見出し画像

2024年1月受験から見た、2月受験に出そうな問題(地理編)

はじめに

2024年1月の主な学校の受験問題を解いてみました。全ての問題を解いたわけではありませんが、2月からの受験で出そうな問題が見えてきたように思います。ここでは、どのような問題が出そうか、また短い残り時間で、何を復習しておくべきかをまとめたいと思います。これから受験を控えている、4年生、5年生やお家の方にも役立つと思います。
分量が多くなったので、今年は地理、歴史、公民、時事問題を別ページにします。地理、歴史、公民は無料で読めますが、投げ銭いただけると大変ありがたいです
それではまず、地理編をご覧ください。

1 一般的な備え

・主な作物の生産順位と割合、工業の順位と割合などの、表や円グラフを使った問題は、ほぼどこの学校でも出題されます。データは重大ニュース、コアプラス、メモチェなどで確認しておきましょう。

淑徳与野1大問2問3

・雨温図も頻出です。かなり上位校でも基本に忠実な問題が多いので、6種類の日本の気候区と、気候区が生じる「しくみ」(季節風、山地、海流)を確認しておきましょう。

淑徳与野1大問2問2

2 重要課題…交通

「2024年問題」は、わたしたちの生活にも直接、大きく関係します。そのため交通は幅広く出題されると思われます。

①新幹線(重要度:4)

路線図は必ず確認しておく必要があります。何県を通るかもきちんと確認しましょう。西九州新幹線、リニア中央新幹線、北陸新幹線の敦賀延伸のような新しいニュースは押さえておきましょう。そして2024年1月、上野~大宮間の架線が切れて、北に向かう新幹線が大混乱した、という事件がありました。この場所に障害が起きると、どうして多くの新幹線に影響が出るのでしょう? 路線図が分かっていれば、答えは出るはずです。

出典:Wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E5%B9%B9%E7%B7%9A)。この図では西九州新幹線がまだ完成していないので注意です。
大宮開成特待選抜大問1問4

例えば大宮開成の特待選抜では上のような問題が出ています。東北・北海道に向かう新幹線は、何県を通るか、ちゃんと理解できているでしょうか。地図できちんと確認しておきたいところです(よりによってJリーグの根幹に関わる問題を起こしたレッズのサポーターを例に出すのは、いかがなものかと思いますが)。

②高速道路(重要度:1)

余裕があったら、東京から外側に向かう道路は、南西側の東名高速道路から順番に覚えておきたいです。覚え方はこちらのページが詳しいです(練習問題もついています)。北関東道開通による工業・流通の変化は、桜蔭で出題されました。今年は半導体工業との関係で、上位校を中心に出題されやすいと考えています。

出典:るるぶKids(https://kids.rurubu.jp/article/52473/)

③芳賀・宇都宮LRT(重要度:3)

宇都宮駅から東に向かい、芳賀町の工業団地を結ぶ、新しい路面電車です。各社の重大ニュースに取りあげられてはいましたが、扱いは大きくありませんでした(日能研、サピは各半ページ)。ですが単なる路面電車の新設というレベルではない、大きな社会的影響を持っていると思います。

出典:公式ホームページ(https://u-movenext.net/about/)

車両は、現在全国の路面電車で採用されている「超低床車」で、段差がほとんどありません。高齢者、障がい者、ベビーカーでも簡単に乗れます。また「信用乗車」システムを採用しており、ICカードならどのドアからも乗り降りできます。一人一人料金をチェックするバスや鉄道に比べて、早く乗り降りできるのです。

出典:公式ホームページ(https://u-movenext.net/dictionary/)

芳賀・宇都宮LRTは、レールのある交通機関を作ることで、「人々をその周辺に集める(=無計画な住宅化を抑える)」「バスと連携して、高齢者などの交通弱者にもやさしいまちづくりを進める」という目的を持っています。そして目指すのは「コンパクトシティ」です。「公共交通機関で誰でも手軽に移動でき、生活できる街」をめざしているのです。富山市が路面電車で先行していましたが、宇都宮はそれをゼロから作ったのです。東邦大東邦前期で大きく取りあげられましたが、それはこのプロジェクトがそれだけ大きな社会的インパクトを持っているからなのです。

④2024年問題(重要度:5)

2024年問題とは、トラックドライバーの労働時間の上限の規制が厳しくなり、今までのような長時間労働が不可能になることを指します。今まで物流が成り立っていたのは、ドライバーが基準より多く働いていたためです。そのため今までのように「ものが届かなくなる」ことが心配されています。ですが、そもそもドライバーの働き過ぎが前提となっていた今までの方が間違っていたのです。
大きく2つの解決策が考えられています。一つめがドライバーの負担軽減です。負担軽減策の一つが「モーダルシフト」です。全てトラックで運ぶのではなく、中間を鉄道や船に切り替えて、負担を減らそうというのです。まず船は、トラックをそのまま積む「カーフェリー」と、「RO-RO船」が出題されそうです。「RO-RO船」とは、トラックを直接船に乗せられる入口を持ち、トレーラーとその上の荷物(主にコンテナ)だけを運ぶ(エンジンがついている部分は載せた港で降りる)船です。

出典:清水港管理局(https://www.portofshimizu.com/)。運ぶのは鉄道車両部分だけです。

カーフェリーとの違いは、カーフェリーはエンジン部分も運転手も運ぶのに対し、RO-RO船はトレーラー部分だけ運ぶことです。RO-RO船の方が効率がよいため、次第に利用が増えています。またカーフェリーは、フェリーに乗っている時間はドライバーの休憩時間にできるという利点があります。ただしフェリーの方がコストが高くなります。

出典:国土交通省(https://www1.mlit.go.jp/kowan/content/001585561.pdf)

また貨物列車も、次第に復権しています。貨物輸送量全体は減っていますが、「積み合わせ貨物」「自動車部品」は増加しています。
もうひとつの負担軽減策が、「再配達を減らす」ことです。宅配便業者やAmazonの請負業者にとって負担になっていたのが「再配達」です。国交省の2023年の調査では、宅配荷物の実に11.1%が再配達でした。そのため国交省、環境省、経産省が連携し、再配達を減らすアピールをしています。具体的には次のことを提言しています。
・時間指定、コンビニ受け取り、職場受け取りなど、ネットを使って受け取り方法・時間を指定する
・宅配ボックスの設置
「置き配」の活用
特に「置き配」は書かせる問題として出そうです。手渡しではなく、決められた場所に置いて、配達完了にするというものです。Amazonでは現在「置き配」が標準になっていますし、6種類から場所を選ぶことができます。
2024年問題の根本的な解決策は、「ドライバーの待遇を上げる」=「運賃を上げる」ことです。現在の日本では様々なものが値上げされていますし、私たちの実質賃金は下がっていますから、値上げは歓迎されません。ですが、もはや現状の運賃では、物流そのものが持続不可能になっているといわれます。ですから私たちは、負担増を受け入れざるを得なくなるだろうと思います。
例えばすでに、郵便料金の値上げが発表されています。2024年秋から、はがきは63円→85円、封書は84円→110円となり、レターパックも値上げが発表されています。郵便料金に関しては、鹿児島ラサールで出題されていましたね。

ラサール大問2問2

また、Amazon、楽天などの通販サイトでは、送料無料になる金額が上がったり、送料無料が廃止されたりする可能性が出てきています。送料無料とはいっても、実際は送り主が負担していました。今後はそれも難しくなると思われます。私たちにも「覚悟」と「負担」が求められそうです。

⑤ライドシェアの部分解禁(重要度:2)

ライドシェアとは、普通の人が運転する自動車に有料で乗ることができるサービスです。
Uber Eatsで知られるUberは、もともとはスマホを使ったライドシェアサービスから始まった会社です。Uberのライドシェアは、「車が空いている時間を、ICTを使って他の人に提供する」ものです。ですが日本では、「タクシーやバスなどの減便」に対応するために、導入が考えられています。これはバス・タクシー会社の待遇がよくないため、ドライバーのなり手がいないことが主な原因です。この背後には2024年問題と、特に地方で乗客が減っていることがあります。
そのためUberのようなライドシェアと、現在日本で考えられているライドシェアは、大きく仕組みが違います。日本では2024年4月から始まる予定で、タクシー会社が業務を行うことが最大の違いです。タクシーが足りないときに、登録してある一般の人が運転する車が出動する、という仕組みです。料金もタクシーと同じです。
ただ、ライドシェアにも問題があります。まず今の日本では、バスやタクシーなど、お金を取って人を運ぶ車を運転するには、「二種免許」が必要ですが、ライドシェアについては二種免許は不要です。二種免許を取るには難易度が高い試験をパスしなければなりませんが(当然時間もお金もかかります)、ライドシェアのドライバーはそれが不要なのです。そのためサービスに差が出ることが考えられますし、安全面でも不安があります。現在二種免許を持っているドライバーからの反発も考えられます。高度な資格・免許が必要な職業は、賃金が高くなるのが当然ですが、ライドシェアの導入によって、持たない人と同水準の賃金になるかもしれないのです。
ライドシェアについては、渋幕で出題されました。

渋谷学園幕張1大問1問8

答えとしては「二種免許がなくても有料で人を運べるようにする」が考えられます。ですがこの答えは、すでに二種免許を持っている人にとっては、侮辱にもなりかねないことを忘れてはなりません。
なお現在、「自動運転」も話題になっています。日本での「自動運転」は、バス・タクシーのドライバー不足に対応するため、という側面が強くなっています。

3 世界地理

北嶺、愛光、東邦大東邦など、偏差値が高い学校で世界地理の問題が出ました。
特にチェックしておくべき国は、次の通りです。
(1) 紛争が起こっている国・地域
ウクライナと周囲の国、イスラエル・ガザと周囲の国は確認しておきましょう。イスラエル・ガザも出題される可能性があるとみています。
(2)G7
広島サミットは非常に多く出題されたため、G7の国の位置は確認しておく必要があります。また広島サミットの招待国(韓国、ベトナム、インドネシア、インド、ブラジル、オーストラリア、コモロ、クック諸島)と、ゲスト国(ウクライナ)もチェックしておきたいところです(サピの重大ニュースには地図が載っています)。
(3)NATO
ロシア・ウクライナ戦争は、ウクライナのNATO加盟がきっかけになったことが、現在では分かってきています。そのためNATOとはどのような組織であるのか、世界地図ではどうなのか、確認しておく必要があります。キーワードは「集団的自衛権」です。スウェーデンはまだ未加盟ですが、ハンガリーが加盟容認に転じたため、加盟する見込みです。

出典:中日新聞2023年7月12日(https://www.chunichi.co.jp/article/727022)

おわりに

地理だけでこれだけの分量になってしまいました。残った時間で、交通の問題、特に2024年問題をチェックしておくことをお勧めします。2024年2月に本番を迎える皆様、また来年、再来年の受験を目指している皆様の、お役に立てば幸いです。
なお、全文無料で読めますが、投げ銭をいただければ幸いです。これだけの分量を書き、調べるためには、多大な時間と資料代がかかっています。今後も情報提供を続けていくために、ご支援いただければ助かります。

ここから先は

94字

¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?