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広報力0なスタートアップが資金調達PRをやってみた学び

こんにちは。オンライン薬局で医療体験をなめらかに、PharmaX株式会社でプロダクトマネージャーをやっている稲垣慶典(@InagakiKay)です。

先日、PharmaXは総額5億円の資金調達と株式会社KDDIさまとの協働、社名の変更について発表させていただきました。

ここ数年で資金調達PRの手法が多様化しつつ、さまざまな情報が流通するようになりました。私たちもそうした情報を存分に参考にさせていただいたこともあり、スタートアップ界に少しでも経験と学びを還元したいと思い、今回noteにまとめさせていただきました。

想定読者としては、

  • 数ヶ月先に資金調達の計画がある

  • でも、広報経験者がいないし、発信力が強いわけではない……

  • そして、調達額が大きいわけではない……

  • それでも、広報を通じて採用やサービスを強化したい

  • シリーズA〜Bくらいのフェーズ

の、よくある「普通」のスタートアップの方です。まさにPharmaXも上記に当てはまりました。

そんな普通のスタートアップが華々しく資金調達PRを成功させ……となれば良いのですが、現実には課題も多く、100%参考になる経験談ではありません。上手くいったこと、いかなかったことともに紹介させていただきます。

資金調達PRをやってみた結果

まずはイメージをお伝えするために、やってきた結果から紹介します。

日経新聞社さまやダイヤモンドシグナルさまなどのメディアに取り上げていただいただけでなく、SNSでの盛り上がりを起点とした反響も目に見える形で実現することができました。

📰 メディア掲載

🗣 SNSでの反響

🎤 イベント

→120名申し込み

→80名申し込み

なんでやることにしたか?

PharmaXでは今年の初夏あたりに資金調達の方向性が見えてきたため、資金調達に関連したPRを検討しはじめました。しかし、当時は社内に広報の専任者がいるわけでもなく、知見も全くない状態で「プレスリリースだけでも打ちます……?」という状況でした。

しかし、資金調達PRの必要性を薄々と感じていたのも事実です。

「薬局」というニッチな領域で展開していることもあり、エンジニアやPdM等のいわゆるIT系人材からの認知度が低いことへの強い課題意識や、「オンライン薬局」という新しい業態を展開していることもあり、概念認知を醸成していく必要性を感じていました。

また、代表の辻(@YusukeZ2)含めてシャイなメンバーが多く、発信力や広報力が強いわけではないので、数少ない認知獲得の機会として注力していこうという方針に転換しました。

そこで6月末頃からプロジェクトが立ち上がり、9月13日をXデーとして準備を進めていくことになりました。

やったこと 〜進め方編〜

プロジェクトを進めていくなかで、2つのポイントを重要視して進めていきました。

1. 先人の知見を徹底的に真似ること

資金調達PRについては、ここ数年の間にもさまざまなスタートアップが知見を共有しており、手法が確立してきたような印象もあります。また、概ねアクションで共通している部分も多く、そうした「定石」をしっかり実行していくことが最低限の成功につながると考えました。

ちょうどプロジェクトを開始した時期に巷で話題になっていたカウシェさんや最近のスタートアップ界隈で常にモメンタムを生み出しているYOUTRUSTさんの取り組みは社内でかなり参考にさせていただきました。

この2社は、抽象から具体までに一貫した戦略があるので、施策に対する意図がわかりやすかったり、各施策のこだわりのレベルが高くて、アイデア力も高いので、自分達の目線感を上げたり、引き出しを増やす意味でおすすめです。

一方で、両社とも広報力が最強クラスのスタートアップ(勝手な印象ですが)なので、そのままの施策を真似ても意味がないかもしれません。

大事なのは、先人たちの取り組みのエッセンスを抽出し、自分達の総力で最大限できる取り組みに落とし込むことです。

今回は、以下をエッセンスとして自分たちの取り組みに落とし込みました。

  • 広報活動の目的を絞って効果を集中させる(PharmaXは採用目的)

  • Twitterでの広がりに集中し、「!?」な認知獲得を目指す

  • 全社メンバーでの情報発信をしっかり計画し、コツコツやっていく

  • 採用サイトやカルチャーデックはオーソドックスに、コスパよく作る

  • メディアの方とは事前にコミュニケーションをとっていく


それでも、どう考えてもやるべきことが多すぎる……


2.ゆるく、しっかり全社を巻き込む

プロジェクト発足時点でメンバーは稲垣(本業は事業部長兼プロダクトマネージャー)と新たに広報専任となったばかりの上島さん(薬剤師)の2名体制。

どう考えても無理……ということで、全社を巻き込んで協力してもらう方針を早々に決めました。

全社を巻き込む一歩目として、プロジェクトを「PharmaX爆誕PR大作戦」と命名し、「大作戦」という共通言語を作りました。

めちゃくちゃくだらない話ですが ……とはいえ、プロジェクトのことがよくわかっていない人も「大作戦ってなんなの?」「大作戦って今どうなってんの?」というキーワード認知を作ることができたので、巻き込むきっかけになったような気がします。

キックオフ資料の表紙。絶妙なダサさがポイント。

現実問題、こうした全社横断な取り組みで巻き込んでいこうとすると、各メンバーからすると仕事が増えるという感覚になりがちで、なかなか上手くいかないケースが多いのではないでしょうか?

こういうときほど、「まあ、せっかくなんだから協力してみるか」というゆるい巻き込み方が重要だと思います。以下のポイントをアクションに落とし込んで進めていきました。

  • 興味を持ってもらうきっかけづくりをこまめにする

  • 興味を持ったときにすぐ参加できるようにこまめに情報共有する

結果として、プロジェクト全体を5~6名がそれぞれオーナーとなる分科会ベースで進めることができ、前日〜当日にかけてはほぼ全社員が大作戦に何らかの形で協力してくれる体制を実現できました。

Gather上にできた「大作戦本部」。なんか作戦っぽいことをする時はいまだに使われる。

やったこと 〜アクション編〜

もともと広報力が0に近かったこともあり、戦略的に認知形成の取り組みをすることができていませんでした。そのため、今回のPRアクションを通じて「PharmaXという存在の認知範囲を広げる」をテーマにしました。つまり、①これまで届いていなかった層に認知してもらう、②PharmaX=薬局DXスタートアップという認知形成をしてもらうという2点を目指しました。

以下が実施したことのサマリです。以下は、資金調達PRではほぼ共通して実施されていることであり、普通のスタートアップが努力でなんとかできる&最低限の成果を出せるアクションだと思います。

  1. 会社の情報を伝えるコンテンツを拡充する

    1. カンパニーデック(会社案内資料)の刷新

    2. キャリアサイトの制作

    3. note記事の作成・発信

    4. イベントの実施

  2. Twitterでの認知獲得に集中

    1. 情報発信を一つの投稿に集中させる

    2. エゴサ&いいね作戦

  3. 事前にエージェントコミュニケーションやスカウトを実施

    1. 情報解禁前にエージェントにご挨拶

    2. 情報解禁前にYOUTRUSTのスカウトを送りタッチポイント創出

  4. メディアには3週間前までにアプローチ

いくつかポイントを絞って詳細を紹介します。

「Twitterゲリラいいね」作戦

Twitterで認知をとるためには、尖ったコンテンツを投下するか、発信力のあるアカウントが投稿・シェアするというのが定石だと思います。
一方で、今回の我々の場合、両方ともに欠けていたため、如何に認知獲得し、印象に残れるかを模索することにしました。

その際に、参考にしたのはYOUTRUSTさんです(再登場)。ユートラさんといえば、Twitter内での発信力のみならず、メンバー全員が自社に関連する投稿にいいねをしているのがとても印象的です。その結果、ユートラさんの印象が残りやすいだけでなく、なんとなくポジティブな印象を持ちます。

そして、なによりもこれなら僕らでも真似できる!ということで、早速真似させていただきました。

  • メンバーに協力してもらい、アイコンの枠(canvaで作成)とアカウント名を統一

  • Slack上にエゴサチャンネルをつくり、投稿されたら反応できるように

  • あとはみんなで「わー」っていいながらいいねを押す

投稿すると即時に通知欄にこれが並びました。


「あ、あの時の」作戦

資金調達PRを採用につなげていくために、情報解禁に合わせて事前の準備も進めていきました。

当初、情報解禁を経て、エージェント企業さんへご挨拶やダイレクトリクルーティングサービスでスカウトを送る流れを想定していました。しかし、事前にアプローチをすることで、AIDMAで言うAttention(注目)を得ることができれば、情報解禁日にInterest(興味)→Desire(欲求)……と繋げやすく効果を最大化できるのでは?という仮説を持つようになりました。すなわち、情報解禁日に「あ、あの時の会社か」となればより、各種コンテンツを見ていただく機会が増え、興味を持っていただけるのではということです。

実際に行ったアクションは以下です。

  • 事前にエージェント企業様向けに会社説明会

  • YOUTRUSTでスカウトをコツコツ送る

  • カジュアル面談も先んじて多数実施

結果は……

  • ☁️エージェントさんからのご紹介はあまり変化がない(事前にアプローチしなくてもしっかりご紹介いただけている)

  • ☂️スカウトも作戦による目立つ効果はなかった

  • ☀️カジュアル面談実施済みの方の反応は明確に変わった

というもので、できる限り情報解禁前にカジュアル面談の数を増やし、「あ、あの時の」作戦を実行するのは良いのかもしれません。

資金調達PRをやってみてどうだったか?

資金調達PRを採用目的で実施してきましたが、1ヶ月経った現時点で絶賛採用活動中であるため、完全な評価はできませんが、現時点では以下のように認識しています。

  • ☂️オーガニックの応募流入は効果なし

  • ☁️エージェント紹介やスカウトもPR単体では意味なく、その後のアクションが大事(PR後のスカウトは反応が良い!)

  • ☀️既に接点を持っていた候補者様の反応が変わった

総論として、資金調達PRを1日すれば何かが変わるというものではなく、前後の仕込みと掛け合わせることで採用にインパクトが出てくるという感覚を持ちました。

一方、思っていた以上に社内メンバーのインナーブランディングや士気醸成の効果があったように思います。メンバーからも「周囲からポジティブ反応をもらった」という声をいくつも聞きましたし、日経新聞さんに取り上げていただいたことはスタートアップで働く身として小さな達成感が得られる機会にもなったようです。

今回は、広報力0の「普通」のスタートアップが資金調達PRに取り組んでみた結果のシェアしてみましたが、学びとしては以下を得ることができました。

1. 広報力がないスタートアップほど資金調達PRはやったほうが良い

そもそも、リソースの少ないスタートアップにおいてどこまで広報に割くかというのは、各企業の事業特性やスタンスによると思います。

しかし、今回やってきた感じたのは、事業/サービスや組織を成長させる「コスパの良い手段」として広報はスタートアップで頑張るべきポイントなのではということです。

そして、広報に本格的にチャレンジしてみるという観点においても、資金調達PRからというのが良いと感じました。

特に何かの”ネタ”が無いタイミングで、重い腰を上げて広報活動をしてみるのは難しいでしょう。そういった意味で、資金調達のタイミングはその絶好のタイミングだったと思います。理由の一つは、発信のネタがあるので社内外の関係者を巻き込みやすいという点、もう一つは手法が型化しつつあるので定石通りやれば一定成果出せるという点です。

2. 広報は打ち上げ花火と日々のアクションの総量が重要

一方で、限界や課題も各所で痛感しました。より広く情報を届ける「量」とより正確に理解していただく「質」で分けたときに、特に「質」については日々の広報活動が重要になると感じました。

PharmaXが薬局DXというニッチな領域で取り組んでいるからこそ、前提の知識や業界トレンドの理解が必要になってきます。また、スタートアップは「ストーリー」にこそ周囲に共感していただく魅力があると思いますが、そこを伝えきれないと調達金額などのわかりやすいものありきの資金調達PRになってしまいます。

もちろん資金調達のタイミングでの「打ち上げ花火」も重要ですが、それを最大化するためには日々の広報活動が極めて重要だと思います。



広報力がないスタートアップこそ、資金調達PRがまずおすすめ!と言っておいて、最後の結論が「日々の広報活動が大事やで!」というオチです。


最後に

ここまでしきりに採用!採用!と言ってきましたが、絶賛多数ポジションで採用中です。

広報の経験でPharmaXの広報力を引き上げてくださる方も、ぜひお声かけください!

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