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野沢真珠オークレアの総評

野沢真珠オークレア(1993-10-29: Age25)、女子総合格闘技選手。バックボーンは空手、ボクシング柔術身長は176cm(5.8feets),体重は56.7kg(125LBS)のフライ級。プロ通算2勝1敗(2submisson wins,1submission lose)。

※本分析は試合映像を0.25倍速にして文字に起こしていますがレフェリーで見えない部分・カメラワークの関係上映っていない部分・試合に影響を与えない行動については一切記述しておりませんので予めご了承下さい。

プロ初戦 VSシーナ・スター(SHEENA STARR)
 シーナスターはアマチュア通算全敗の選手。敗北内容もTKO5回、submisson3回とバリエーションに富んでいます。彼女は同時にプロ初戦でもあります。
  ラウンド1:真珠がグローブタッチを求めるがシーナが拒否。距離を詰める真珠が近すぎる距離から右ミドルキックを狙うがシーナがカウンターの左オーバーハンドを放ちこれを真珠が左腕のパリィで回避。至近距離から組み合う両者だが再度離れ、シーナがサウスポー・真珠がオーソドックスの構え。真珠がアウトレンジから右の上段蹴りを放つがシーナがスウェイバックで回避。真珠が左ミドルを放つとシーナが左のオーバーハンドでカウンター、それに対し真珠が右ストレートで返すがシーナがバックステップ。追い縋る真珠だが右の上段蹴りを外す。サウスポーにスイッチした真珠がシーナの左のオーバーハンドをスウェイバックで回避しカウンターの右の突きを放つがシーナはヘッドスリップで回避。再度距離をとった両者、真珠がオーソドックス・シーナがサウスポーに構える。真珠は右足を踏み込むフェイントから左でローキックの軌道からミドルになる蹴り、それに対し右足を上げ回避そして揉み合いになり再度離れる両者。真珠が右腕を引きストロークを稼いだのを見たシーナが左腕でパリィ、しかし真珠がもう一度右ストレートを放ち当て左ジャブも放つがこれはシーナが距離を開け回避。真珠は再度上段蹴りを放つがシーナに見切られる。近すぎる距離から右ミドルを放つ真珠に対しシーナは左のオーバーハンドをクリーンヒットさせる。距離を空けるシーナに対し真珠は追いながら右ストレートを当てる。距離を詰めた真珠が右フックを放つとシーナがウィービングで回避。ここで真珠が組み付く、シーナは距離を空ける為に半身の体勢で逃げようとするがそこに真珠が右膝をボディに叩き込む。真珠が組み付きバックを狙いシーナが右肘で剥そうとするが真珠はバックを確保し両手差しの体勢から掬投でテイクダウン。バックの状態からマウントの体勢に移行。真珠がパウンドの体勢から肘・鉄槌を繰り出すとシーナは半身の体勢で逃げる。パウンドを打ちながら十字を狙う真珠に対し必死に防御するシーナ。左足でフットチョークを試みる真珠。がら空きになったシーナの右腕に対し真珠が十字を極めレフェリーストップ。
 この試合の寸評:プロ初戦ながら左右のスイッチング・下段から中段になる蹴りを放つなど浮足立った動きは見られなかった。しかしながら間合いを見極められず空振る場面や近すぎて当たったものの殆ど効果がない場面、特にミドルキックは効果的なダメージを与えることがなかった。自身の打撃を最大化させる位置と相手の打撃の届かない位置を理解する事が今後の課題か

プロ第二試合 VS チェルシー・ラグラース(Chelsea Lagrass)
 チェルシー選手はプロ初戦。身長は152cm(5.0feet),体重は53.5kg(118LBS)の選手で注目は25cmの身長差です。互いにプロ初戦同士。
  Round1:互いにオーソドックスの構え。チェルシーがグローブタッチからそのままの勢いでプレッシャーを掛け真珠が下がる展開。当たるギリギリの距離からチェルシーが左ジャブを放ち真珠が右のオーバーハンドで返すとチェルシーも右のオーバーハンドで返し真珠がこれをスウェイバックで回避しながら右ストレート。距離を空けたチェルシーが右ストレートのフェイントから左ミドルを放つが真珠が右膝を上げブロック。チェルシーがタックルモーションを見せたため真珠が左ミドルをボディに当てて抑止しようとするがチェルシーがそのままタックルに成功、チェルシーがロープに押し込みチ左下手の体勢となる。チェルシーが右下手も奪い両差しの体勢となるが真珠が右下手を奪い返すと体勢を入れ替え真珠がロープに押し込む展開となる。真珠は押し込む体勢で右膝を出すがチェルシーの左腕にブロックされる、二度目の右膝は高い位置で放ちチェルシーの鼻に当たると三度目も膝を繰り出すがチェルシーの右腕に当たる。ここでチェルシーは左膝を突き出し真珠の右膝を防ぐ姿勢、密着した姿勢で真珠はチェルシーのボディへ右フック。チェルシーは右フックを防ぐ為に左腕を真珠の右腕に絡ませると左膝を下す。体勢を入れ替えたチェルシーは右下手で真珠をコーナーポストに押し込む。真珠は体勢を90度入れ替えるとデッドスペースを利用し右膝をチェルシーに叩き込む。両者は組み合い互いに膝を叩き込む。チェルシーは右腕を真珠の首に回し右膝を真珠の股間に押し付けデッドスペースを埋める。するとチェルシーは左足も真珠の体に巻き付け全体重を掛けると真珠は極端な前傾姿勢となる。真珠はそのままチェルシーにボディスラム、チェルシーはクローズドガードの姿勢。ここでチェルシーは両腕のロックを解除すると両足を真珠の下でクローズドガードのポジションに移行、左腕は真珠の頭を自らに引き寄せる形。真珠がマウントからの右腕でのパウンドを狙った隙にチェルシーが左足を真珠の首に回し三角締めの体勢。真珠は前転で回避を試みるが両者の体勢が横に流れ向かい合って寝る形で三角締めのニアフィニッシュ。真珠はスタンディングで状況を好転させようとするがチェルシーは真珠の頭を引き寄せ極めにかかる。真珠は尚もスタンディングを選択するが膝から崩れ落ちる。尚もスタンディングを選択した真珠はチェルシーを持ち上げボディスラム。真珠は右腕でチェルシーの両腕の真珠の頭へのロックを外すが再度ロックされ引き寄せられニアフィニッシュ。真珠はチェルシーの両腕のロックを外し上体を引き上げる、チェルシーは下から三角のニアフィニッシュの体勢からさらに腕の関節を狙う。上体を反らした真珠は更に両足でチェルシーを遠ざけた上足の首への三角締めを和らげ右腕でチェルシーの左足を押し三角締めを外しパウンドポジションに移行。チェルシーは自身の傍に呼び寄せると再度三角締めに移行するが未完成。チェルシーが自らクローズドガードへ移行、真珠は両腕をチェルシーの顔の傍に寄せ三角締めをディフェンス。真珠は上体を起こしマウントを奪取、ボディーへパウンドの鉄槌、これでチェルシーがクローズドガードを外し真珠を突き飛ばすが真珠が上から潰す形。両者揉み合いになった後真珠がスタンディングを選択、立ち際に真珠が左ローキック。チェルシーが立つ隙に真珠が近づき左ハイキックを放つがチェルシーがブロック。チェルシーのガードの上から真珠が右ストレート・右肘を放つ、ここでチェルシーはタックルを選択するが真珠に受け止められ真珠の左右の膝をボディに浴びる、ここで真珠は組み付くのを辞め立ち技を選択、右肘を二度放つが空振る、そしてバックエルボーの形で当てる。ここで真珠は更に右膝のハイキックを選択するがチェルシーのスウェイバックに躱される。真珠はスタンディングで右の鉄槌を当てるとチェルシーは右のオーバーハンドを放ちながら距離を空ける。真珠はアウトレンジから右ハイキックを放つが腕に掠る。半身で躱す姿勢となっているチェルシーに対し上から頭に鉄槌を当てる真珠。近づきロープに押し込む真珠はチェルシーのガードの上から右肘をチェルシーの頭に放ち、屈んだチェルシーに対し上から肘で鉄槌を当てる真珠。チェルシーは組み付こうとするが逆に両差しの体勢とされる。体を屈めてデッドスペースを埋め膝を防ごうとするチェルシー、さらに左膝を上げ真珠の右膝を防ぐ。真珠はロープに押し込み右膝をチェルシーのボディへ叩き込むとチェルシーが押し込むが真珠ががぶって上から潰してテイクダウン。両者は一回転して真珠がRNCを狙うがチェルシーが亀の姿勢でブロック。RNCをあきらめた真珠がバックマウントからのパウンド、それを嫌がったチェルシーが半身の体勢となり真珠がチェルシーの右腕に腕ひしぎでタップを奪う。
 この試合の総評:立ち技がバックボーンという触れ込みの真珠であったが試合展開は終始寝技で展開・決着も寝技であった。試合全体を通じてわずかながらスタンディングの場面で打撃が掠る・不発の場面が目立ち自分のリーチの距離感の認識の誤認、言い換えれば間合いが取れていない場面が見受けられた。

第三戦 VS ヤスティナ・ハバ(Justyna Haba)
  ポーランド人女性総合格闘家。アマチュア実績はポーランドでのもの、なお現役軍人であり軍隊内キックボクシングでも王者の模様。身長は165cmなので11cm差の真珠が相手ではバックボーンの立ち技が生かされにくいか。

  第一ラウンド:グローブタッチからスタート。真珠もハバもオーソドックスの構え。真珠は前後にステップを踏みながら頭を左右に揺らし打撃の的を絞らせない。ハバは左ストレートを放つが距離が足らずその位置から真珠がカウンターで右ストレートを返すがこちらも当たらず。両者距離を空けハバが牽制の左ジャブ、真珠も左ジャブから右のパンチのフェイント。真珠が左の突きに対しハバがスウェイで安全策をとる。真珠が左ローキックの牽制、これに対しハバも左ローキックを返す。打撃のフェイントから真珠が左ジャブの牽制。真珠が一気に距離を詰め左ジャブ二回を放ち右ストレートも出すがハバがスウェイバックで回避。近づいたハバはダッキングの状態で左ストレートを放つが真珠は右の前蹴りで距離を空けさせる。真珠が左ローキックで牽制、一気に距離を詰め左ジャブを放つがハバがスウェイバックで回避。左ローキックで真珠が牽制、ハバが急接近しながら三回左ジャブを放つと真珠が左右のフックでカウンター。ハバの左ストレートに真珠が右前蹴りを合わせる。真珠が距離を詰めながら左ローキック。近づきながら両腕でガードするハバに対し左ジャブを放つ真珠、ガードの緩んだハバの左側頭部に右フックをクリーンヒットさせる真珠。真珠の左ジャブの牽制に対しハバがスウェイバックで回避。真珠が近づくとハバはサイドステップで距離を離しながら右のオーバーハンドは真珠の左側頭部に当てる。真珠が左のローキックを当てると右の前蹴りで牽制。ハバはサイドステップで距離を空けるが真珠が追いながら左ローキックを空振る。両者再度相対しハバが左ジャブ、真珠はヘッドスリップのような移動で回避。真珠は打撃のフェイントモーションを交えながら左ジャブをハバの顔へ向けて放つ、真珠が左手でハバのガードをパリィすると右ストレートを放つが当たらず。両者至近距離で撃ち合うが当たらず組み合う形となり真珠が左下手、ハバが離れる事を選択。真珠が打撃・膝のフェイントモーションの牽制を放つがハバが距離を空け当たらず。真珠が左のジャブ二回と右ストレートのコンビネーションで近づくがハバがダッキングで回避、ハバが右のオーバーハンドでカウンターだが不発。真珠のフェイントモーションにかかりハバが上体をガードするが真珠は右のローキックを放つものの距離が足らず不発。ハバの左ジャブからの左ローキックを左腿に喰らいバランスを崩す真珠、更に右オーバーハンドを繰り出すが真珠がスウェイバックで回避。真珠が近づくがハバがカウンターの右のオーバーハンド、これをスウェイで躱す真珠。真珠がプレッシャーをかけ両者接近戦で撃ち合うが有効打無し。真珠は左ローキック、左ジャブでプレッシャーを与え続ける。両者近づき打撃を放つがリーチの差でハバの打撃は当たらず。至近距離で踏み込んだ真珠は右ストレートをクリーンヒットさせる、ハバは距離を空けようと後退するが追う真珠が右フックをハバの右側頭部に当てダウンを奪う。真珠はマウントを奪いに行くがハバはスパイダーディフェンスのような形で防御。ハバはクローズドガードに移行、ハバは十字に移行しようとするが真珠がディフェンス。真珠はハバのロックを外す事に成功するがハバはアンクルロックに移行真珠はディフェンス。アンクルロックから逃れた真珠がサイドからがぶる体勢。真珠がバックマウントを奪いハバの両足の間に自らの足を差し込みハバの体を伸ばそうとする、ハバは真珠のリアネイキッドチョークをディフェンス。真珠が右腕をハバの首に回す事に成功するがハバは尚亀の体勢。ここでラウンド終了。
  ラウンド寸評:スタンディングの場面では真珠が圧倒していたように見えた、フェイントモーション・リーチで上回っていて結果としてダウンも伴っていたので何故グラウンドの展開に付き合ったのかが疑問である。

ラウンド2:両者オーソドックスでスタート。真珠が左ジャブを近づいて放つがハバがスウェイバックで回避。ハバが右ミドルキックを放つが真珠が右ストレートでカウンター。追い縋る真珠は右ストレートを再度放つがハバはスウェイバックしながら右のオーバーハンドを放つが距離が足らず当たらず、真珠は尚も追い縋りながら二度右ストレート、ここで堪らずハバが組み付く。真珠も組み付き両者テイクダウンを目指すがハバが突き放し離れ際にガードの上に左ストレート。再度両者は向き合うと真珠が牽制を放ちながら組み付く。組み付いた真珠は首投げを狙いハバをテイクダウン。バックポジションを保持した真珠はハバの胴体を伸ばしRNCを狙いに行く、ハバは真珠の手を掴みディフェンス。ハバは真珠の左手を掴み上体を右に反らしファイアーマンズキャリーの要領で真珠を背中から倒しハバがマウントポジション。真珠はクローズドガードの体勢でディフェンス、ハバはその体勢からマウントポジションを狙うが真珠は下から十字を狙う。真珠が十字の狙いを外すとハバはすかさずパウンド真珠が再度十字を狙うと頭を低くししっかりディフェンス。真珠は十字を狙いに行くが解け再度ハバがマウントの体勢。真珠はハバにフルマウントの体勢を許す、ハバは真珠の腫れた左目目掛け肘でパウンド。パウンドを嫌がった真珠は亀の体勢、ハバはRNCを狙うと真珠を亀の体勢から裏返しRNCを決めハバが失神勝ち。

この試合の寸評:前半は真珠が打撃で圧倒することに成功した、攻撃企図数も強い打撃を与えた数も打撃によるダウン数も圧倒的に上回っていた。これは昨今のMMAでは非常に素晴らしい結果である。後半になるにつれ打撃が効果的に相手へのプレッシャーとなり真珠が先手を取る試合運びになりました。しかし試合結果としては負けています。第一ラウンドでダウンを奪った時もそうなのですが相手がダウンしている状態で完全に有利なポジションがとれるわけでもないのにグラウンドに挑んでいました、結果としてニアフィニッシュとなりましたが言い換えればニアフィニッシュ止まりでした。第二ラウンドでは相変わらずフェイントと打撃の結果の積み重ねで一方的にスタンディングで試合を運べていたのにも関わらず組み付いてきたハバを相手にグラウンドの展開に付き合おうとしました。結果としてRNCで一本負けだったのですが途中十字固めを狙う姿が見え隠れしたので過去二戦の十字固めでの一本勝ちが起こした作戦負けだったのでは無かったでしょうか。


格闘家 真珠オークレアの総評
 打撃:申し分なし、欲を言えばキリはないがフェイントスキルを含むディフェンススキルはRIZIN女子の中でトップ打撃でダウンを奪える能力は女子で貴重な逸材、ロングリーチ等の要素も打撃能力を上げている要因の一つ。
 レスリング:同階級に比べストロングポイントになる部分では無いのは明らか、しかしレスリング部分で一方的に負ける場面もまだ出てきてないので圧倒的なウィークポイントでもないと思われる。
 組み技:フィニッシュ能力があるのは十字固め。しかしこの技は現代MMAで主流な技ではなく単に相手の能力が低くフィニッシュまで持ち込めている可能性も排除しきれない。


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