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トラベルミンの制吐効果は何分くらいで効き始める?持続時間は?〜体内動態データはない〜

 トラベルミン配合錠の添付文書には体内動態の項目すらなく、インタビューフォームでは全て「該当資料なし」の記載・・・(泣)。
 ってことで、配合成分である「ジフェンヒドラミンサリチル酸塩」と「ジプロフィリン」の体内動態を他の医薬品から失敬してくることにする。
 幸いにも「カフコデN配合錠®」が両方とも配合しており、いずれの体内動態データも記載があった。

 それによると、Tmaxは、ジフェンヒドラミンサリチル酸が「ジフェンヒドラミンとして」約1.95hr、ジプロフィリンが0.9hrとなっている。
 制吐には主にジフェンが効くだろうから、効果発現までは1.95hrの1/4~1/2・・・つまり、0.5~1hr程度ではないかと推測される。
 乗り物酔い対策で服用するときは、30分以上前には飲んでおくべきだろう。

 次は持続時間の推測。ジフェンヒドラミンサリチル酸としての消失や蓄積に関するデータはどこにもない。
 しかし、塩酸塩錠(レスタミンコーワ錠®︎)のインタビューフォームに「ジフェンヒドラミンとして」のデータがあったので、それを利用してみる。

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 薬物動態の項目には上記のような記載がある。
 消失速度定数が分かれば、持続時間の推測が出来るが、そこは「該当資料なし」なので、ここでは数値が分かっているクリアランス(CL)と分布容積(Vd)を使って消失時間を推測してみようと思う。

 まず、体重を50kgとすると、Vdは165〜340Lになり、Vdは非常に大きい…つまり体内蓄積性があることが推測できる。
 また、ジフェンヒドラミンの体内量を体液量に換算した場合、1分間に0.6〜1.3Lの速度で体内から消失していることがCL値から読み取れるので、このVdとCLの関係から体液が全て消失してしまうまでの時間が算出でき、それがジフェンヒドラミンの消失時間と考えることが可能(ま、実際は体液が消失したら死んでしまうので、あくまでも過程の話だがwww)。

 計算すると、最短で126分、最長で571分と算出できた。
 ちょっと幅が大きいが、持続時間は約2〜9hrという目安にならないだろうか。

 ちなみに、ジフェンヒドラミンとジプロフィリンの組み合わせは平衡感覚に関わる神経を鎮静させる作用が確認されているが、詳細な作用機序は不明。
 乗り物酔いは、揺れによって三半規管内(と蝸牛内)に満たされているリンパ液が振動することで平衡感覚の異常を感知するが、視覚から特に異常感覚情報が入って来ないときに、神経が混乱して目眩や嘔吐として症状に現れる。
 この平衡感覚の異常感知というのをトラベルミンは抑制する。

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仕事より趣味を重視しがちな薬局薬剤師です。薬物動態学や製剤学など薬剤師ならではの視点を如何にして医療現場で生かすか、薬剤師という職業の利用価値をどう社会に周知できるかを模索してます。日経DIクイズへの投稿や、「鹿児島腎と薬剤研究会」等で活動しています。