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2023年時事予想問題 第3位 ガチ中華とガチ諸国料理

1 「ガチ中華」とは

「ガチ中華」とは、日本に在住する中国人が、中国人のために、現地そのままの味の料理を提供する、中国料理店のことです。「クローズアップ現代」や「スッキリ!」などのテレビ番組で紹介されたので、知っている方も多いのではないでしょうか。
日本では「中華料理」が定着していますが、多くは日本の風土や材料に合わせてアレンジしたものです。例えば元々の麻婆豆腐はとても辛いものでしたが、日本の人でも食べられるようにアレンジしたため、日本中に広まりました。味を変えたのは、陳建一のお父さんである陳建明でした。
「ガチ中華」とは、そうした変化をせずに、中国から来た人が、故郷の味を楽しむために、日本風のアレンジを加えないで作る中国料理なのです。
特に池袋は、中国各地の料理を食べられるフードコート形式のガチ中華があるので有名です。中国は広いので、料理も大きく8種類に分かれるのですが、それらをまとめて食べられるのです。
「友誼食府」
「食府書院」
「沸騰小吃城」
が有名ですね。最近はガチ中華も増えてきて、検索すればたくさんヒットします。

「沸騰小吃城」の看板。池袋西口から5分も歩きません。

2 「ガチ中華」が増えた理由

では、なぜそうした「ガチ中華」のお店が増えてきたのでしょう。理由は二つあります。
①中国の人たちがすでに多く日本に来ていること。
外国で長めに生活したことがある人は、日本の食べ物が恋しくなったりしなかったでしょうか。それと同じように、日本に来た中国の人たちも、故郷の味を楽しみたいと思うはずです。重要な点は、「ガチ中華」が成り立つほど、中国の人たちが日本で生活しており、コミュニティを作っていることです。
②日本に住む人たちがガチ中華を楽しんでいること。
「ガチ中華」には、昔から日本に住む人も多く訪れています。それは「普段食べる食べ物とは違っているから」、そしてなにより「美味しいから」でしょう。日本にいながらにして、本格的な現地の味が楽しめるのです。「ガチ中華」の多くは、値段がそれほど高くないのも魅力です。

神保町で食べたビャンビャン麺(超画数の多い漢字)

3 「ガチ諸国料理」

中国の人たちがコミュニティを作っているのと同様に、他の国の人にもコミュニティを作っているものがあります。そしてそうしたコミュニティ向けに、祖国の料理を出す料理店が増えています。「ガチ諸国料理」ですね。
●新大久保界隈のコリアタウンは昔から知られていますね、韓国文化ブームに伴い、休日は大混雑します。
●高田馬場は「リトルヤンゴン」と呼ばれることもあるほど、ミャンマー人が集中しています。ミャンマー料理店の中には、「竹虫」を食べられるところもあります。

特に駅の北側に集中しています。

●京浜東北線の川口、西川口、蕨近辺は、「ワラビスタン」と呼ばれるほど、クルド人が多く住んでいます。
●群馬県大泉町は「ブラジルタウン」として知られています。
●諸国料理のマニアにいま「熱い」と評判なのが、神奈川県の愛川町です。ペルー料理や中南米のスイーツが食べられるカフェがあります。またカンボジア文化センター、ラオス文化センター、ベトナム寺院もあります。
●横浜市と大和市にまたがる「いちょう団地」には、大勢のベトナム人が暮らし、ガチのベトナム料理が楽しめます。

いちょう団地ではありませんが、新たなベトナムタウンとして盛り上がりつつある相模原で食べたフォーのセット

●中井にはウズベキスタン料理「ヴァタニム」もあります。

お蕎麦屋さんの居抜きなのでこうした外見です。Google Mapより。

こうしたガチ諸国料理についてまとめたのが、山谷剛史さんの『移民時代の異国飯』です。本当に全国を巡り、様々な諸国料理を食べているのですね。また外国人のコミュニティにお話を聞き、なぜ日本に来たか、どんな経緯でその場所に集まったのかを明らかにしています。これはぜひ読んでおきたい本です。

4 外国人が来日する二つの理由

それではこうした外国人は、どのような理由で日本に来ているのでしょうか。

①労働者として働きに来る

バブル期、好景気のため日本では労働力が足りなくなり、日系ブラジル人を受け入れました。主に受け入れたのは自動車工業でした。現在最も多くの日系ブラジル人が暮らすのは、群馬県大泉町です。
また、日本の技能を学ぶことを目的に、「技能実習生」が来日しています。これは多くの問題をはらんでいるので、後で解説します。

②祖国の政情不安や弾圧により日本に逃げてくる

戦争によるウクライナ人避難民については、ある程度知っていると思います。覚えておきたいのはミャンマーとクルド人です。
ミャンマーは2021年、軍がクーデターを起こし政権を掌握しました。そして民主化運動に加わった人や、国境近くの少数民族を弾圧しました。その結果、日本に逃げてくる人が増えたのです。
クルド人は、トルコ、シリア、イラク、イランの国境地帯にまたがって住む人々です。

明るい部分がクルディスタンです。Wikipediaより。

一つの民族という意識はありますが、自分たちの国を持っていません。トルコ政府は彼らの独立運動を弾圧しており、そのため日本に逃げる人が増えたのです。
日本政府はウクライナ人を「避難民」として受け入れています。一方同じように逃げてきているミャンマー人、クルド人を受け入れているかというと、そうではありません。これも次に解説しましょう。

5 外国人に関わる問題

①外国人労働者問題、特に技能実習生の問題

技能実習生は、技能を学ぶという建前で来日しています。そして確かに労働基準法を守る会社で働き、日本で技術を学んで帰国する人もいます。ですが、次のような問題が指摘されています。
・日本に来る前に本国で借金を負わされて、稼ぎを返済にあてなければならない人がいること
・日本の雇い主がパスポートを取りあげたり、外出、恋愛禁止などの法に沿わないルールを強制する例が見られること
・日本の労働基準法をはるかに下回る賃金で働く人がいること

要するに日本では安く働く人がいなくなったので、外国から安い労働力を持ってこよう、という考えで作られたのでは? と感じさせる制度なのです。そうした状況がありながら、国は根本的な対策を取ってきませんでした(NHKスペシャルで取りあげられました)。
そのようにひどい環境で働く人たちは、日本に対してどのような気持ちを抱くでしょうか? これはぜひ考えて欲しいところです。これは2022年の麻布で出題されましたね。
ただ近年では日本の賃金が下がったためと円安のため、日本に来るメリットがなくなってきています。日本に行くぐらいなら、賃金が高く、労働者の権利が保障されている国に行こうという動きが進んでいます。労働力不足が叫ばれていますが、これは低い待遇と、人を人とも思わない扱いを、国が放置してきたからではないでしょうか。まさに自業自得です。

②難民認定が非常に少ない

日本は先進国の中でも、難民認定が極端に少ない国となっています。ワールド・ビジョン・ジャパンによると、アメリカが約45000人、ドイツが約54000人受け入れているのに対し、日本は44人に過ぎません。
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の定義によると、「「難民」は、人種、宗教、国籍、政治的意見または特定の社会集団に属するという理由で、自国にいると迫害を受けるおそれがあるために他国に逃れ、国際的保護を必要とする人々」です。
難民に認定されると、永住権取得の条件が緩和されたり、国民年金などの受給資格を得られたりなどの保護が得られます。ですが日本政府には、「難民を装っているが、実は日本に働きに来るのが目的の偽装難民なのではないか」と疑ってかかる姿勢が非常に強く見られます。確かに偽装難民がいるのは事実であると、難民支援協会も認めています。ですがその姿勢によって、本当に支援を必要とする人が救えていないのも事実です。ウクライナの人たちを「避難民」として受け入れているのですから、迫害を受けた人を同じように受け入れるべきです。

③外国人を人間として扱わない

上の二つからは、「日本政府は外国人を人間として扱っていない」ことが見えてきます。それが最も明確な形で現れたのが、2018年に起こった「ウィシュマさん死亡事件」です。スリランカから来日したウィシュマ・サンダマリさんは、同居人のDVのため語学学校を除籍になり、不法滞在の状態になっていました。名古屋出入国管理局に収容されたのですが、完全に犯罪者としての扱いでした。ウィシュマさんはひどい体調不良を訴えたのですが、適切な治療を受けるための仮放免は認められず、入国管理局で死去しました。
この事件については、時の法務大臣上川陽子が遺族に謝罪しました(出入国管理は法務大臣の管轄です)。当時のウィシュマさんが違法状態にあったのも事実です。ですが、あまりにもひどい扱いではないでしょうか。そしてこうした扱いは、上でも見たとおり日本では常態化してきました。
そしてそもそも日本では、日本人すら人間扱いされてないのではないでしょうか? 誰もが「基本的人権を持っている」ことを知らない、あるいは知っていても行動に移さない人が、多いのではないでしょうか?

6 外国人とともに生きる社会

これからの日本では、少子化による人口減少により、外国人と共に生きることが欠かせません。そして外国人が多い地域では、日本語が読めなかったり、日本の社会の仕組みを知らなかったりする外国人との問題も起こっています。それではどのように対応すればよいのでしょうか。次のような対策が考えられます。
①市の広報や看板などの多国語対応
②小中学校への受け入れの促進(日本語教育の拡充、多国語教育)
③住居に入居する際の、契約や居住ルールの多国語対応
④コミュニケーションの促進、拡大

お祭りや学校行事にともに参加するのもよい方法でしょう。とにかく外国人を「他者」として扱うのではなく「隣人」として「ともに暮らす」ことが必要なのだと思います。
外国人の増加によって、外国人を排斥しようと考える人も出るでしょう。ですがすでに私たちの隣に外国人はいますし、外国人によって私たちの生活が支えられているのも事実です。例えば筆者の近所にはコンビニ向け食品の工場があるのですが、そこで働いている人はほとんど外国人です。彼らの存在なしには、もう私たちの豊かで便利な生活は成り立たないのです。彼らを排斥することで、得られるものは何もないのです。
ですから、「ともに生きる」方策をどう考えていくか、が大切なのです。彼らもまた、住民税を払い、共に同じ地域で暮らす「人間」であることを忘れてはなりません。

予想問題

問1 「ガチ中華」が広まったのは、日本に多くの中国の人が働きに来ているからです。

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