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Shiny Colors×fhána -crossing stories-

こんにちは。フィリアと申します。

私の好きなバンドであるfhána。
2013年にメジャーデビューを果たし、唯一無二性のあるボイスをもつtowana、作曲家でありリーダーでもある佐藤純一、主に編曲とサンプラー等の演奏、ラップなどを担当するkevin mitsunagaの3人で活動しています(かつてはyuxuki wagaも所属。ギターと作曲を手掛けていました。)。
代表曲は「青空のラプソディ」「divine intervention」「ワンダーステラ」など。
抽象的で、哲学的で、普遍的な、それでいて一人称的で、物語性のある歌詞で、この世界を様々な角度で切り取り、感傷がありながら希望を感じるサウンドに乗せて歌う、そんな魅力をもったバンドです。

突然バンドを紹介しましたが、今回の記事はそのfhánaの楽曲と283プロのアイドルにまつわる話をします。

283プロのアイドル28人に、fhánaの楽曲を贈りたい。あるアイドルには歌ってほしくて、あるアイドルには聴いてほしくて、あるアイドルにはテーマソングである。そんなつもりで選びました。
正直、かなり気合を入れて選びました!コミュァーや筆に自信のある方たちにも、一度聴いていただければ、舌を巻いていただけるものもあると思っています!

そんな曲たちを、選んだ理由とともに紹介してまいります。両方ファンですという方には是非全部楽しんでほしいですし、fhánaのことをよく知らない方にも、担当アイドルの項だけでも見ていただけたら嬉しいです(何卒…!
担当アイドルだけでも…!)。

音楽性のバリエーションという点ではもちろんのこと、fhánaの楽曲は、上述のような歌詞の特徴を有しており、シャニマスのコミュの抽象的な部分やテーマ性と通底するような要素が見つけられると考えております。そんな共通性や物語の交わりを感じながら読んでいただければと思います。

※いずれの曲についても作詞作曲を記載しており、歌詞については引用を行っております。本記事については、営利目的は一切ありません。


櫻木真乃

What a Wonderful World Line
作詞:林英樹 作曲:佐藤純一 編曲:fhána

それぞれの世界線が交わり、重なり、触れ合う、そんな瞬間やその交錯から生まれる奇跡をうたった歌。
今でこそ異なりますが、「真乃に出会う」ことはシャニマスのプレイヤーにとっては自分の世界線とシャニマスの世界線が交わる最初の瞬間でした。

同じ道をまた選んだ 
でも少しだけ違う

What a Wonderful World Lineより

という歌詞は、シャニアニ第1話のシーンと重なります。同じ坂を上っていた真乃の世界に、シャニPが交わり、世界は変化しました。

まるで祝祭の前夜に
微熱を帯びたひたいの様に

What a Wonderful World Lineより

このフレーズもまた、真乃のアイドルになりたいという静かな決意を喩えるようなフレーズになっていると思いました。
イルミネにも通底するようなホープフルなサウンドも、真乃のイメージにぴったりだと思います。

風野灯織

Ethos
作詞:林英樹 作曲:佐藤純一

「Ethos」とは、日本語に訳してしまえば、「習慣」や「特性」などのこと。「いつもの場所」 を意味し、転じて習慣・特性などを意味するようになったものであり、アリストテレスが「Logos」「Pathos」と並べて提唱したものです。

ずはり、「くもりガラスの銀曜日」です。

言葉でもなくて感情でもない

Ethosより

つまり、エトスが、イルミネの3人の間にはある。それを見続けていたいと願う灯織に、この曲はエトスの存在を再確認させるものとなります。
感情的なギターのリフや、切実な歌詞は、灯織のアイドルに対する強い感情と重なって見え、その先に見える希望まで示唆されるこの曲がぴったりだと思いました。

八宮めぐる

虹を編めたら
作詞:林英樹 作曲:佐藤純一 編曲:fhána

めぐるで「虹」といえば、お察しの方は多いと思います。「チエルアルコ」とはエスペラント語では「虹」のこと。

名前のない色だってさ ありのままでいいよ

虹を編めたらより

という歌詞は、めぐるがあのとき選んだ「かけてあげる言葉」の中に含意されていたんじゃないかなと思います。

あきらめない心と(心が)伝わり(瞬間)
繋がる それはアンサンブル

虹を編めたらより

という歌詞も、「star n dew by me」でめぐるが置いていった歌に手が伸ばされて、思いがきっと伝わって、「無限のアンサンブル」を奏でているという文脈を感じます。
明るくも温かいメロディもまためぐると重なり、めぐるという人物を多色の光で照らし出したような一曲です。


月岡恋鐘

Outside of Melancholy ~憂鬱の向こう側~
作詞:林英樹 作曲:佐藤純一 編曲:fhána

幾千回ものループを繰り返し今ここに
辿り着いた「この僕」
出会ったんだ ここにだけの「君」

Outside of Melancholy ~憂鬱の向こう側~より

この歌い出しで始まるこの曲。
幾千回と言わずとも、何度もアイドルのオーディションに落ちて、辿りに着いた283プロで、「アンティーカの月岡恋鐘」という存在になれた、そしてそこには唯一恋鐘の話をちゃんと聞いてくれたシャニPがいた。
この歌詞があまりにも恋鐘に当てはまりすぎていると思い、選びました。
それに恋鐘は「憂鬱の向こう側を知っている」存在だと私は思っています。痛みやすれ違いを経験しながら、それでも前に進んできました。「寡婦」の幸せを信じるが如く、自分が落ち込んでも周りが落ち込んでも、全部連れて憂鬱の向こう側に行くことができる。そんな恋鐘のパーソナリティをこの曲に感じました。

田中摩美々

ムーンリバー
作詞:林英樹 作曲:yuxuki waga 編曲:fhána

この曲に関しては、まず情景が浮かびました。初夏の夜、摩美々が鴨川で月を眺めている。いたずらっぽく笑う摩美々が、川面に浮かぶ月を指で掻き交ぜる。
摩美々の熱情は、赤くて青い。とらえどころのないその熱情が、川にも喩えられるのではないでしょうか。

ずっとずっと追いかけたよ
君のいたずらな笑み

ムーンリバーより

シャニPも、摩美々を見失わないようにそのいたずらな笑みをずっと追いかけている。
Bメロまでは静かな電子サウンドが、サビで一気にギターメインに切り替わる様も、摩美々の揺蕩うような感情のゆらぎを捉えているように感じます。

ちなみに、後述の「ケセラセラ」のタイトルが「知りすぎていた男」からのオマージュであるのと同様に、「ムーンリバー」も「ティファニーで朝食を」からのオマージュになります。
原曲の「Wherever you're goin', I'm goin' your way.」は、摩美々がいくところであれば、どんなところにもシャニPやアンティーカの仲間がいるということなのかもしれません。

白瀬咲耶

追憶のかなた
作詞:林英樹 作曲:佐藤純一 編曲:fhána

咲耶には、逝ってしまった人を思うこの歌を。

伝え切れない想いが
堰を切って溢れ出した
あなたがここにいないことに
とりとめなく気がつけば
とめどもなく涙が流れていたよ

追憶のかなたより

今の咲耶は、ここにいない「あなた」に向かって、どんなことを想うでしょうか。

それならばなぜだろう?
この胸の空白に
満たされた絆は今もあたたかい

追憶のかなたより

家族との絆は今もあたたかく、そしてそこにアンティーカとの新たな絆が流れ込んでいます。
淋しくも暖かく、美しいサウンド。祈りのような、呟きのような歌。
どうか、一度でも聴いてみて、咲耶に想いを馳せてみてください。

三峰結華

lirycal sentence
作詞:林英樹 作曲:佐藤純一 編曲:fhána

必ずしも本心どおりの言葉を放つわけではない結華の、複雑な心情に触れるような一曲です。
弾むようなリズムとサウンドに織り込まれる、シリアスで一見無機質な言葉たちが、時として裏腹な結華の感情を思い起こさせます。

静かに行間は語りかける

lirycal sentenceより

結華との会話は、時として行間にこそメッセージ性が込められていることがあります。

誰かが吐いた言葉になる前の切れ端を
集めては捨てる

lirycal sentenceより

周りに気を遣う結華は、このような役回りをすることもあるのだと思います。周りの言葉を拾って、自分の言葉を押し込めてしまうこともある。
しかし、アイドルである結華の言葉を誰よりも大切にしてくれる人もいます。結華の言葉もまた、意味に溢れ、アイドル三峰結華を象ります。

幽谷霧子

snow scene
作詞:林英樹 作曲:yuxuki waga 編曲:fhána

アンティーカにもう一曲、いなくなったものを想う歌を。「追憶のかなた」が特定の人を想うとすれば、こちらはむしろ、いなくなった人たちというものを抽象的に捉えた歌です。
霧子の死生観における、いなくなってしまった人、生き物、身の回りのものへの祈りのような、静かな想いに重なります。

消えいったあの人たちの灯を
絶やさぬようにここで今日も生きよう

snow scenより

去っていったもののため、今を生きる。その灯を絶やさぬというのは、忘れないということ。

重く、玄い冬を思わせる曲の序盤から、冬の朝のような輝きに満ちた最終盤まで、「残酷にも見えそうなこの世界」を生きる霧子の心情に寄り添うかのような展開になっているのではないでしょうか。

霧子とfhánaには実は縁があり、ソロ曲「雪・月・風・花」のアコギ演奏は当時fhánaに所属していた和賀さん(yuxuki waga)でした(作曲のrionosさんのポストによる。)。そしてこのsnow sceneもまた、yuxuki wagaの作曲です。


小宮果穂

Hello!My World!!
作詞:林英樹 作曲:佐藤純一 編曲:A-bee・fhána

果穂の元気な姿が思い浮かぶような、fhánaの中でも特に元気なサウンドのこの曲を選びました。楽曲の展開の手数の多さ、シンコペーションのリズムなどが、小学生の生きるジェットコースターのような日常を想起させます。

Tiny revolution a little evolution

Hello!My World!!より

果穂の日々に起こる小さな革命と小さな進化こそ、この世界を変える魔法となります。大人のわたしたちが忘れてしまったような、刹那的な衝動や憧憬が、果穂の日々の中にはあるのです。

消えない消えない消えない
傷をいつも眺めては
還らない日々を懐かしんだりするの?

Hello!My World!!より

傷を伴って成長したとき、そんな刹那的な衝動や憧憬を懐かしむこともあるでしょう。しかし、果穂はまた次の一歩を踏み出す存在となっていくはずです。
その一歩一歩が、放課後クライマックガールズの原動力となります。

園田智代子

calling
作詞:林英樹 作曲:佐藤純一 編曲:fhána

「calling」とは、ここでは「使命」のこと。
智代子の明るくフレンドリーな印象とは敢えて離れた極めてシリアスな選曲です。
なぜこの曲を選んだか、それはやはり智代子が口にした「公約(やくそく)」や「私が思う私の責任」があるからです。 
智代子がアイドルであることは、使命としての側面も帯びていると感じています。推した人が、後悔しないように。自分を最も近くで見てくれた人に、心配させないように。そんな願いを抱いて眠るときに、この曲を聴いてほしいと思います。

使命はきっと定めじゃなくて
痛みとともに刻まれて
その手に掴んだもの

callingより

放課後クライマックガールズ、チョコアイドルの園田智代子に寄せて。

西城樹里

真っ白
作詞:林英樹 作曲:yuxuki waga 編曲:yuxuki waga

微かに苦味がする青春時代の爽快感を全面に押し出したこの曲を樹里に。
サウンド感や歌詞の雰囲気はかなり「過純性ブリーチ」からのイメージの重なりで選びました。
リンゴ飴が酸っぱくて甘いことを知っている樹里は、身の回りのことがすべていいことではないことも知っていますし、すべてが真っ白なままではないことも知っていると思います。
それでも前へ、真っ白な空を見上げて進む樹里の、ひとつの応援歌になればなと思います。

杜野凛世

わたしのための物語 ~My Uncompleted Story~
作詞:林英樹・佐藤純一 作曲:佐藤純一 編曲:fhána

凛世のパーソナリティからすれば、いくらか賑やかな楽曲を。実は、fhánaの曲の中では珍しく「少女」的な一人称の楽曲になります。歌詞にも珍しく「!」が多用されています。

凛世の一人の少女としてのあり様は、静かなようで、実はこの曲のように、常に新たな物語への欲求に満ちていると思います。控えめに佇むように見えて、内側に秘めた情念をもって、人の心を動かしてみせるという強い決意は、その物語を常に完成させず、新たな展開を次々と見せてくれます。

誰かが私をこの世界の隅から見つけ出してくれるの

わたしのための物語 ~My Uncompleted Story~より

そうさ絶対!穢せないわたしだけのストーリー
なんて妄想?ばかりじゃない?

わたしのための物語 ~My Uncompleted Story~より

世界の隅で、ある人に見つけられた凛世という少女の物語が、妄想では終わらせない、誰にも穢させない、凛世だけの物語になっていく。そんなふうにこの曲と凛世を重ねました。

会いたい人は鏡の彼方で歌い続けているから

わたしのための物語 ~My Uncompleted Story~より

鏡の彼方とは実はこちら側ですよね。そして、鏡の映せる範囲は限られています。
凛世の「あいたい」想いが、届きますように。
応答してやってくれよ、なぁ、シャニPよ。

有栖川夏葉

コメットルシファー ~The Seed and the Sower~
作詞:林英樹・佐藤純一 作曲:佐藤純一 編曲:fhána

Seedは種、Sowerは種を蒔く人のこと。そして夏葉の強さは、豊かな木の葉の強さ。そんなつながりからこの曲を選びました。
種を蒔くという営みは、結果に対して最も初期の行為であって、それすなわち夏葉が大事にする日々の鍛錬です。

冷たい雨にも強い風にも
何者でも揺るがない魔法

コメットルシファー ~The Seed and the Sower~より

そんなものはないと、夏葉はきっと知っているし、一方で実は「魔法」にあたる「何か」があることを知っています。
1日1日を大事に生きるような夏葉の営みを美しく支えてくれるような1曲ではないかと思います。


大崎甘奈

ホシノカケラ
作詞:林英樹・佐藤純一 作曲:佐藤純一 編曲:fhána

アイドルとしても、一人の女の子としても、等身大性と憧れを両立するような甘奈。だからこそ、自分の立ち位置や言動に思い悩むことがあります。そんなときに、甘奈に聴いてほしいと思う1曲を選びました。
幼い頃の、無邪気な、シンプルな欲求や感情とはどんなものだったか。美しい星の、小さなかけらのような輝き。

触れたら解けてく雪のように

ホシノカケラより

そんな輝きに触れることで、悩みや不安が雪のように溶けたらいいなと思います。

大崎甜花

アネモネの花
作詞:林英樹 作曲:yuxuki waga 編曲:fhána

この曲で思い出すのは、「四夜一夜物語」の思い出演出。

崩れてく世界その果てで
僕らは出会う

アネモネの花より

の歌詞にぴったりです。
この曲は世界がどんなものであっても、僕と君の関係は変わらず、想い続けるというもの。

たとえ今君に与えられた使命が
僕らを引き裂くとも
君を守ろう

アネモネの花より

アイドルという使命を背負い、時として引き裂かれてしまうことがあっても、守ろうと言えるのは、お姉さんだから。そんな、お姉さんである甜花を勇気づけるような曲になればいいなと願います。

桑山千雪

Pathos
作詞:towana 作曲:佐藤純一 編曲:fhána

悲しくない話をしよう

Pathosより

コロナ禍に自主制作で生まれたこの曲を代表する、キラーフレーズです。辛いことや、思い悩むことがあるときに、底抜けに明るくしてくれたり、鮮やかに解決してくれるわけではないかもしれない。しかし、その人に寄り添い、温かさをもって迎え入れる力が千雪にはあると思います。なにか、悲しくない話をしましょうと、言ってくれる気がするのです。

憧れは盲目で

Pathosより

このフレーズもまた、千雪に思いを馳せるきっかけになります。憧れていたからこそ、挑んだオーディション。挑んだ勝負。そして、アルストロメリアが得た3人だけの「Pathos」。
心を温めるような、そんなアルストロメリアの強みにも通底する一曲です。


芹沢あさひ

Code "Genius"?(English Ver.)
作詞:田淵智也・英訳詞:齋藤光二 作曲:佐藤純一

「Genius=天才」を冠する一曲を芹沢あさひに。
あさひには天才のコード(=やり方)があり、難しい問題を、最もシンプルな方法で解決してしまいます。しかし、それだけでは必ずも上手くいかないこともある。だからこそ、

Code "not Genius"?

Code "Genius"?(English Ver.)より

天才じゃないやり方も必要だということを、ストレライトで戦う中で学んできました。心を届けるということも。

I know Question? Question? Question piece
Can't you solve the Gordian kont?
I know Answer, Answer, Answer key
Can't you leave the Mobious loop?

Code "Genius"?(English Ver.)より

とはいえ、あさひが本当に輝くのは「ゴルディアスの結び目」を解き、「メビウスの環」から抜け出してみせる瞬間です。誰もが「そんなことはできない」と思うことすら、無数の好奇心で世界を見つめる芹沢あさひの前ではその可能性を狭めてはならないと思わされます。

芹沢あさひであることの重み、ストレイライトであること、それを選んだ今、全てに勝って、その姿で物語って欲しいと思います。

That's Code "Geuius", right?

Code "Genius"?(English Ver.)より

ほら、天才でしょ?と。

ちなみに、「English Ver.」とあるのはセルフカバーのため。日本語版は亜咲花さんが歌っています。歌詞は田淵智也さん、英訳はアニサマのプロデューサーのさいとーPこと齋藤光二さんです。
この曲はぜひあさひに歌ってもらいたいですが、towana特有の信じられないぐらい高いパートがDメロとラスサビにあるので、今のあさひからはなかなか想像できません。いつか成し遂げてしまいそうなのが怖ろしいのですが。

黛冬優子

It's a Popular Song
作詞:林英樹・佐藤純一 作曲:佐藤純一 編曲:fhána

冬優子のパーソナリティにぐっと迫るような歌詞を持ったこの曲を。
「Popular」を追い求めて、「ふゆ」になった黛冬優子というひとりの人物は、この曲を聴いて何を思うでしょうか。同じ曲の中で、同一人物(と思われる)の一人称が「私」が「僕」に変化しており、大人になる中で生まれるパーソナリティやアイデンティティの変化を浮き彫りにさせます。

ただの少女だった頃私の視界は
隣町も見えない ちっぽけな世界

It's a Popular Songより

ただの少女だった冬優子は、必ずしも夢見たとおりに大きくなれたわけではない。宝物だったなにかを、どこかでなくしてしまったかもしれない。
些細な経験の積み重ねが、「冬優子」を閉ざしてしまったこともある。

なくしたもの引き換えに輝きだすよ

It's a Popular Songより

複雑なのは、それらと引き換えに生まれた輝きもあること。ストレイライトになって、新しい一歩を刻みつけてきました。それこそが今の冬優子であり、最大の輝きを放つ理由のひとつといえるでしょう。

ところでこの曲は、「Popular Song」と言う割には、どこか悲しげで、感傷的な印象があります。人気を纏うことは、必ずしも本質だけでいられるわけではないという悲しさを感じます。
アイドルという、「Popular」の極値の存在は、消費されていくだけなのかもしれない。しかし、黛冬優子は、アイドルの世界で抵抗していく存在です。

いつか僕たちは愛の歌うたい

It's a Popular Songより

表層的な人気を超えて、普遍性のある「愛の歌」を歌う日まで。

和泉愛依

Do you realize?
作詞:林英樹・佐藤純一 作曲:佐藤純一 編曲:fhána

君となら
どんな場所へだって(恐れず)
行けたんだ 
一人でも一人じゃなかった

Do you realize?より

愛依の「あたし」と「ウチ」の関係にフォーカスすれば、この歌詞は非常に愛依のゆく道を象徴するかのように見えます。

気づいたんだ
矛盾に満ちたこの世界そのまま
映し出すその絵はあまりにもそう美しい

Do you realize?より

世界は矛盾に満ちていて、愛依というアイドルの存在もまた、そういった矛盾の一つである。それでも、矛盾のまま美しい世界がある。そんなことに、愛依は気づいているでしょうか。

叶えられると信じた 
手を取り合って僕ら歩む

Do you realize?より

愛依がたどり着きたい世界、誰よりもかっこいいアイドルになって見せるという決意に、叶えられると信じている「僕ら」のなかには、きっとストレイライトの仲間とプロデューサーが含まれていることでしょう。

爽快感の裏に切実な若い欲求を感じるような一曲になっており、愛依が前に進む勇気を掴むような一曲となってほしいと思います。


浅倉透

君という特異点 [singular you]
作詞:林英樹 作曲:佐藤純一 編曲:fhána

浅倉透という存在はアイドルマスターの世界における「特異点」のひとつです。ユーザー=プロデューサーという前提(尤も、同一性を排除して認識しているユーザーは多いですが。)にあって、過去にプロデューサーと出会ったことがあるという背景は、極めて特異です。
また、ユニットメンバーたちも、浅倉透がアイドルになったからアイドルを始めたという点も、かなり特殊な構造になっていると言わざるを得ません。ユニットメンバーは、浅倉透という特異点に振り回され、それを愛し、追いかけています。

アイドルとしても、ひとりの人物としても、それに触れた瞬間から、特別な時間を生み出し世界を変えるような存在。
しかし忘れてはならないのは、浅倉透がひとりの存在であるということ。ひとつの命として、泥の中で生きている。
終始特異点たる人物の特別性やそれに触れることによる世界の変化をうたったこの曲において、むしろそういった透自身の存在に内包される情念や鼓動に思いを馳せることができます。

月の鯨捕まえて微笑んでる

君という特異点 [singular you]より

ノクチル自体、それを収めることは能わないクジラのような捕食者である。浅倉透なら、月の鯨さえ、捕まえて微笑んでみせるかもしれません。

樋口円香

Antivirus
作詞:林英樹 作曲:kevin mitsunaga 編曲:fhána

樋口円香に巣食う複雑な感情はウイルスか。 

今君をただ浄化する
「怪物」になんか負けない強さを
装備するんだ

Antivirusより

「大人」や「社会」という「怪物」から、君を浄化し、護る。そんな感情が膨らみ、いつしか巨大な怪物になってしまうのかもしれない。

アイドルになってしまった円香がその目で見る世界は、純粋さを置き去りにし、ウイルスに感染したように、奇妙な色に見えているのかもしれません。「完璧」や「美しさ」に侵されてしまっている。円香の痛々しいまでの「ああはなれない」という感情。

きっと感染した世界にも
美しい光が宿るわ

Antivirusより

そんな感染してしまった世界において、「美しい光」になるものは、一体何でしょうか。
何もかもが掴める、などといえば、円香はそんなことはないと言うでしょう。しかし、そんな幼くて剥き出で荒々しい欲求こそ、樋口円香を突き動かすものです。

福丸小糸

世界を変える夢を見て
作詞:林英樹 作曲:yuxuki waga 編曲:fhána

fhánaとしては珍しく、「卒業」という具体的なテーマを描いたこの曲を小糸に。
変わりたくないという思いと、もう行かなくてはいけないという思い。いずれくる、透と円香の卒業という大きなイベントに向けて、小糸はどんなことを思うでしょうか。

そしてこの曲には、「アスファルトを鳴らして」とのテーマのリンケージがあると思います。
変わるものと、変わらないもの。変わりたくないけど、変えたいもの。

揺れる感情も消えない焦燥も
抱え僕らは明日へ

世界を変える夢を見てより

福丸小糸と言う人物は、ノクチルにとって浅倉透と両輪をなす原動力的な存在。その小さな手で、体躯で、世界を変える夢を見てほしいのです。

市川雛菜

Rubuilt  world
作詞:林英樹 作曲:佐藤純一 編曲:fhána

「再生する世界」ひいては、「価値の再構築」を歌ったこの曲は、ありのままの言動で我々大人の常識を常に打ち砕き、新たな観点を授けてくれる雛菜にぴったりの一曲でしょう。 

終わりと始まりのループ
いつしか花が咲き始め

Rebuilt worldより

この世界は、所詮、終わりと始まりのループに見えますが、その中で花を咲かせ、「しあわせ」を見出す力が雛菜にはあります。
そして、さらに周囲をそのループに巻き込む「インフルエンサー」としての力を持ち合わせた雛菜が、アイドルとして若者たちの価値観をも再構築していく存在となるはずです。

震えや恐れすら、雛菜の世界には無縁なのかもしれません。そうして再構築された世界で、ノクチルというアイドルは必ず輝くのです。


七草にちか

GIVE ME LOVE(fhána Rainy Flow Ver.)
作詞:towana・kevin mitsunaga 作曲:佐藤純一

にちかのことを思い浮かべながらこの曲の歌詞を読めば、七草にちかと「愛」の関係性に心を抉られるような感覚を覚えます。
「愛をくれ」という直球のタイトルに、軽妙なラップと、シリアスな歌詞は、にちかの明るい年相応の一面と、思い悩み続ける姿を浮き彫りにさせます。

分かってたような態度に 滲ませていたアイロニー
そんなつもりは無いのに すれ違う愛とエンパシー

GIVE ME LOVE(fhána Rainy Flow Ver.)より

叶わぬ相互理解 未だ探し続けてるシンパシー

GIVE ME LOVE(fhána Rainy Flow Ver.)より

アイロニー、すれ違い、叶わぬ相互理解。にちかがわかっていながら抜け出せない根源的な苦しみとそれを増幅させる要因でもあり、それを埋めるものでもあるアイドルという光。

暗い部屋にともる灯り これはまさに求めた光

GIVE ME LOVE(fhána Rainy Flow Ver.)より

しかし、いまのにちかには、暗い部屋をそっと照らすような、強すぎない光と愛が必要なのかもしれません。プロデューサーからの愛と、美琴から注がれる「あい」は、にちかを少しずつ温めてくれています。

そう 永遠も瞬間も同じものだから
(青空見つけたから 恐れず翼広げ)
魔法のように熱のように いつでも夢見る
(オレンジ色の夕立雲に ほら小さな傘広げ)
やがて降りる光を花束に変える日を

GIVE ME LOVE(fhána Rainy Flow Ver.)より

奈落から見上げる光がやがて降り注ぎ、にちかに花束を渡してくれる日はすぐそこまで来ています。その日こそ、にちかが魔法のように、熱のように夢見続けてきたアイドルとして、完成する日となると思います。

緋田美琴

ユーレカ
作詞:林英樹 作曲:yuxuki waga 編曲:fhána

この曲は、故郷を出て都市に出てきた人がモチーフになっております。14歳で北海道から東京に出てきた美琴に寄せて。

まだ何も知らない子供の瞳で
ひとつだけ持ってきたこの光で
いつの日かこの闇を照らせたら
ここにいるよって歌いたい

ユーレカより

美琴もまた、アイドルという「ひとつだけ持ってきた光」を頼りに鍛錬を重ねてきました。闇を照らせず、もがきつづけてたどり着いた283プロで、ようやく闇を照らせるようになろうとしています。
そして、美琴の歌は「ここにいるよ」という存在証明でもあります。「ALIVE」、そして「アライブファクター」で、その生き様を示してきました。

僕の名前を真っ白な手で描いてく 今

ユーレカより

感情を吐露することが少ない美琴ですが、アイドルに対する感情は誰よりも強いものがあります。時として、「緋田美琴」であることが没却されて、偶像になろうとしていることすら感じます。
しかし、立ち止まって考えること、これまでを振り返ることがあって、その時に、「緋田美琴」という名前を描き、自分であることを自分に刻み付けてほしいと思います。


斑鳩ルカ

Zero
作詞:林英樹 作曲:佐藤純一 編曲:佐藤純一

私が今回のnoteを書きたいと思った動機は、この「Zero」に斑鳩ルカを重ねてしまったことにあります。

光の矢が降りそそぐ空の下で
僕らの感情は凍結され それは
訪れた悲しい審判 僕ら
闇の中でスープを飲んだ

Zeroより

fhánaの楽曲の中でも、最もシリアスで、最も苦しみに満ちた曲です。
ルカの世界は、あのトリビュートギグを境に、一度完全に壊れてしまった。どんな世界を思い描いてこの世界に飛び込んだのか、その初期衝動を、持ったままなのにもかかわらず、一方で未来を描けずにいます。

滲んだ憂鬱の先の世界まだ
見えないよ 煙に包まれて
だけどあの日捧げたそんな祈りは
いつかまた地図を描き出すよ

Zeroより

どれだけ涙を流しても、それが誰かに届くことはなく、声も上げられなくなってしまいました。憂鬱で世界は滲み、煙に包まれて、自分がどこにいるのかすら、わからなくなっています。
それでも、ルカの中にある、「アイドル」への渇望は、コメティックという形で新たな地図を描き始めました。
ルカが届けたいもの、ステージにかけている「願い」。それが、きっと届くんだと、今は教えてもらいないけれど。
弾けそうなステージの上で、叫び続けることしかできないルカが、希望に向かって歩んでくれるためには、あと少し、何が必要なのか。

旅を続ける またゼロに戻っても
何度も何度も闇に火を灯す

Zeroより

ゼロに戻ったルカが、それでも、とこだわるアイドルというものへのどうしようもない渇望を、本当の意味で実現することはできるか、それはシャニPであり、コメティックにかかっていると思います。
ルカは、ステージという光が降りそそぐ場所で感情を一度凍結されてしまいました。美琴が去り、マネージャーと別れなくてはならないという審判を受け、神に見放されているかのようなめぐりあわせの悪さを引いてしまいました。
闇の中で、あの部屋のなかで飲んだスープに、込められた熱は、もう一度ルカをステージに連れてきました。私はこの曲を、希望の曲だと思っています。少しずつ感情がほどけ、この世界で希望を見いだせるまで。何度でもゼロに戻って、そのたびに誰かが火を灯してくれるはずです。

鈴木羽那

星をあつめて
作詞:林英樹 作曲:佐藤純一 編曲:佐藤純一

僕ら魔法の靴を履き潰して歩き回る
ふいに降りる奇跡を祈りながら働くよ

星をあつめてより

鈴木羽那とは、シャイニーカラーズに「ふいに降りた奇跡」です。
シャニPが、こだわりをもってスカウトを行った存在でもあり、メタ的に見れば、登場以来ずっと爆発的な人気を誇っています。

しかし羽那自身は、一体どんなことをすれば、その奇跡を、一瞬の煌めきのようなものを起こせるのか、自覚してはいません。
このまま、なんとなく進んでいては、いずれ頭打ちになり、渇望に突き動かされるルカにはついていけなくなります。
だからこそ、これからの羽那には、アイドルという魔法の靴を履き潰すほどの努力や熱量が必要になるでしょう。
その先に、さらなる奇跡や煌めきがあることを願って、羽那にこの曲を贈ります。

郁田はるき

The Color to Gray World
作詞:林英樹 作曲:佐藤純一

灰色の世界に色が満ちてゆくこの歌を、はるきに。はるきはシャニPと出会って、世界が色づいていくのが見えたと言いました。
我々は、さながら哲学者のごと、世界を言葉で説明しようとしますが、はるきは対照的に世界を直感的に、ありのまま理解する力があると思います。

そんな風に僕と君の間に引かれた境界が
世界の形象っていく それを希望と言う

The Color to Gray Worldより

他人に踏み込むわけではなく、しかしそれでいて他人の心を動かさんとするはるきの営みは、人と人の間にある世界=境界を色づかせようという営みです。それを「希望と言う」と。

君の「答え」聞かせて
そして彩りが満ちてく

The Color to Gray Worldより

はるきのそのような営みが、ルカの止まってしまった感情を、少しだけ前に進めることになりました。
まだ、ルカの「答え」自体は示されていませんが、はるきの問いかけ=祈りは、ルカに影響を及ぼし始めています。
世界が彩りに満ちれば満ちるほど、「黒」は際立った存在となります。はるきの持つ力が、コメティックをより前進させてくれることを予感させる一曲です。



おわりに

ここまでお読みいただきありがとうございました。下手な文章で長々と失礼いたしました。

fhánaは、近年、特にコロナ以降においては、なかなかアニソンシーンに対しては積極的な露出を行っておらず、ファンに向けたリリースやライブ活動が中心になっています。このため、テン年代中盤のアニソンシーンに触れていない方々にとっては、なかなか知る機会のないバンドかと思います。
しかし、勝手ながら、私はシャニマスのコミュが好きな方にはきっとfhánaの楽曲を愛してもらえるのではないかと信じています。

先日のリスアニ!ライブでも、私を含め、たくさんのシャニマスPが、新たなアーティスト、新たな音楽に触れるという経験をしました。その中から、新たに「好き」や「愛」が生まれたと思います。
これを読んだ方みんなが、fhánaの楽曲を愛してくれたら嬉しいですが、なかなかそれは難しいでしょう。しかし、もしここで出会ったことで、新しい「好き」が生まれたら、これほど嬉しいことはありません。物語の交わりに、小さな奇跡があります。

最後に、実は、私の中でも特に好きな曲たちの多くが、今回の28曲の選外となっております。
ここに、それらのタイトルを置いておきます。
もし、興味を持った人がいたら、届いて欲しいです。
・Relief
・white light
・光舞う冬の日に
・where you are
・星屑のインターリュード
・僕を見つけて
・Cipher. 
・永遠という光
・World Atlas


少しでも出会いがありますように。どうぞよろしくお願いします。


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