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ジメチコン(ガスコン®)の腸管内消泡作用ってどんな機序?

 ガスコンの一般名はジメチコンで、化学名はジメチルポリシロキサン
 ポリシロキサンとは、シロキサン結合(-Si-O-Si-)を主骨格にした人工高分子化合物。
 ケトン(-C-O-C-)の炭素をケイ素に置き換えたシリコケトン(silicoketoneが語源)で、シリコーン(silicone)とも呼ばれる。

 ちなみに、一般的に知られている樹脂などのシリコンは、本来はシリコーンと呼ばれるべきもの。
 シリコン(silicon)は単なるケイ素の英名だから。

 話が逸れたが、ジメチコンはこのシリコーンのSiにメチル基が2つずつ結合した構造(-Si(CH3)2-O-Si(CH3)2-)をしている。
 この構造は螺旋上になっており、分子全体でみると表面をメチル基が覆っているような状態になっている(下図)。

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 メチル基は電荷的に安定な原子団のため、分子間力が小さくて分子の凝集力が弱い。
 液体の場合、これは表面張力が弱いことに繋がる。

 さて、ここからガスコンの作用機序の話になる。
 腸管内で過発生したガスは基本的に腸管壁に気泡としてへばりついている。
 この気泡というのは意外に安定なもので、なかなか消えない。
 ここにジメチルポリシロキサンが溶け込むと、分子間力が落ちて表面張力が弱まるため気泡の膜に穴が開き、気泡は消失する。
 まるでシャボン玉が割れるように。
 中にたまってたガスは腸管内に放出され、腸管内を移動しやすくなる。
 一部は腸管壁から吸収されて血中に溶け込み、大部分はげっぷや放屁として体外に放出されやすくなる。

 (余談)保湿剤などにシリコーンオイルが含まれてることがあるが、これもジメチルポリシロキサンの「反表面張力」作用を利用して、皮膚上で水分などがはじけずに皮膚内に浸透しやすくするようなイメージだろう。

仕事より趣味を重視しがちな薬局薬剤師です。薬物動態学や製剤学など薬剤師ならではの視点を如何にして医療現場で生かすか、薬剤師という職業の利用価値をどう社会に周知できるかを模索してます。日経DIクイズへの投稿や、「鹿児島腎と薬剤研究会」等で活動しています。