薬備(ヤクビ)〜保険薬局薬剤師のアカデミック備忘録〜鎌田貴志

仕事より趣味を重視しがちな薬局薬剤師です。薬物動態学や製剤学など薬剤師ならではの視点を…

薬備(ヤクビ)〜保険薬局薬剤師のアカデミック備忘録〜鎌田貴志

仕事より趣味を重視しがちな薬局薬剤師です。薬物動態学や製剤学など薬剤師ならではの視点を如何にして医療現場で生かすか、薬剤師という職業の利用価値をどう社会に周知できるかを模索してます。日経DIクイズへの投稿や、「鹿児島腎と薬剤研究会」等で活動しています。

最近の記事

エスワン製剤、「Ccr<30症例では投与しない」という認識だと思うが、添付文書にはそのような記載はない。それどころか、Ccr<30症例への投与結果が記載されている。投与していいの?ダメなの?どっち?

 適正使用ガイド等では、「テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤」はクレアチニンクリアランス(Ccr)30mL/min以下の症例では「投与不可」となっている(以下の図参照)。  ただ、添付文書上、禁忌とはなってない。  禁忌項目には「重篤な腎障害」という文言はあるが、Ccr<30=重篤な腎障害という意味ではないので、これをもって「Ccr<30には投与不可」とするのは無理がある。  またCcrに関する記載は、50未満の記載までで、添付文書上30未満には触れられていな

    • 塩化カリウム徐放錠600mgの6錠/日をグルコン酸カリウム(4mEq/g)へ変更したら1日何gが望ましい? ※アスパラKへの変更は注意!

      という処方が、医療機関変更のため という処方内容に変わっていた。体調は安定しており、Dr.からは「薬の量は変わらずに出しておく」と言われたそう。 ※過量投与気味だが、そこは今回は横に置いておいて・・・(^_^;) さて、この処方内容はカリウム力価的に同等と言えるかどうかを考えていこう。  電解質の力価を比較する際は、「mg」ではなく「mEq」を使わなければならない。添付文書を見ると、  塩化カリウム徐放錠600mg「St」 : 1錠=8mEq  グルコンサンK細粒4mE

      • 0410対応時の、FAX処方箋を保管するルールってまだ生きてる?(2022年6月現在)

         令和2年4月10日、いわゆる「0410通知」が出されて、感染防止の非常時対応として、オンライン・電話による診療や服薬指導を希望する患者に対して、FAX処方箋での調剤が可能となりました。 中医協総-1-参考2.4.10 事務連絡令和2年4月10日 新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて  その中で、以下のような一文があり、FAX処方箋を処方箋原本と一緒に保管することになっている・・・はず。   この通知

        • リフィル処方せん取り扱い時の注意事項まとめ

           一番気をつけなければならないことは、  普段リフィル処方を受けてない場合、「リフィル可」の項目に✔が入ってることに気づきにくい。  と言うこと。  処方日数には原則として制限はない。  <例>56日分処方の「リフィル2回」なら、実質112日分処方という考えになる。  レセコン入力時は、通常入力時とは違う手順が一つ入るので注意!  シップ類や向精神薬など投与量に上限のあるものはリフィル対象外となるので、別処方になる。  備考欄には、今回調剤日と次回調剤予定日を記入する

        エスワン製剤、「Ccr<30症例では投与しない」という認識だと思うが、添付文書にはそのような記載はない。それどころか、Ccr<30症例への投与結果が記載されている。投与していいの?ダメなの?どっち?

          <注意!>ラクツロース製剤で一般的な便秘症に保険適応があるのは1製剤しかない。

           ラクツロース製剤が処方されている慢性便秘症例を時々目にするが、適応があるのは「ラグノスNF経口ゼリー」のみ。  その他のラクツロース製剤で使える便秘症は「産婦人科術後の」となっているので注意が必要。  また、一見、ラグノスNF経口ゼリーのジェネリックっぽい名称の「ラクツロース経口ゼリー分包16.05g『サトウ』」にも慢性便秘の適応症はないので要注意!

          <注意!>ラクツロース製剤で一般的な便秘症に保険適応があるのは1製剤しかない。

          調剤レセプトのオンライン請求用データを解析してみた

           「レセコンの不具合で、一部の点数が請求されてない可能性がある」という一報があったもんだから、急いでレセプト請求データを解析してみた。初めてやってみた♪  データの中身ってこんな数字の羅列だらけで表現されてるんやねぇ。  紙レセプトでは最下段にあるはずの「請求点」や「一部負担金額」がデータだとけっこう上の方にある。  「調剤基本料」や「調剤管理料」、「薬剤調整料」などの文言も数列で表記されてるもよう。  なんの役に立つか分からんけど、メモがてらここに記録。

          調剤レセプトのオンライン請求用データを解析してみた

          消毒用アルコールの至適濃度はなぜ「76.9~81.4vol%」と幅があるのか。

           2022年5月現在、「消毒」はもう日常生活で欠かせなくなった。  一時期、次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸水も出回ったが、やはり一般的な消毒は「消毒用エタノール」が確実だ。  標記の問いだが、結論から言うと、これまでの数々の実験データや論文報告、経験などに基づくものとされており、明確な根拠を見つけることができなかった。 消毒用エタノールの至適濃度範囲 日本薬局方で定義されている濃度が「76.9~81.4vol%」(15℃)で、それに準拠したものが主に「消毒用エタノール」と

          消毒用アルコールの至適濃度はなぜ「76.9~81.4vol%」と幅があるのか。

          自宅療養してる濃厚接触者が7日待たずに職場復帰できる方法がある!(陽性者が同居家族でオミクロン株の場合に限る)

           2022年3月31日現在、オミクロン株陽性者の濃厚接触者の自宅待機期間は、最終暴露日(陽性者等の接触等)から7日間となっている。  しかし、家族の誰かが陽性となった場合、同居してる人は常に接触することになるから「最終暴露日」は存在しない。そこで、 陽性者の発症日(無症状の場合は検体採取日) 住居内で感染対策を講じた日 のいずれか遅い方をゼロ日目として、7日目まで発症しない場合には濃厚接触者としての待機期間を終了できる。  ※家庭内で別の者が陽性になった場合は、その者の

          自宅療養してる濃厚接触者が7日待たずに職場復帰できる方法がある!(陽性者が同居家族でオミクロン株の場合に限る)

          非結核性抗酸菌(NTM:Nontuberculous Mycobacteria)は200種類以上の菌腫が存在。中でもMAC菌は最も感染症を起こしやすい。日本ではNTM症の9割が肺MAC症と言われている。 引用元)https://www.amed.go.jp/news/seika/kenkyu/20210426.html

          非結核性抗酸菌(NTM:Nontuberculous Mycobacteria)は200種類以上の菌腫が存在。中でもMAC菌は最も感染症を起こしやすい。日本ではNTM症の9割が肺MAC症と言われている。 引用元)https://www.amed.go.jp/news/seika/kenkyu/20210426.html

          IgA腎症は主に血尿、ネフローゼは尿ンパク。IgAは稀にタンパク漏出もある。

          IgA腎症は主に血尿、ネフローゼは尿ンパク。IgAは稀にタンパク漏出もある。

          ウイルスは不織布マスクの繊維の隙間を通る?通らない?

           いきなり答えを表示しますが・・・ ※「マスクの穴5μm」は不織布マスクの場合です。布マスクやウレタンマスクはもっと大きな隙間があります。 ※表記してるそれぞれの大きさはあくまでも平均的な数字です。  ここに描かれている一番左の灰色部分は髪の毛の「断面」です。花粉もミクロの世界だとこんなに大きいんですね。  こうしてみると、ウイルスはけた違いに小さいことが分かります。  ただ、自然界でウイルスが1粒だけで存在していることは皆無です。「飛沫核」のような塊で存在しています。

          ウイルスは不織布マスクの繊維の隙間を通る?通らない?

          ブデホル吸入粉末剤、1回3吸入以上定期吸入する場合は、発作時吸入はしてはいけない?

           喘息患者に対し、こんな処方が来た。  ブデソニド・ホルモテロールフマル酸塩水和物  4キット   1日2回 1回4吸入   SMART療法可 シムビコート🄬の添付文書には下表が記載されている(喘息患者)。  上表の下段最右に「通常合計8吸入まで、一時的に合計12吸入まで」とあるので、恥ずかしながら1日12吸入までならどのような形でもいけるのかと思っていた。  ※COPDの場合は「1回2吸入・1日2回」の用法のみ(適宜増減記載もなし)。  でも「7.用法及び用量に関連

          ブデホル吸入粉末剤、1回3吸入以上定期吸入する場合は、発作時吸入はしてはいけない?

          プラミペキソール製剤のレストレスレッグス適応、0.125mgと0.5mgにはあるのに、その中間の0.375mgにないのはなぜ?

           先発品も後発品も、普通錠である0.125mgと0.5mgの製剤には「効能・効果」の項目に「特発性レストレスレッグス症候群」の記載があるが、 徐放錠である「LA 0.375mg」製剤の適応は「パーキンソン病」だけになっている。  なんとなく想像はできるが、一応メーカーDIに確認。  レストレスレッグスは、主に夜間のみに発症するものなので、24hr効果が持続する「LA錠」は適さないと判断されたそう。  0.375mg製剤の審査結果報告書にも同様の旨の記載がある。

          プラミペキソール製剤のレストレスレッグス適応、0.125mgと0.5mgにはあるのに、その中間の0.375mgにないのはなぜ?

          薬歴に必要事項を記載しておけば、調剤録は印刷しなくてもよくなる?

           昭和36年6月14日に発行されてずっと変わらなかった「保険薬局の分割調剤及び調剤録の取扱いについて」(保険発第57号)が令和2年11月10日に「保医発1110 第1号」として改訂されて、 調剤録は、調剤済となった処方箋又は患者の服薬状況や指導内容等を記録し たもの(薬剤服用歴等)に調剤録と同様の事項を記入したものをもって代えることができること。 と明記された。 条件は以下の4つ (1)薬剤師法施行規則第 16 条に規定する事項 (2)患者の被保険者証記号番号、保険者

          薬歴に必要事項を記載しておけば、調剤録は印刷しなくてもよくなる?

          ピロリ除菌薬服用中に、酪酸菌製剤などのいわゆる整腸剤の併用は必要か?

           抗菌薬の作用に加えて、P-CAB(ボノプラザン)やPPIは、その胃酸分泌抑制作用により、服用中は腸内細菌叢を撹乱することが報告されているが、除菌療法の成否を判定する投薬後2カ月の時点では、腸内細菌叢は除菌前の状態に戻ると言われている。 出展)日経メディカルNEWS&REPORT 2021/5/26記事  服用中はやはり腸内細菌叢は乱れるので、整腸剤の併用は必要ということか。  ポリファーマシー改善の声が多く上がる時代なので、少しでも薬は減らしたいところだが、これはまぁし

          ピロリ除菌薬服用中に、酪酸菌製剤などのいわゆる整腸剤の併用は必要か?

          フマル酸第一鉄1カプセルはクエン酸第一鉄ナトリウムだと何錠に相当する?

           汎用されている医療用鉄製剤の鉄含有量と用法用量は以下の通り。 ○クエン酸第一鉄ナトリウム470.9mg/錠(鉄として50mg/錠)  用法:通常、鉄として1日100~200mg(2~4錠 or 1.2~2.4g)を1~2回に分けて食後経口投与 ○フマル酸第一鉄305.0mg/錠(Fe++(鉄)として100mg/錠)  用法:通常、1日1回1カプセルを経口投与 ○乾燥硫酸鉄を鉄として105mg/錠  用法:通常、鉄として1日105~210mg(1~2 錠)を1~2回に分けて

          フマル酸第一鉄1カプセルはクエン酸第一鉄ナトリウムだと何錠に相当する?