【ネタバレ記事】"R" #赤ずきん謎

《R》 赤ずきん謎
2015.9.20 謎解きカフェ「日常からの脱出」に出展。
あなたこと「オオカミくん」のもとに届いた一通の手紙。「6年前の事件の真相を知りたくはないか」ーその言葉に導かれ、オオカミくんはあるカフェに向かいます。呼び覚まされる記憶、楽しかった過去。あの事件の犯人は誰なのか?Φが贈る切ないおとぎ話。

昔々あるところに、ひとりのオオカミさんがいました。オオカミさんは、村の人たちに嫌われていました。オオカミさんに悪気はないのですが、気が付くとオオカミさんの周りには誰もいないのです。「いいんだ、どうせ、僕の事なんて…」オオカミさんは、いつもひとりでした。

オオカミさんはお花畑に寝転がりながらため息をつきました。「僕が花ならよかったのに。僕が小さくて誰からも愛される花だったら、誰の事も傷つけないし、きっとみんなとおしゃべりすることもできるんだ…」その時、奥の木の陰からがさがさと物音がしました。「僕がいたらみんなを怖がらせてしまう」オオカミさんが急いで隠れようと体を動かしたとき、赤いずきんをかぶった女の子が顔を覗かせました。

「オオカミさん、こんちは。」女の子はそう言って、「わあ、きれいなお花」お花を摘み始めました。「こ、こんにちは…」オオカミさんはおずおずと返事をします。変な女の子です。オオカミさんを見ても逃げないなんて。
「オオカミさん、何をしていたの」女の子は尋ねました。「なんで」「だって、泣きそうな顔しているから」「そんな顔してない」「してるわ」女の子は微笑みます。「言ってごらん。私、何でも聞いてあげるわ」

オオカミさんは少し悩んでから、口を開きました。自分がいつもひとりぼっちなこと。誰も自分と話をしてくれないこと。自分は寂しいということ。全てを聞き終わると、赤ずきんは「なんだ、そんなこと」と笑いました。「それだったら、私、あなたとお友達になってあげるわ。それならいいでしょ」よろしく、と手を差し出した女の子は、赤ずきんと名乗りました。オオカミさんと赤ずきんの交流がはじまりました。
オオカミさんは赤ずきんと、色々な話をしました。「赤ずきんのお母さんはどんな人なの?」「うーん…別に、普通の人」「へえ、きっと優しい人なんだろうな」「まあね」

森を足早に歩いていく赤ずきんに、オオカミさんが声を掛けることが多くなりました。
「赤ずきん、どこにくの」
「病気のおばあちゃんのところへいくのよ」
「僕も一緒にいってもいい?」
「…いいよ。一緒に行こう」
 赤ずきんのおばあちゃんは、森の奥に住む優しい人で、オオカミさんも何度か会ったことのある人でした。3人は仲良くご飯を食べて、トランプをして、楽しく遊びました。オオカミさんは、もうひとりではありません。

その日はいつもより夕焼けが綺麗で、その時オオカミさんは、病気のおばあちゃんの為に林檎を剥いていました。「いつもごめんねえ」「ううん、おばあちゃんは寝てていいよ」
そこから後のことを、オオカミさんは詳しく覚えていません。耳にこびりついているのは、がたっと椅子が倒れる大きな音。目に焼き付いているのは、赤い、赤い……。
窓の外から、知らない誰かが何かを叫んでいました。戸口にいた赤ずきんと目が合いました。赤ずきんの目は痛いくらいに澄んでいる。オオカミさんはたまらなくなって、果物ナイフを握りしめたまま、家の外に飛び出し、遠くへ逃げました。

自分が殺してしまったのだろうか。僕が。僕がおばあちゃんを、大好きなおばあちゃんを殺してしまったのだろうか。僕が、僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が…

あの日の記憶は閉ざされたまま、何年かの月日が流れました。オオカミさんは大きくなっていて、赤ずきんのこと、あの村のことを時々思い出します。しかしあの日のことを思い出そうとすると、どうにも頭が痛くなって、はっきりとしたことが思い出せないのです。

そんなある日のこと。オオカミさんの元に、一通の手紙が届きました。手紙には、「あなたの過去が眠っています。」と書かれていました。「あの事件のこと、思い出す勇気があるのなら来てください。場所は……」その言葉に導かれるように、オオカミさんは、あるカフェに向かいました。5年前のあの謎を解き、事件に向き合うために…。


向かったカフェでは過去の事件の謎を解き、犯行時刻と凶器を答えた上で犯人の裏メニューを注文しろと言われました。
カフェの中を探してみると昔の事件に関わる品々が出てきました。
おばあちゃんのショタへの歪んだ愛と犯罪に関与するようなことが書いてある日記。
当時の男児殺害事件の新聞。
お花、ナイフの傷跡のある果実、おばあちゃんの薬が入ったかご。
猟師のバック。その中にはアビレラという植物の図鑑、事件捜査報告書、そして犯行計画書。
赤ずきんの渡せなかったラブレター。
赤ずきんのお母さんの怨みの籠もったメモ。

これらのことから
かごの中にある花はアビレラという毒を持つ花であり、図鑑ページから「アビレラを摂取後、日光にあたることで死に至る可能性がある」をこと。
そして捜査報告書から「事件前、カーテンはしまっていたこと」、事件現場の状況説明から「事件後、カーテンが開いていたこと」によりおばあちゃんがアビレラを摂取し、死んだという事実が浮かび上がりました。

次に犯人を考えると、捜査報告書から「おばあちゃんの家に行く途中で、赤ずきんが黄色い花を摘んでいたこと」、事件当時の赤ずきんの持ち物である黄色い花はアビレラであることに。
そして捜査報告書から「赤ずきんが家を出た時点では、薬の色が青だったこと」と、事件現場の状況説明から「事件後、薬の色は緑だったこと」、つまり薬の色が青から緑に変化したことに気がつきました。
オオカミさんは分かってしまいました。赤ずきんが黄色いアビレラを加えたことで薬の色が青から緑に変化したということに…。犯人は赤ずきんだったのです。

赤ずきんのメニューで自分が好きなオムライスを注文すると赤ずきんからのお手紙を渡されました。
赤ずきんの初恋が自分だったこと。おばあちゃんの日記を見て性癖を知り、次の標的がオオカミさんだということに気付いてオオカミさんを守ると決意したこと。そしておばあちゃんと一緒に死ぬつもりだったのに、赤ずきんはいつも被っていたずきんによって日に当たらず、おばあちゃんだけが死んだこと。
赤ずきんは自分の独りよがりで殺人を犯してしまった上にオオカミさんの人生をめちゃくちゃにしてしまったととても後悔していました。そしてこの事件の真実と赤ずきんの思いを伝え、自首をすると書いてありました…。
こうしてあの日の記憶を取り戻したオオカミさんなのでした…。


(文責:はぬっこ)

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