東京カメラ部写真展で別所隆弘さんのルミナリエの話を思い出した。
自身が3度目の観覧となる東京カメラ部写真展。今年は入った瞬間、鳥肌が止まらなかった。展示されている数々の写真が異様なのである。例年そうだったはずなのだが、自分が写真家としてのスタートラインに立てていなかったのだ。3年目にして初めて写真展に選出された写真家達の凄みを直に感じたのであった。
やはり自分の中で一番素敵な写真家は別所隆弘さんだ。
今年大々的に飾っていた写真は「神戸ルミナリエ」である。
しかし昨年の水撒き事件が発生したせいで、2018年、ほとんどのカメラマンが大手を振るってSNSにアップできなくなった。数名のマナーや配慮を出来ないカメラマンが原因でルミナリエにくるカメラマンは水を撒くというレッテルを貼られたも同然である。
しかし別所さんはこの炎上をプラスのエネルギーに変えて、見事東京カメラ部写真展の代表作としてルミナリエを飾ることができたのだ。
炎上をエネルギーに変えるとは
僕がこの話を聞いたのは、別所さんが出版した「最高の1枚を写し出す写真術」でのトークセミナーであった。
別所さんは写真に対して物語性を大切にしているということをトークセミナー中の主題として話を進めていた。ルミナリエの事件は物語性を無視して、成果だけを求めてしまっている、つまり自分の写真じゃないものを取らされてしまっていると指摘していた。別所さん自身もリフ写真は人気であるし、水たまりがあればリフさせたくなると笑いを取りながら話を進めていた。しかし物語の課程を顧みず、みんなが見てくれるリフレクション写真が撮れるといった浅ましさが炎上の燃料源となってしまっていると述べていた。
神戸ルミナリエは本来の意味は、阪神淡路大震災で鎮魂の意と復興を望んで開かれているイベントである。物語性を考えるとルミナリエの意味を認識して、自分なりの物語がある写真を撮る事が大切であると。
別所さんは逸脱したこの物語を自分なりのアンチテーゼとして、平成最後のルミナリエの記憶が「水を巻いた」で終わらぬようリスクを覚悟し、炎上2・3日後に先ほどの写真を投稿したのである。
更にリフレクションで撮影した写真も同時に投稿した。
この写真に写っているのは夫婦と子供であり、次の世代にも伝わっていると述べていた。
この発言に対して突き詰めた説明はありませんでしたが、過去にどんな事があったか、子連れの夫婦が次世代に伝えていくという物語性があるのではないかと感じた。
そして見事別所さんは、炎上せずルミナリエを東京カメラ部写真展の代表作として選出できたのだ。
終わりに
別所さんの行動により、ルミナリエに来るカメラマンへの印象は多少改善できたであろう。しかし、起きてしまった出来事は一生消えずに残って行く。ルミナリエに限らず撮影を行う際はマナーを守っていかなければ、今後もカメラマンへの風当たりは強くなって行くであろう。
そして2019年12月6日、ルミナリエの開催は決定している。令和最初のルミナリエの記憶は良いもので終わって欲しい。
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