もう会わない人に夢で再会したら

昔の会社の先輩が、夢に出てきた。

私より15個くらい年上の先輩で、係長の役職だった。最初は周りから怖い先輩だと言われていて、距離を取っていたが「完全に避けてるよね?ね?ちょっとー」と直接言われたのをきっかけに普通に話すようになった。先輩の名字と同じ人が会社にいたから、周りは下の名前で呼んでいた。仮に「けんすけ」という名前だったとしたら、私は「けんさん」と呼んだ。

話してみると、細かいところまで気がついて、ちょっと意地悪な先輩だということに気づいた。よく言えば繊細で、悪く言うと神経質。ただ、教えてほしいと言えば、嫌そうな顔をしてちゃんと教えてくれる。だから、好きな先輩だった。



聞きたいことがあると、私は「けんさんけんさんけんさんけんさんけんさん」と5回くらい呼んでいた。「なんだよ!」と言われるのを待って。そして私の存在を認識してもらったら、「はい!」と手をあげて「質問があります!」と目の前に立って言うのがお決まりだった。このくそガキが、と思われていただろうけど、「ちょっと待ってろ」と言って時間を開けてくれるのだった。

「教えたんだから、なんかよこせ」と言われて、渋々持っている仕事の情報を渡したこともある。または逆に、お願いをされたら手を出して「なんかくれるってことですよね?!」とお返しすることもあった。


色々お世話になった。あまり教えてくれる環境ではなかったから、ことあるごとになんでも聞いていた。その度に、忙しいのに時間を作ってくれて。ちゃんとお礼を言っただろうか。
私が辞める時、「お前と連絡先交換しても意味ないだろうからな」と私のことを見透かしたように言って、結局本当にしなかった。会ったとしても、また憎まれ口しか言えないだろうから、きっとこれで良かったんだと思うけれど。

夢で再会した先輩は、私のために何か電話で交渉してくれていた。しょうがねえなあ、という顔をして。私は電話している先輩の横顔をぼーっと眺めていた。夢だから、私の意志みたいなものは反映できないけれど、辞めてから3年くらい経つけれど、例え今本当に会ったとしても先輩の後ろをぴょこぴょこついていく、あの関係性はずっと変わらないんだろうな、と思う。


もう会えないんだろうけれど、夢の中でも顔が見れて良かったと思った。


いつもたくさんありがとうございますっ!