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格闘家川村虹花の総評

・女子格闘技の諸々について
・格闘家川村虹花のこれまでの足跡
・最後に

 女子格闘技ひいては総合格闘技の世界ではいままで異種格闘技戦の様相を呈していましたそれぞれ各々のバックボーンの戦い方でぶつかり合うのが主流でした。
 しかし時代が流れるにつれ次第と"総合格闘技"が体系化され始め、各々の特定のバックボーンのみが繰り出される戦いから"総合的な戦い"の時代へと移り変わっていきました。
 ここで表題に戻るのですが女子格闘技のような陽の目の当たりにくい世界でも川村虹花のような特定のバックボーンを持たない言わば
総合格闘技がバックボーン

の選手が生まれた新時代が到来したのです。

格闘家川村虹花について

・川村虹花(通算)アマチュア(1勝0敗)
                            プロ(2勝3敗)
※本分析は試合映像を0.25倍速にして文字に起こしていますがレフェリーで見えない部分・カメラワークの関係上映っていない部分・試合に影響を与えない行動については一切記述しておりませんので予めご了承下さい。

第一試合 VS REICA
 この試合は彼女にとって総合ルールデビュー戦。 相手のREICA選手はアマチュアボクシングに於いてジュニアオリンピック二位という実績の持ち主、なお試合はアマチュア三分2ラウンドとして行われた。
  第一ラウンド、開始早々左ハイキックで川村虹花が先制その後続けざまに左ハイを連打、距離を詰めてから右のオーバーハンドを重ねる。REICAも左右のワンツーを返すが距離を詰めていた川村虹花がタックルによるテイクダウン。テイクダウンした後に正対した川村は立ち上がろうとするがそれをREICAに防がれる、REICAの抑止を振り払う形で川村が立ち上がり再度力任せにテイクダウン、片足のロックを外しサイドポジションに移行する。REICAは首に腕を回し防御の体勢から体を反転させ片足をロックする体勢に戻すことに成功。コーナーからの指示で一度は片足ロックを外すことに成功した川村だが再度捕まる。今度こそ片足ロックを外しサイドポジションを再び奪取した川村だが依然として両者とも決め手に欠けている膠着状態。残り時間一分の所で再び正対の状態に戻される川村、力技で両腕のロックを外し立ち上がることに成功、両者スタンディングの状態からREICA選手が左アッパー(かフック?)を構えた隙に川村がタックルによるテイクダウンに成功。川村がもつれた状態からサイドポジションを確保してそのままラウンド1終了。
  第二ラウンド、このラウンドも開始早々に左ハイを二回、右ハイを一回繰り出す、なおも左ハイを出して距離を保つ川村。REICAによる膝のフェイントの後に距離を詰め左ミドルキックを放つ川村、そして右のオーバーハンドを躱されREICAの右のカウンターを喰らう、そして距離を少し開いた後左ハイを繰り出す、両者距離を空けた後川村によるボディへの左ミドル。その後両者は再び距離を空け川村が左ローの牽制の後左ミドルからハイになる変則(?)キック。距離を詰めた川村が右のジャブをREICAの右首に当てる。川村の右の突きを躱したREICAがカウンターの右のオーバーハンドを掠りながら躱す川村。左右のオーバーハンドパンチを放ちながら進むREICAに対したまらず川村はタックルによるテイクダウン。その後サイドポジションを確保した川村だがREICAにスタンディングを許すが体を浴びせて再度テイクダウン。両者もつれた後川村が肩固めの体制に移行、しかし成功せず膠着状態に陥る。川村が正対しようとした隙にREICAがスタンディングに成功。しかしバックを掴んでいる川村が小外刈りでテイクダウンに成功。両者もつれたままそれぞれREICAは首に手を回し片足をロック、川村はパウンド。ここで試合終了のゴング。

この試合の寸評
 試合全体として川村がグラウンドで支配する展開が目立ったがそれと同時に力技で場面を好転させる場面も数多く見られた。彼女は後々のインタビューでもパワーの差を指摘されることが有るので同階級に比べトルクが高いものとみられる。

プロ第一試合 VS 古瀬美月
 今回の対戦相手は格闘代理戦争でおなじみの古瀬美月。バックボーンは柔道のようだが高校生ながら既にプロ四戦を経験している歴とした総合格闘家である。対して川村虹花はプロ初戦の対決となった。
  第一ラウンド、両者ケンカ四つからスタート、最初は距離を空けていた両者だったが川村虹花が口火を切る形で右ハイを繰り出し古瀬もそれに応戦する形でハイキックを繰り出す。距離が少し開いた状態から川村が一気に距離を詰め右ジャブをクリーンヒットさせもう一度右ジャブを繰り返したところタックルで躱され組みつかれるが振りほどく川村。川村はロープ際に古瀬を追い込み右ミドルをボディに当てる。コーナーポスト傍で古瀬によってタックルがされるが川村がこれをカット、切った状態で寝技に持ち込もうとしたが逆に組み付かれてしまってコーナーポスト付近からコーナーポストまで一気に押し込まれる形となった。ここで自慢のパワーで体勢を入れ替える事に成功、しかし頭部の使い方、頭部のポジショニングが悪くこの点で古瀬にアドバンテージを与えてしまっている。そしてこのまま膠着状態が続いたためブレイクが告げられる。古瀬は間合いどりを見定めていて膝のフェイントも交えている。川村が近づいてローキックを腿に向けて放つものの空振りに終わり、再びお互いが近づきローキックを放つが相打ちに終わる。両者空間を詰められない展開の中古瀬が一瞬の隙を突き左ハイキックを掠らせることに成功。これを受けて川村は猪突猛進、古瀬に組み付きコーナーポジションに追い込むと膝を連打、しかしその後膠着状態に陥ったためブレイク。ブレイク後即座に右ミドルを放ち牽制する川村に対し左のスーパーマンパンチをクリーンヒットさせる古瀬。そして再度接近する川村に対し左ミドルをボディに当てる、これに対し川村は上半身へのラッシュで応酬しますが古瀬のウィービングによって全て躱されてしまいます。至近距離になった両者は組み付く形となり川村が左膝をボディに叩き込むとそのままロープに押し込む、その状態で再度膝を繰り出す川村だったがこれがローブローとなってしまう、これに対し口頭注意を受ける川村。両コーナーポジションから仕切り直しとなる両者、にじり寄りながら左膝のフェイントを見せる古瀬に対し構わず前進する川村、それに対し左ローキックで迎撃する古瀬だが制止出来ずバックステップにより距離を取る。再度接近を試みた川村は右膝のフェイントの直後間を置かず右のオーバーハンドを放つがこれは古瀬にブロックされる。川村が近い距離から左ジャブを放つがその隙にタックルを喰らい諸手刺しの体勢となりそのまま投げられテイクダウン。正対した両者はその後縺れ合い古瀬がバックに回る体勢となる。古瀬をバックに抱えたままスタンディングによる回避を試みる川村だが古瀬はバックの体勢を崩さず川村は仰向けに倒される。川村は仰向けから俯せの姿勢に移行、と同時に古瀬が右足のロックを外す、それを見た川村がスタンディングに移行しようとするがその前に古瀬がバックチョークの体勢に入る。川村はもがく中で古瀬の右腕のロックを外すことに成功、川村が上の正対の姿勢となる。ここで川村はスタンディングを選択するが左腕を古瀬にロックされていて成功せず。この状態のままラウンド終了。
 ラウンド寸評:川村が積極的にスタンディングで攻め立てる場面が目立ったが効果的な打撃はほぼ見られなかった。
  第二ラウンド、今度は古瀬が先制、古瀬の左ジャンピングニーからの左オーバーハンドに対し顔を背ける川村。両者距離を測り直し古瀬の左と川村の右ミドルが交錯。その後両者もみ合う形となりながら古瀬は膝を繰り出す。両者完璧に組み合う体勢から古瀬が大外刈りによるテイクダウンに成功。古瀬にマウントポジションを許しながらも首に腕を回し防御する川村。川村は左肘、両腕のロック各々で古瀬の制止を試みるがその体勢から着実に古瀬からのパウンドを受ける。やがて古瀬は川村を振り切ると完全に自由な体勢からマウント、川村は亀の姿勢で防御。古瀬は川村の亀の体勢を見て左腕を回しバックチョークに移ろうとするが川村に体を上げ体勢を崩され今度は川村がマウントポジションになる。古瀬はスパイダ―ガードのようなポジションからスタンディングを選択するが川村が体を浴びせる形で縺れ合う形になる。いち早く跨ぐ事に成功した古瀬がマウントポジションにそのままの体勢で右下手差しで川村の動きを抑制。ここで僕は少し奇妙に感じました、なぜか川村選手がとても苦しそうな表情をしていました(関節技や致命的な打撃を貰った様子は見られませんでした)。この点は後述させて戴きます。パウンドでの打撃を嫌がり古瀬を左肘で遠ざける川村、関節技へのディフェンスの警戒心が見て取れません。この体勢からパウンドでの打撃を避けるために両腕ロックによる膠着を選択する川村だったがパウンドを嫌がりロックを外す、これを見た古瀬が川村の右ひじを取り腕挫十字固に移行。ニアフィニッシュの体勢ながらポジショニングでディフェンスする川村。ここでラウンド終了。

この試合の寸評
 この試合を通じて感じた事の一つ目は川村虹花の同階級におけるトルクの高さです、これはもちろん言わずもがな素晴らしいタクティカルアドバンテージですし稀代の才能だと思います。しかし試合結果は敗北です。二つ目に感じた事は"不足"です、この試合中序盤の場面では川村サイドから果敢に攻め立てる場面が目立ちましたが結果として効果的な打撃は数えるほどしかありませんでした、効果的な打撃の"不足"です。あれだけ果敢に打撃戦を敢行したのにも関わらずUFCの戦いにおける重要度上位5つのパフォーマンス指標 のうち達成できたのは3番目の打撃の企図総数のみです。即ち時間と体力のロスが生じている事は明らかです。次いで感じたのがグラウンドテクニックの"不足"です、前述の天性のトルク任せに場面を好転させるシーンは今回も見られたがプロ歴が自身よりも長い古瀬相手に前回より効果的に働いていたとは言えず古瀬自身のフィニッシュへのアプローチの難が露呈した形ではあったが川村自身のディフェンシブスキルの低さを示すには十分な試合であった。

第二試合 VS山崎桃子
 対戦相手の山崎桃子はアウトサイダー出身の選手。
  第一ラウンド、近づく両者相四つの形、口火を切るのは山崎桃子右の先制フックをヒットさせ左のストレートへと繋げる事に成功。その後距離を測り直す両者、山崎桃子が右ローキックで牽制。再度近づく形となり山崎桃子の前蹴りが不発となり返す形で右肘を二度繰り返すが川村の右ストレートのカウンターをクリーンヒットされる。その場で打ち合う両者、川村は左のジャブを掠らせ山崎は右のカウンターのストレートを直撃させる、更に左のフックへと繋げる。このあたりから山崎が不自然に右腕を使わなくなり始める。左腕のみで戦う山崎は防戦一方、ダウンもあり(スリップ?)ロープ際に追い詰められ一方的な展開になった所でレフェリーストップ。

この試合の寸評
 
途中から山崎選手が脱臼してしまったためサンプル数が少ないものの効果的な打撃の回数、距離の取り方、ワンツーへ繋げる動きは山崎選手が上回っていたと思われる。

第三試合 VS YUKO
 YUKOはプロ通算12戦をこなしている猛者。
  第一ラウンド、お互い相四つの形で近づく。YUKOは左ジャブの牽制を複数回放ちながら近づくのに対し川村は右ローで抑止を試みる。フェイントの左ジャブ、ワンツー、ダッキングを交えながら接近するYUKO、YUKOはタックルを敢行するがこれは川村に躱されてしまう、このモーションに対し右ストレートでもう一度距離を空けようと試みる川村。両者至近距離からYUKOは左ロー・川村は右ローを交錯させる、その距離感のまま打撃を放つ両者はYUKOがスウェイ・川村がブロッキングで防御。YUKOが左ジャブ、ダッキングでにじり寄るのに対し川村は後退を選択。右ストレートのフェイントに対し川村は右ミドルを当てる事に成功、しかしその反動の隙に接近を果たしたYUKOが右ストレートをクリーンヒット、尚も左ジャブを放ちながら再接近するYUKOに対し川村は右フック・突きのカウンターを試みるが悉く失敗。そして接近を果たしたYUKOが胴へタックル、YUKOが左下手を持つ展開、これに対し右腕で打撃を試みる川村だがその隙に両腕を下手に組み替えるYUKO、これに対し左肘でディフェンスを試みる川村。タックルの体勢だったYUKOは胴→両足→片足→両足→胴の順に切り替えていく。ここに来て川村の左膝、YUKOの右膝が交錯する展開、そのまま川村はパワーでデッドスペースを両者の間に作るとボディに左膝を二度クリーンヒットさせ、右フックも三度ボディへクリーンヒット。そして両者組み合ったまま膝をボディへぶつけ合う。川村は両差しの状態のまま逆にロープに押し込みYUKOの腿へ膝をクリーンヒットさせる。しかし体勢を入れ替えられYUKOが右下手のままコーナーに押し込む、YUKOが左膝を川村の右腿にクリーンヒットさせる、これを露骨に嫌がる川村は右足全体でブロック。これを見たYUKOは左腕で川村の右腕をロックした状態で左膝を川村の左足付け根へ叩き込む、そして川村は左足をディフェンスしやすい位置へ置き換える、これを見たYUKOが更に右膝を二度叩き込む、これも露骨に嫌がった川村は今度は左足全体でブロックの姿勢に、この状態でもさらに左足へ右膝を叩き込むYUKO、これに対し今度はまた右足全体でのディフェンスを行う川村、そして更に左膝で膝のフェイントとディフェンスの中間のような動作を行う、それに対しYUKOは川村へ右膝のフェイント→右膝での左足への膝→デッドスペースを作り左足付け根へ左膝からの右膝。川村はポジションの転換に成功今度はYUKOがコーナーに押し込まれる形に。YUKOがボディへの左膝を繰り出すと川村が返す刀で左膝を二度繰り出す(二回目はクリーンヒット)、今度はYUKOがポジション転換を狙うが川村が再度コーナーへ押し込む形を奪取。今度はYUKOが右下手差しの状態で右側ロープへ押し込む形で脱出。ここで両者膠着と判断されブレイクを宣告される。再度スタンディングから開始した両者、YUKOは左ジャブ、ダッキングでにじり寄るYUKO。タックルを仕掛けて離れるYUKOに対し川村は左前蹴りで牽制、それに対しYUKOは左ジャブで応戦。左ジャブを繰り出しながら近づくYUKOに組み付こうとする川村に対しYUKOは両足タックル、そのまま体を反転させテイクダウン。川村虹花はスタンディングを選択、しかしYUKOは両足をホールドして阻止、尚も川村はスタンディングを選択するが転倒、その隙にバックに回るYUKOを川村は左足で防ごうとするがYUKOは背後に完全に回り左腕を首に回す。中腰の体勢でYUKOを背後に抱えていた川村だったがYUKOの両足が川村の両足の間に差し込まれ前傾姿勢から仰向けにされた所で川村がタップ。

この試合の寸評
 プロ第一試合での違和感が顕在化した形となった試合でした。あの時感じた違和感の正体は表情でした、あの試合で彼女は第二ラウンドの最後の場面以外効果的なダメージは無かった筈なのですが表情は苦悶の場面が多々ありました。この試合でもそうなのですがあまりにも素直に自身の状況を教えてしまっているのでコーナーでのYUKOの膝連打に繋がっています。そして打撃の難はいままで対戦した相手の中で一番の経験者であるYUKOの前に歴然としていました、スタンディング状態での打撃で効果的なものは無くそれ故牽制としての打撃技も意味を為さず易々と接近を許す形となりました。

第四戦 VS宗田智美
 宗田はキックボクシング&シュートボクシングからMMA(総合格闘技)に転向した選手、しかし前々回出場時は寝技で一本を取っている。
  第一ラウンド、相四つの形でスタート。左ジャブで牽制しながら進む宗田に対し同じく左ジャブで応戦する川村、右のローを当てる川村に対し右のカウンターストレートを放つ宗田、両腕でジャブを繰り出しながら進む宗田は左ジャブをクリーンヒットさせる、これを見た川村は宗田の右フックの隙に両足タックルを成功させ左下手の状態で上体の力でテイクダウン。サイドポジションを確保した川村に対し宗田は左肘、左膝でディフェンスする宗田はスタンディングに成功。川村はスタンディングの状態で諸手差しの体勢、そのまま体勢を入れ替えられロープ際に押し込められるが小外刈りでテイクダウン。正対した両者だったが宗田がスタンディングを選択するが川村が諸手差しの状態で体重を掛け再度テイクダウン。川村は宗田の右足を両足でロック・ボディへパウンド、右足ロックを外した宗田はヒップスローで距離を取ったが川村がサイドポジションを取ろうと追撃するが宗田はスパイダーガードのような姿勢からスタンディングを選択するが川村が胴タックルの状態から再度テイクダウン。宗田は左腕でギロチン・クローズドガードの体勢でディフェンス、ここで川村は前転を選択その隙に宗田はスタンディングに成功。川村は宗田の胴に組み付いたまま小外刈りを再度試みるが宗田に踏ん張られる。宗田は両差しにされた体勢で左膝を出すと川村も左膝で応戦。宗田は両差しにされた体勢から左下手の体勢に戻すと払い腰を試みようとしますが粘られます。宗田は左下手の体勢から右膝を出すと川村も左膝で二度応戦すると宗田も右膝で返す、今度は川村が左右交互の膝で返す、宗田は左足全体でディフェンスその上から川村は三度左膝を繰り出す、それに対し宗田は二度目以降の左膝に対し自身の右膝で相殺。ここで宗田が体勢を入れ替え距離を離すと川村が追いかける形となり宗田が川村の右腕を自身の右腕でホールド・高い位置に左膝で攻撃、川村はその体勢で宗田のボディへ右フックを三度クリーンヒット。ここで川村は半歩間を空けデッドスペースを確保し右エルボーを二回。両者距離を空け互いにオーソドックスのスタンス、川村が宗田の左をパリィし右ストレート、これを宗田がダッキングで回避し両者至近距離での右フックの打ち合いとなるが効果的なものは出ず。宗田がスウェイバックで距離を空けた後川村がアウトレンジから左ストレートを放つが宗田がカウンターの右ストレートをクリーンヒットさせる。川村は再度宗田の左腕をパリィすると至近距離から右フックをクリーンヒット、宗田も右フックで返すが当たらず。両者組み合いとなり左膝の打ち合いとなるが川村のみ二度クリーンヒット。宗田が組み付く形となりロープからコーナーに押し込む、川村が押し込み返し左膝をクリーンヒットさせるが宗田も左膝をクリーンヒットさせコーナーに押し返す、そして宗田が右膝・川村が左膝をクリーンヒットさせる。ここで宗田が距離を空ける事を選択、川村が猪突猛進するが宗田がカウンターの右フックを放つとスウェイバックで回避。川村が遠い距離からミドルキックを放つがその大きな隙に宗田が急接近、宗田の右ストレートが側頭部にクリーンヒット、さらに近い距離からの右フックが川村のの顔にクリーンヒット、さらに二度宗田が右ストレートを放つものの当たらず。川村が距離を空けようとするが宗田が猛追、川村が逃げながらの左ミドルキック、宗田は両腕で突きを繰り返すと川村はしがみついて避けるとここでラウンド終了。
 ラウンド寸評:このラウンドは長時間グラウンドコントロールした川村が取ったか、しかしスタンディングの場面だと宗田の効果的な打撃が目立った。
 第二ラウンド、左のジャブで牽制しながら進む宗田に対し左ミドルを放つ川村、左足を上げて避ける宗田。再度左足で攻撃する川村に対し左足で防ぐ宗田。右フックを放つ宗田に対しスウェイバックで避ける川村。左ジャブの牽制を放つ宗田に対しタックルのフェイントを交える川村に対し右ショートアッパーを放つ宗田。宗田の左内腿にクリーンヒットのローキックを放つ川村に対し右ストレートを放つ宗田だが川村はヘッドスリップで躱す。宗田が右のフックを出すががら空きになったボディに対し川村が両足タックルの体勢から両差しとなり押し込み途中宗田の左膝のクリーンヒットなどがありながらもコーナー際に押し込むことに成功。宗田は六度左膝をクリーンヒットさせるが三回目は川村の左膝に防がれる、ここで川村も右膝を返すが宗田がポジションを入れ替える事に成功する。宗田は左膝で川村のボディに左膝をクリーンヒットさせると川村も宗田のボディに右フックをクリーンヒットさせる。ここで川村は両腕をボディの防御へ回し棒立ちとなる、ここでも更に川村が左膝をボディへクリーンヒット。川村は宗田の左膝へ片足タックルのような姿勢に移行し宗田が左腕で川村の首を固める。川村はこの状況でパワーで引き倒しテイクダウン、ここでも川村辛そうな表情。宗田の左腕のロックを外した川村はパスガードを目指すが宗田の左足全体のブロックに阻まれる。膝立ちの体勢から川村は寝ている宗田の側頭部に右フックのクリーンヒット。ここで宗田はスタンディングを選択、川村は体を浴びせ潰しにかかるが川村はバックに両腕を回した体勢で両者膝立ちになる。ここで宗田は川村の顔面へ複数回左フックを放ちスタンディングに成功。川村は再度引き倒しを狙うが宗田に粘られ再度スタンディング。川村が両手差しの体勢でロープに押し込む展開、この状況で宗田は五回川村が一回膝をクリーンヒットさせる、とここで膠着と判断されブレイク。両者スタンディングから再開、川村が左前蹴りで牽制、再度繰り返すが宗田の右前蹴りと相殺になる、更に川村が左前蹴りを放つが宗田の左手にパリィされる。左ジャブの牽制を放ちながら進む宗田、川村も左ジャブの牽制を返す。宗田が川村の左手をパリィし宗田が右ストレートを放つが川村が間一髪スウェイ。宗田が右フックを放ちボディががら空きになった隙にタックルをする川村。川村がロープに押し込む形になりお互いに膝を打ち合う展開、ここで膠着と判断されブレイク。両者スタンディングから再開、左ジャブの牽制を出す宗田はスーパーマンパンチをクリーンヒットさせると左ストレートのツー(こちらは当たらず)そして右フックのスリーがクリーンヒット。ここで堪らず川村がタックルで逃げる、両者一回転しながら最終的に川村がサイドポジションに付き鉄槌を狙う。ここで試合終了。

試合評
 今回の勝因はテイクダウン数の多さとグラウンドコントロールの時間の長さに尽きると思われる。右フックを見切っての胴タックル等は着実な進歩が見られた事や天性のパワーでのテイクダウンは目を見張るものがあった。課題としては相変わらず自身の辛い状況を顔で包み隠さず表現する悪癖、スタンディングの状況での打撃への不注意さ(裁定基準や女子の階級を含めての判断である可能性もある)、テイクダウン能力の低さ(バリエーションの少なさ)、テイクダウン後の展開が皆無な事が散見された。

プロ第五戦 VSあい
 こちらも格闘代理戦争で有名なあい選手、あい選手はKRAZY BEE所属でレスリングでインターハイとインカレの優勝歴を持ち、世界学生選手権で3位になった経歴を持つアマチュアの実績は文句なしだが格闘代理戦争では準決勝敗退を喫しており再起戦となる。
 第一ラウンド、あいはサウスポーに構えケンカ四つの形となる。あいは右で牽制・川村は左で牽制、川村が若干体を屈めタックルのフェイント、それに対しあいもタックルのフェイントで返す。川村が左ジャブで牽制するとあいが左手を地面につけるタックルモーションの牽制に対し川村は右膝のカウンターのフェイント。川村はタックルのフェイントを繰り出すがあいは構わず近づき左フック右フックを放つが空振るとそのまま離れる。あいは右ジャブの牽制から右ジャブで接近左ストレートを放つが川村がスウェイバックで回避、ノーガードのあいの顔面に川村が右ストレートを溜めてクリーンヒット。狼狽したあいを追いかける形で右フックを側頭部に当てるがここであいに組み付かれる。あいが両手差しの体勢でロープに押し込む。膠着した状態になった両者だがあいが力で逆に振り反対際のコーナーまで押し込む。あいは右足で川村の左足を抑え込み膝を封じる。あいは川村の左足に両足を絡ませ河津掛けの要領でテイクダウン。川村はあいの左足を両足で絡ませパスガードを防ぐ、左足を力技で抜いたあいはサイドポジションに移行、あいは右腕でギロチンの体勢。マウントポジションを狙うあいに対し川村は再度あいの左足を両足で抑える。両足が抜けたあいはギロチンの体勢のままフルマウント。ギロチンを外したあいが鉄槌の嵐、ここでレフェリーストップ。

試合評:川村虹花はキャリア初となる自分よりトルクで勝る相手との対戦となった。今までは自身が行ってきたパワーで状況を好転させる場面を相手が行ってきた。いままで課題だった打撃だが成長が見え強い打撃がヒットした。

川村虹花の現在の格闘家評
 打撃:
グラップリング出身のプロ初戦相手ならば強い打撃をヒットさせることが出来る。というのが実直な感想です。しかしながら一番最近の試合でとても気になる場面がありましたあいの顔面にクリーンヒットさせたシーンなのですが川村虹花は一瞬間をおいて右ストレートを放っていました。これは闇雲にパンチを放つのではなくタイミングを狙いすましていた事を意味します、UFC史上初の三階級制覇を成し遂げた伝説的なストライカーのコナーマクレガーは「ジョゼ・アルドのスピードとパワーは確かに凄かった。だが精度がパワーを上回り、タイミングがスピードを上回るんだ。という言葉を残しています。
 グラップリング:投げ技は精度・効果の両面で疑問が残る。レスリングに関してはカウンターでのタックルは一考の価値ありだがテイクダウン後の技のレパートリーが皆無と言っても過言ではなくグラウンドコントロールに徹する場面が目立つ。
 スタミナ:かなり厳しい。女子の軽量階級なのにスタミナは男子ヘビー級並みである。持ち前のトルクの為に試合全体のスタミナを犠牲にしている可能性。

今後の展望:打撃を主体とするかグラウンドコントロールで判定勝ちを狙うスタイルになるかは本人次第。スタミナ面は要改善か、しかしながら天性のトルクとトレードオフになる危険性もある。
バックボーンが無いという事は欠点が無いという事でもあり長所が無いという事でもあるのだという現在から打撃に才が見え隠れしている段階なのでこの部分が上手く成長すれば現在のMMA(総合格闘技)に一番適応する存在になれる可能性を秘めている。



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