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サンエムカラー × 岡﨑真理子

前回の「Print House Session」から約4年ぶりとなる企画。今回のゲストアーティストは奥山由之氏。4人のデザイナーと4つの印刷会社がタッグを組みそれぞれ作品集を制作していきます。

今回のレポートは、サンエムカラー×岡崎真理子チームを取材した様子をお届けします。色校正から製本前の本印刷までの作業を確認します。

今回のセッションでは、2台の印刷機を使用し作品集を作ることが最大の試みです。

【デジタル印刷機 JetPressを使った印刷の様子】

JetPressとは従来のオフセット印刷と違い、デジタル環境で作成したデータを直接印刷機へ送って印刷する印刷方式です。今回はこの印刷機で作品集の中身を印刷します。

【デザイナー岡崎さんとプリンティングディレクター大畑さん、PD川勝さん】

すでに色校正の指示が入ったテスト印刷を元に、岡崎さんが色味のチェックをしていきます。JetPressではデジタルデータを直接印刷機へ送って印刷するので、従来のオフセット印刷のように刷版を必要としないため版を製作する工程が省略できて、日程を短納期化することができます。連続印刷が得意で、オフセット印刷よりも彩度が出ます。

また、今回は500部作るため小ロットの発注の場合はオフセット印刷よりもコストを抑えることができます。

無事に岡崎さんのチェックが終わり、本印刷へ取り掛かります。

サンエムカラーでは、JetPressを使用した印刷物を徐々に増やしてくようです。新しい表現方法を模索するため、最新の印刷機を導入しアーティストや企業、作家などと共に実験している印象を持ちます。

【swissQprint使った印刷の様子】

次に工場を移動し、表紙を印刷している部署へ。

ここではswissQprintというどんな物にも印刷することができる印刷機での作業を見学しました。サンエムカラーの松井会長が「美術作品や伝統工芸品のレプリカを再現するのに最適である」と判断し導入したこのプリンター。

UVインクジェットプリンターで、カサネグラフィカという技術を使い印刷していきます。インクを何層にも重ねていくので、凹凸のある表紙になります。

【目で見ているけど触覚で感じることのできる本】

透明のPETという素材に透明のインクを重ねていきます。

奥山由之氏の『windows』は東京の街中の不透明な窓のみを撮影した写真で構成されています。

デザイナーの岡崎さんは、今回のセッションで奥山さんの写真を見た時、写真からストーリーや思惑などは感じず、むしろ雑多で抽象絵画を見ている様だと思ったそうです。そこから、窓に差し込む光や擦りガラスのテクスチャーなどに焦点を当て、作品を構成・レイアウトしていく流れになりました。

表紙には、擦りガラスや網戸のテクスチャーを抜き取るように、物の質感を視覚で得ることができるようディレクターの大畑さんと共に試行錯誤してきます。

完成見本を手に取った時、思わず「かっこいい!」と声をあげていました。写真なのに、ホンモノに触れてるような感覚です。

今回の取材では、デザイナーの作品解釈が技術者によって形となり、鑑賞者へ届くプロセスを体感した1日でした。
完成したアートブックは10月開催のPrint house sessionにて販売されます。
ぜひお手に取って頂きたいです。

(写真・文 成田亜美)


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