ピアノ指導が「天職」だと感じている人はどれだけいるだろう。

天職とは「これが私の生きる道だ」と思える仕事、
これ以上、自分に合う仕事はないと言い切れるもの。

もし今、あなたがピアノを教えることが、
「天職」だと感じられるなら、とても幸せなことだ。

ただ、そういう人は、それほど多くないと思う。
天職だと感じていない指導者のほうが多いかもしれない。

だが、それは当然なんだね。

天職とは、自分で掴み取るものだからだ。

知識や経験を積み、たくさんの感情を味わい、一生懸命尽くし、人間性を磨いていくその先に、ようやく「これが私の仕事だ」と思う瞬間がくる。

つまり、懸命に取り組んだ人間にしか、天職には出会えない。

何のために自分はピアノを教え、誰を幸せにするために自分はいるのか。

生徒と誠実に向き合い、気持ちに寄り添い、願いに耳を傾ける。

自分がすべきことに、最大限の力で取り組む。

「先生はちゃんと自分を見てくれている」

そう感じた生徒から、本当の意味で我々に心を開きはじめる。

指導者として、少しでも高みを目指そうとするその背中を、いつも生徒は見ている。少しでも成長しようともがいている姿に、保護者は信頼を抱く。

そうした誠実な姿、いわゆる「使命感」に人は惹かれ、あなたの教室の戸を叩くのだ。

我々にできることは、一回一回のレッスンを、納得できるものへと近づけるよう努力すること。

鼻の奥がツンとするような辛さを味わいながら、自分を高め続けたその先に、ようやく見えてくる仕事の本質。

生徒の幸せのためという生き方。

それが、私たちにとっての天職だ。

片手間にピアノを教えていては決して出会えない。
生半可なレッスンではたどり着けない。

今日一日の、最大限の努力の積み重ねこそが、
あなたに「天職」とは何かを教えてくれるのだ。

（この物語、登場人物は架空のフィクションです）

待望の書籍化！「夢をかなえたピアノ講師」藤拓弘・著（音楽之友社 ）