舞台『マーキュリー・ファー』観劇

2022年最初の舞台観劇はマーキュリーファーでした。観劇前に書籍化されたものを読んでみたけどほんとに台本そのものというか、台詞と最低限のト書きだけだったのでこの台詞はどんな風に言うのか?自分で想像するしかなく、役者ってこんなに解釈力を求められるのかと思わず感心しながら何とか事前に読了。言葉遣いも汚いし、差別用語のオンパレードでこれらをどうやって訳すのかも気になるところでした。

初めての世田谷パブリックシアターは思ったよりステージとの距離感が近くて。迫力と緊張感にのまれる感じ。

なかなかの衝撃作、演者も苦しいだろうけど、やっぱりこの劇を作り出したフィリップ・リドリーはどれほど命を削りながらこれを書いたのかと想像すると、ほんとに苦しくなった。幸せな生活が奪われた現在。教育を受ける機会を奪われたダレン、ナズ。考古学者になる夢を諦めなければならなくなったエリオット。愛する人を目の前で奪われ、そのPTSDから逃れる為にバタフライに溺れる人々。搾取される子供。搾取する大人。夢見たサウンドオブミュージックのような結末は叶わず。いつの時代も、どこかにこういった世界は実在している。

黒いバタフライとエリオットの『幸せだった頃の記憶が俺を苦しめる』という台詞。幸せな記憶があるからダレンを守る為に生き抜こうとできる。でもこの荒廃した世界で生き抜くことはとてつもなく苦しい。その記憶がなければ全てを終わらせることなど容易なのに。このエリオットの葛藤がすごく刺さった。
その一方でミノタウロスの話に対するダレンの言葉は残酷な世界でも唯一希望を感じされられるものだった。
ダレンだけがエリオットに依存しているかのように見えてそのエリオットにとってダレンは希望の存在、引き離してはならない、何とも愛おしい兄弟。

物凄く残酷なのに、ラストのエリオットの表情を見て、ダレンの悲痛な声を聞いて、物凄く愛が欲しくなったし物凄く誰かを愛したくなった。

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