イソップ寓話⑥【金の斧・銀の斧】

 木こりが森で木を切っている最中、不注意で泉に斧を落としてしまいました。すると、泉の中から女神が現れ、言いました。
「あなたが落としたのは、この金の斧ですか? それともこちらの銀の斧ですか?」
 木こりは、正直に普通の鉄の斧だと告げました。すると、女神は言いました。
「あなたは正直者です。なので、ご褒美にこの金銀の斧も差し上げます」
 しかし、木こりは怒りました。
「……ってことは、アンタは俺が鉄の斧を落としたことを知ってたんだな? その上で、試そうとしたわけか? もし欲張って金の斧とか言ったら、どうするつもりだったんだ? ちょっと性格悪過ぎやしないか? 誰だって、金銀は欲しいさ。俺もちょっと考えたぜ。でもな、俺は木こりだ。金も銀も柔らか過ぎてな、そんな斧は使いもんにならねぇんだよ! 材料工学ぐらい学んどきな、この性悪女め!」
 そう一気にまくし立てると、女神は泣きながら泉の中に消えました。


・画像は無料素材サイト『 #illustAC 』より