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ヤーレンズのラジオが面白い


2024年5月現在、ヤーレンズはレギュラーラジオを3番組抱えている。

2020年から続けているGERAではお馴染みのスタッフさんやリスナーの方々と通常運転のゆるさと切れ味の良さの二面性でお送りし、ふらっとでは朝の顔で小気味よくスムーズに進行していると見せかけて時折小ボケを覗かせる巧妙さを見せ、ANN0では深夜ならではの無駄話と時に尖りの効いた発言を超高速で繰り広げる。

ヤーレンズのこの立ち回りの上手さというか、求められた姿に擬態し上手に演じ分けているように見えて、本人たちらしさを要所要所で挟み込む能力には脱帽する。

レギュラー3本のラジオに共通して言えることは、繰り広げられる会話内容が概ね不毛であること。それゆえリスナーの好き嫌いが分かれること。

特にANN0 2024/4/28回では初回放送にもかかわらず(そもそも実際にそんなメールが届いたのか真偽は定かではないが)、ヤーレンズの無意味な会話に対する「お叱りメールばかり届く」あまり出井さんがきっぱりとそんなメールは「読みたくない」と言っていて大笑いした。
「エピソードトークはしない」
「凝り固まった既存のラジオ論で殴ってくるな」
他にもこのように言い放っていた。
そんな2人が展開する会話はもはや漫才なのか芸能情報なのか時事なのか何が何だか分からない。まあとにかく会話内容に対して意味がないということだけは分かる。



私はそんなヤーレンズのラジオが大好きだ。
(そもそもヤーレンズを好きになったきっかけが今年の1月に放送された単発ANN0だったので言わずもがなという感じではありますが…。)
好きなところや面白いところは多々あれど、会話の雰囲気に最も惹かれてしまう。あの雰囲気の良さに、彼らのやり取りをとにかくもっともっと聴きたくなる。

この感情の源流には、「無駄話をできる友人が欲しい」という欲求を代理としてヤーレンズの2人が満たしてくれているという喜びが大きく関係しているんだろうなと思う。

深夜に友人と電話越しにしたくだらない世間話、朝の教室で前日見たバラエティやドラマの内容を隣の席の子と話した一コマ、サークルの合宿でダラダラと酒を飲みながらあることないことをないまぜにして盛り上がった猥談…。

ヤーレンズの生み出す会話群はこのような無駄話を思い起こさせる。

これまでの人生で幾度となく経験してきた"楽しかったけどなんの話してたんだっけ?"と後から振り返ろうと思い出せない会話たち。しかし思い出せないくらいどうでもいい内容だったからこそ、あの時に心の底から面白かったのではないかと逆説的に思わせてくれる会話たち。

進学や引っ越し、就職や結婚や子育て等各々のライフステージの変化で多くの友人とは展開することが困難になった"あの頃の会話"が2人の会話には多分に詰め込まれていると感じる。

何かと効率化やタイムパフォーマンスばかり求められる昨今、何の意味もないおふたりの無駄な会話に、(そしてそんな無駄話を笑うことのできる自分の中の小さな余裕に、)割と本気で救われている。


そんな会話を繰り広げるためには、長い時間を意味もなく共有した相手との共通言語の多さが大事になると思う。

打算で組んだから対して仲良くなかったが、コロナ禍で現場が全て飛び徹底的に話し合ったという2人のあの頃の時間が、現在のラジオでの無意味で無軌道な会話に大いに生きていると思わざるを得ない。

心のボンネットを開けたからこそ生み出される阿吽の呼吸と言っても過言ではない会話展開に、どうしようもなく心惹かれるのだと思う。


2人の圧倒的な情報量にはいつも驚かされる。
どうして過去の話題(平気で昭和40年代くらいの話が出てくることもあるのは本当にどうして…!2人とも生まれていないのに…!)があんなにポンポンと出てくるのか。
どうして前に話していた内容から音の響きや押韻で繋がるのか。
すごいとか頭が良いとか諸々の感情を通り越して、もはや末恐ろしい。畏怖の念すら覚える。

会話で飛び出すあらゆる情報が合っているかどうかは公共の電波に乗せる以上ある程度大切なことかもしれないとは思う。実際、2人はお叱りメールは読まない一方で訂正メールは粛々と読む。

ただ、私自身はヤーレンズが口に出した情報を分かるか/分からないかは全く気にしたことがないし、そこにこのラジオの面白さを委ねていない。
とにかく2人の会話が繋がり続けて最初にどんな話をしていたか全く分からなくなるくらいまで行き切ってほしい。その道筋がどうなるのかを見ている、という感じだ。

今後も視聴者に伝わるかなんて気にせず、2人でべらべら昭和や平成の誰も覚えてなさそうな芸上情報を引っ張り出してきて盛り上がり続けて欲しい。



ちなみに、実はANN0で話している内容はほぼGERAですでに話しています。もっとヤーレンズの無駄話を聴きたいという方はぜひメンバーシップ(月額¥500(楢原さんは「は?高!」とお怒りの金額設定))に登録して過去約200回分のアーカイブを聴いてみてください。

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