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バイエル、経口第XIa因子阻害剤asundexian第3相試験プログラム開始-エリキュースとの比較試験実施へ

バイエル薬品は2022年9月2日、独・バイエル本社が実施する経口FXIa阻害剤asundexianの第3相プログラム「OCEANIC」を開始と発表。心房細動患者および非心原性虚血性脳卒中・ハイリスク一過性脳虚血発作患者への新たな治療薬候補として有効性・安全性を検証する。同プログラムは、バイエルがこれまでに実施した最大規模の第3相試験プログラムの1つ。

OCEANICプログラムは、第2相プログラムPACIFICから得られたデータに基づく。後期第2相試験PACIFIC-STROKE2およびPACIFIC-AMI3ではそれぞれ、急性非心原性虚血性脳卒中患者または急性心筋梗塞発症後患者を対象に、安全性と有効性がプラセボと比較検討された。安全性は2試験ともに、基礎治療にかかわらずプラセボ群と同程度との結果が示された。以前発表されたPACIFIC-AF試験4(心房細動)を含め、試験が完了した後期第2相臨床試験プログラムPACIFICから得られたデータは、同剤が出血リスクに重大な影響を与えることなく、血栓性イベントの発現リスクを低下させるとの仮説の根拠になっている。

今回実施する第3相試験プログラムOCEANICは、2つの大規模国際共同試験(OCEANIC-AF試験、OCEANIC-STROKE試験)で構成され、世界40カ国以上から最大3万人の被験者の登録が見込まれる。

OCEANIC-AF試験では心房細動患者を対象に、同剤とエリキュース(一般名:アピキサバン)の比較試験が実施される予定。OCEANIC-AFの主要目的は、脳卒中と全身性塞栓症の発症抑制効果を確認し、同剤投与の患者で、エリキュースと比べより低い出血リスクを示すこと。最初の患者登録は年内の予定。

OCEANIC-STROKE試験は、非心原性虚血性脳卒中またはハイリスク一過性脳虚血発作の発症後患者を対象に、同剤を標準治療の抗血小板療法に上乗せ投与した場合について検討するプラセボ対照試験。主要目的は、プラセボと比べ、出血リスクを有意に増加させることなく虚血性脳卒中のリスク低下を示すこと。1日1回投与の経口FXIa阻害剤asundexianには選択的な抗凝固作用があることから、血栓症の発症抑制における新たな治療選択肢候補になる可能性がある。

【PACIFIC-STROKE試験】
同試験は、無作為化、プラセボ対照、二重盲検、並行群間比較、用量設定後期第2相臨床試験。
急性非心原性虚血性脳卒中発症後を対象に、同剤の安全性と有効性を検討。同試験の目的は、急性非心原性虚血性脳卒中発症後患者において、抗血小板剤の単剤療法(SAPT)または2剤併用療法(DAPT)に上乗せした同剤の有効性と出血プロファイルの用量反応性をプラセボと比較検討すること。有効性の主要評価項目は、症候性虚血性脳卒中とMRIで検出された無症候性脳梗塞の複合で、安全性の主要評価項目は、国際血栓止血学会(ISTH)基準による重大な出血事象と重大ではないが臨床的に問題となる出血事象だった。同試験には、23カ国、196施設より被験者1808人が登録した。すべての被験者は、発症後48時間以内に治験薬の投与が開始され、26~52週間にわたり投与が継続された。被験者には、SAPTまたはDAPTに上乗せして同剤の経口剤10mg、20mg、50mgまたはプラセボが1日1回投与を実施。同剤は、標準療法の抗血小板療法に上乗せ投与された場合に、プラセボと同程度の安全性が示された。同試験には有効性を検証するための検出力はないものの、虚血性脳卒中イベントの再発抑制に関するデータが得られた。PACIFIC-STROKE試験の結果は、査読付きの医学誌に受理されている。


【PACIFIC-AMI試験】
同試験は、多施設共同、無作為化、プラセボ対照、二重盲検、並行群間比較、用量設定後期第2相臨床試験。急性心筋梗塞発症後を対象に、同剤の安全性と有効性が検討された。同試験では、標準治療のDAPTに上乗せして同剤の経口剤10mg、20mg、50mgを1日1回投与し、プラセボと比較検討した。有効性の主要評価項目は、心血管死、心筋梗塞、脳卒中、ステント血栓症の複合で、安全性の主要評価項目は、Bleeding Academic Research Consortium(BARC)出血分類の2、3、5型だった。

世界23カ国、157施設から被験者1601人が無作為割り付けで登録。すべての被験者は、インデックス心筋梗塞イベントによる入院後5日以内に治験薬の投与を開始。26~52週間にわたり投与を継続した。同剤はDAPTと併用した場合、出血を含む安全性データはプラセボと同程度で、忍容性は良好。同試験は、血栓性イベント発現の差異を検証するための検出力はなかった。PACIFIC-AMI試験の結果は、医学誌サーキュレーションのオンライン版(2022年8月28日)に同時掲載。

【PACIFIC-AF試験】
同試験は、無作為化、二重盲検、用量設定第2相臨床試験。CHA2DS2-VAScスコアが男性2点以上、女性3点以上の出血リスクが高い心房細動を対象に、同剤の20mgか50mg 1日1回投与とアピキサバン1日2回投与を比較検討した。主要評価項目は、重大な出血事象、または重大ではないが臨床的に問題となる出血事象の複合だった。同剤の20mg、50mgの投与はいずれも、アピキサバンと比較して出血事象の発現が低く(各用量群の統合データにおける発現率の比0.33)、生体内のFXIaをほぼ完全に阻害することが示された。同試験は、血栓性イベント発現率の差異を識別し、検証するための検出力はなかった。

【FXIa臨床試験プログラム】
後期第2相臨床試験プログラムPACIFICは、心房細動(不整脈)、急性非心原性虚血性脳卒中、急性心筋梗塞(心臓発作)のいずれかの疾患を対象とする3つの後期第2相臨床試験で構成される。

PACIFICは、世界で最も広範なFXIaの後期第2相臨床試験プログラムの1つ。これまでに被験者4000人以上が登録された。

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