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【2024.4.24】CD発売記念公演『Works for Violin, Clarinet & Piano』 プログラムノート②

Phidias Trioは、この度レーベル「蛍光資料」より、『Works for Violin, Clarinet & Piano - Francesconi, Watanabe, Manoury, Hong』をリリースいたします。
4月24日に開催する発売記念公演では、収録曲全ての演奏に加えて、CDの制作秘話を語ります。また、会場ではCDの先行販売も行います。
ぜひご来場ください!

開催に先立ち、プログラムノート(楽曲解説)を2回に分けて掲載します。
今回はフィリップ・マヌリ、ルカ・フランチェスコーニ両氏の作品についてです。
(執筆は演奏者によるものです)


フィリップ・マヌリ: Michigan Trio

ミシガン州立大学音楽学部の委嘱により1992年に作曲され、ヴェルデール・トリオに献呈されている。初演は翌年、ペンシルベニア州ハバフォードにて行われた。5つの短い楽章から成り、厳選された素材を緻密に構築することで、作品を通して張り詰めた緊張感が持続する。ピアノのソステヌートペダルを使い特定音域の弦のダンパーを開放することによって得られる残響や、クラリネットをピアノの内部に向けて奏することによる弦の共鳴などが効果的に用いられており、この3つの楽器で成し得る音響の可能性が追求されている。

フィリップ・マヌリ
1952年フランス・チュール生まれ。現代のフランスを代表する作曲家の一人である。1981年、IRCAM(フランス国立音響音楽研究所)に招聘され、数学者ミラー・パケットとともにライブ・エレクトロニクスのシステムの開発に携わる。以降、ライブ・エレクトロニクスを用いた先駆的な作品を数多く作曲し、国際的に高い評価を得る。1987-97年リヨン国立高等音楽院教授、1995-2001年パリ管弦楽団のコンポーザー・イン・レジデンスを務めるなど、数々のポストを歴任。代表的な作品に、《Sonus ex machina》シリーズ(1987-91)や、オーケストラのための《響きと怒り》(1998-99 / 2016)、ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団のために作曲された《ケルン三部作》(2013-19) 、福島の原発事故を題材としたオペラ《光のない。》(2017)などがある。

ルカ・フランチェスコーニ: Impulse Ⅱ

フランチェスコーニの9つの楽器のための《Da Capo》(1985-86)と同時期に作曲された《Impulse Ⅱ》(1985-95)は、音程や全体構造が似ていることから、同じアイディアに基づいて書かれたことがわかる。冒頭のアクセントの後、トリルやトレモロ等の極小の素材が反復され、それらがやがて大小の波となり流動的に音響を変化させていく様は、刻一刻と変容し煌めく光の反射のようである。素材が集約と離散を繰り返し極限に達した後、緊張感は緩み、時間の感覚は拡張していく。
《Da Capo》では管弦打の組み合わせによる音色の多彩な変化やダイナミックな躍動が感じられたが、この《Impulse Ⅱ》では3つの楽器によるソリスティックなヴィルトォーシティと、各々の素材の明確な繋がりを聴くことができる。

ルカ・フランチェスコーニ
1956年イタリア生まれ。ミラノ音楽院に学び、作曲をカールハインツ・シュトックハウゼン、ルチアーノ・ベリオらに師事。1981年から84年までベリオの助手を務める。1990年、新しいテクノロジーによる音楽制作のための研究センター、アゴン・アクスティカ・インフォマルティカ・ムジカを設立。
エレクトロニクスを用いた作品を多数発表する一方で、イタリア、東ヨーロッパ、アフリカ、ブルース、ジャズ、シャーマニズムなど様々な文化的伝統からも強く影響を受け、独自の音楽世界を築く。クラニヒシュタイナー賞、ジーメンス若手作曲家賞、ロイヤルフィルハーモニー協会音楽賞はじめ、数々の国際的な賞を受賞。イタリア国内の音楽院で長きに渡り教鞭をとり、現在スウェーデンのマルメ音楽アカデミーの作曲科主任教授。ソロ作品から大編成のオーケストラ、マルチメディアまで150の作品を作曲し、代表作に《Etymo》 (1994)、《Animus》 (1995)《Ballata》 (2002)《Quartet》 (2011)など。



Phidias Trio CD発売記念公演 『Works for Violin, Clarinet & Piano - Francesconi, Watanabe, Manoury, Hong』

2024年4月24日
19:00開演(18:30開場)
会場:マリーコンツェルト(東京都板橋区中板橋18-11)

一般 3000円・学生 2000円(当日券は各500円増し)

ご予約:
https://peatix.com/event/3835928/

【プログラム】
渡辺俊哉:あわいの色彩 I(2017)
ルカ・フランチェスコーニ:Impulse II(1985-95)
フィリップ・マヌリ:ミシガン・トリオ(1993)
スンジ・ホン:Lucem Vitae(2017/18)

【出演】
Phidias Trio(フィディアス・トリオ)
ヴァイオリン 松岡麻衣子
クラリネット 岩瀬龍太
ピアノ 川村恵里佳

【プロフィール】
Phidias Trio(フィディアス・トリオ)
ヴァイオリンの松岡麻衣子、クラリネットの岩瀬龍太、ピアノの川村恵里佳により2017年に結成。これまでの主催公演では、現代の優れたクラリネット三重奏の作品を取り上げるとともに、オーストリア、アルゼンチン、ブラジル、チリ、トルコ、韓国、日本の若手作曲家の新作を初演し、好評を博す。また、ハニャン現代音楽祭(韓国・ソウル)や、日本作曲家協議会主催「日本の作曲家2021」等、数々のプロジェクトに招聘されている。2021年12月に出演した日本現代音楽協会主催「ペガサス・コンサート vol.3」の公演の模様は、NHK-FM「現代の音楽」にて、2週に渡って放送された。https://phidias-trio.com

主催:Phidias Trio ・蛍光資料

お問合せ
phidias.trio@gmail.com

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