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コンセルヴァトワールについてちょっとだけ

コンセルヴァトワールは公立音楽学校

日本の方は、コンセルヴァトワールと聞くとパリの国立高等音楽院(正式名称は Conservatoire national supérieur de musique et de danse de Paris パリ国立高等音楽・舞踊学校。略称CNSMD)を想像することと思います。つまり、才能あふれたプロを目指す人が通う音楽学校というものを頭に思い浮かべることと思います。
15年ほど前に流行った漫画「のだめカンタービレ」の主人公、のだめちゃんもここに留学しましたものね。

国立高等音楽院はパリの他にリヨンにもありますが、その他にもプロを目指す若者が通うコンセルヴァトワール(地域圏立音楽院。略称CRR)という組織はフランスの各地にたくさんあります。CRRは子供向けのクラス(うちの子供たちもお世話になっております)や、若者のアマチュア課程もあり、コンセルヴァトワールに通うということは、習い事の一環という位置付けです。CRRよりも小さい「町の音楽学校」といった組織は本当にあちこちにあります。その辺りの位置付けは長くなるので詳細は省きますが、複数の自治体が共同して1つの音楽学校を運営しているというケースもあります。そういう学校の外見を見たことがありますが「小さな町の音楽教室」といった規模でした。

ただし、コンセルヴァトワールに通うというのは単なる習い事よりは負担は大きい(個人レッスンの他にフォルマシオン・ミュジカルの授業が1時間半、合奏や合唱で1時間以上)のは間違いなくあります。それはプロスポーツチームのジュニアリーグに通うようなものと考えられなくはない、といったところだと私は捉えています。

入学に特に選抜試験はない

小学校2年生から通うことができますが、音楽の場合は登録時期(うちの子の通うコンセルヴァトワールは新規登録でも9月の新年度に対し4月頃には申し込みをする必要がある)に登録手続きをするだけで先着順。特に試験はなく受け入れてもらえます。楽器を全く触ったことのない初心者がほとんどです。ダンスは簡単な適性検査があるようです。
楽器を1年以上経験している生徒は2年目以降から開始できるような演奏テストを受けることもできます。その場合は空き具合などの関係で不合格ということはあります。フォルマシオン・ミュジカルもテストを受けて、その生徒にレベルに合わせたクラスに行くようになります。

では、転居でそれまで通っていたコンセルヴァトワールに通えなくなり、別の町のコンセルヴァトワールに登録したいとなったらどうなるか? その場合はそれまでのコンセルヴァトワールが出してくれるレベル証明書を提出することで、楽器の空きがあるという条件で入学が許可されます。演奏テストを受けることはないです。コンセルヴァトワール間にレベルの差がないとは言いませんが、およその習得の目安があるということと、第一課程と第二課程の終了時は正式なテスト(担当教師以外の先生が来て審査する)があるので、多少のレベルの差によるクラス分けはそこで修正可能ということもあるのだと思います。

公立小学校、中学校にある「コンセルヴァトワールクラス」

これは地域圏立音楽院に限るものだとは思いますが、コンセルヴァトワールの負担が大きいということから、学校の授業の時間帯に組み込もうというクラスです。フランス語で Classe horaire aménagé de musique (ダンスのクラスは最後の musique が danse となる)で、略称 CHAM(あるいは CHAD)と呼ばれています。直訳すれば「時間調整クラス」です。

ここに入るには、うちの子のコンセルヴァトワールの場合、合唱のグループ授業(音楽に集中しているかを見るんだそう)、自由曲での演奏審査と簡単な面接、他の施設で音楽を学習している場合はフォルマシオン・ミュジカルのレベルテストがあって、書類審査で学校の成績(成績があまりにも悪いと入れない)を見られます。
合格基準は音楽への情熱(というほどの大袈裟なものではありませんが、音楽が嫌いなのに無理やり親に連れてこられた、なんていうような場合はダメという話です)なので、特別に上手である必要はなく、経験年数として「これくらいできていれば」というのをクリアしていれば大丈夫なようです。

そして、さらに条件が。このクラスを設置している公立小学校、中学校は1つだけ(うちの場合。他の地域では違う可能性もあります)なので、その学校の学区内に居住していない場合は越境申請が通らないとダメです。
実は、我が家の次男はこのCHAMの中学1年生なのですが、越境申請は手続き上のことだけと思っていたら、我が家は最初越境が拒否されて(CHAM、CHADに合格した50人中6人がそういう目にあったそう)、我が家でも大騒ぎでしたが中学の方でも前代未聞の話で大騒ぎだったそう。最終的には越境が認められて、9月から元気にこちらに通学しております。

のだめに出てくるリュカくんは学校はどうしているの?

リュカくんは「学校に通ってないから家庭教師が来ている」とどこかでのだめに話していました。これってどういう意味? と思われる方はいらっしゃると思うので、そのことについても少し。
フランスは義務教育が16歳までで、その年にどのクラス(留年や飛び級が存在する国なので、全員が必ずしも同じ学年ではない)にいてもそこで義務教育は終わるのです。中学卒業資格というのは別に資格試験として存在しています。
そして、この義務教育というのは「親が教育を受けさせる義務」であって「学校に通わせる義務」ではないのです。学校に通わせないという選択肢もあります。家庭で学校の授業を受けられるような通信教育というのが公に存在していて、生徒のレベルや家庭での学習状況は定期的にチェックされます。
リュカくんはコンセルヴァトワールを飛び級してまだ義務教育年齢でいながら国立高等音楽院に通う音楽では優秀な男の子。国立高等音楽院に通いながら普通の学校に通うのは無理だからこの学校に代わる通信教育を受けていて、その補完として家庭教師が来ているものと思われます。


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