマニアじゃないと買わない。名文というものもそういう方向に近づいていくのかもしれない。

数年前に永井祐さんの歌集(『日本の中でたのしく暮らす』)が出たときに枡野浩一さんがイベントで「歌はすごくいいんだけど、長過ぎる。この本は100ページくらいで薄いほうだけどそれでも長い。僕は短歌大好き人間だから全部読んだけど、普通のひとは短歌ばっかりこんなに読めないよ」って言ってたのがとても印象に残っていて、ときどき思い出す。短いコラムみたいなものもそういう道を辿るのかもしれない。まとめてわざわざ本で読むものじゃない、みたいな。
エッセイやコラム集はどういう方向を目指すべきなのだろうか。内容は少なくても薄くて読みやすくて、装飾性が高くてモノとして手に入れたくなるようなのがいいのかも? 詩集のような。そういうのを何かのイベントで直接手売りしたりするとかのほうが売れるのかも? ついでに著者本人がサインするとか握手するとかチェキとか付けたら売れるかも? 最近、同人誌とか地下アイドルとか見てるといろんな売り方といろんな需要があるんだなあと思う。なんか参考にできるかな。

僕は昔短歌を作っていたのだけど、「短歌って読者が少なくて狭い世界過ぎるな……」という理由で作らなくなったことがある(穂村弘や枡野浩一くらいの、短歌界の外にも響くくらいの才能があったら短歌を続けていたかもしれないけれど、そこまでの才能はなかった)。だから、今までみたいな軽い文章を買う人が少なくなるのなら、別の場や別の表現方法を探すのもありかもしれないと考える。僕は、読者がある程度一般的な層まで広がっていてそこで評価を得られることと、ある程度金銭的に報われること、を必要とするようだ。多分そのへんの感覚が、僕の活動に最低限のポップさを保証してくれている。

中島らもや穂村弘みたいな素敵なエッセイを書いてエッセイ集を出したいとかずっと思ってたけどそういう時代じゃないのかもな。ほむほむとかは年齢的にも実績的にもこのままで逃げ切れるだろうけど、僕はこれからも文章を書いていくのならもうちょっと何か新しいやり方を考えていかないといけなさそう。

これからの文章コンテンツの発表のしかたについてどうするべきか。このnoteも新しい一つの方向性だと思って使っているのだけど、まだもう一歩なんか足りない感じもする。

読む人の多さを求めるなら無料のブログが一番だけど、そんなにお金にならない。ウェブや雑誌などのメディアに記事を依頼されて書く場合もあまり大した額じゃない。僕の現状としては、出版社から単行本を出すのが金銭リターンは一番多い。そんなに儲かるってほどじゃないけど。同人誌とかZINEとかはどうなんだろ。いろいろ作業がめんどくさそうだし商業出版で出せるなら商業で出すのがいいのかな。

このnoteみたいにウェブで課金するシステムはどうなのか。白饅頭さんとかぱぷりこさんとかの気合いの入ったボリュームの多い記事は単品でもかなり売れてるような気がするけど、僕が書くようなゆるい文章は一本ずつ売ってもあんまり売れなさそう。ファンクラブ的な感じで月額で日記を書くとかならありなのかな。林伸次さんみたいに投げ銭タイプで軽く読める文章をたくさん書くのも良いスタイルだなと思う。どれくらい投げ銭があるのか全然想像できないけど。

ウェブ記事で、ヨッピーさんとかみたいにスポンサー付きの記事を書くと額が一桁違うという話もあるけど、あまりそういうのも向いてなさそうだしなあ。どこに進むのがよいのだろうか。とりあえずもうちょっとnoteやってみるか、という気持ちでいろいろやってみます。

曖昧日記(2018年〜)|pha|note
https://note.mu/pha/m/m187446dfacda

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