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Hello, Mister 最終話【原作】

本日のお話

本日のお話は最終話です。動画はこちらになります。
良ければ併せてご覧ください。

また、こちらに関しての記事も書いています。よければ是非

最終話

ある満月の夜。
夜中にフィズが暖炉に火を灯した。

猫はもう長いことフィズと一緒にいた。
そんな中、こんな夜更けに暖炉に火を灯したのは初めてのことだった

それに気づいた猫は、フィズの近くに寄った。

「やあミスター。今日はなんだか寝れなくてね。これから1通、手紙を書こうと思ったんだ少しの間、そばにいてくれるかい?」

フィズは優しい笑顔を浮かべながらそう言って筆をとった。
温かい暖炉と、綺麗な月、そしてフィズとの生活
猫はこの日常に幸せを感じていた

そんなことを感じている矢先、フィズが言った
「妻と息子と会えなくなって私は絶望していた。生きている意味を考える毎日さ。いつの間にか妻と息子が帰ってくる未来を夢見てこの街に愛情を注いで来た。私はね今になって、“幸せ”とは何だろうとよく思う時があってね。
贅沢な暮らしや、愛する人々に囲まれた瞬間や、色々と思い浮かびはするのだが、いざ言葉にしようとするといつもうまくできなくてね...

けど今なら、言葉にできる気がしたんだ。
人生は、そううまくはいかない。幸せというものに答えはないからね
幸せを求めた拍子に、意図せず傷つくことだってあるだろう。
でも、だからこそ、夢を持つことを忘れてはいけない。生まれた家や境遇に関係なく、自分の道を選べるということを、私はこの町の人々に教わったのだよ。 そして、この町をこれからもそういう夢を紡ぐ場所にしたいと思うんだ。」

しばらくすると、フィズは筆を止めた。

「いいかい、ミスター。『孤独』は愛を知るためにある。
『孤独』はもう、君の味方だ。
もし孤独な人を見つけたらそっと寄り添ってあげてくれ
私と出会ったあの夜のように...」

フィズは猫を優しくなでた。その手はとても温かかった。
フィズは手元の手紙を綺麗に織り込むと、慣れた手つきで封筒にロウで封をした。

「さて、私の大切な帽子はどこかな
この手紙をそこに入れておこう。
ミスター、明日の朝この帽子とその中に入ったものをアダムスベーカリーに届けてはくれないかい?」

猫は首を傾げた

「いやね、ここのところ疲れてしまって明日はゆっくり寝ていたいのさ
お願いできるかな」

猫は小さく、にゃあと鳴いた。

「ありがとう。では、おやすみ」

ゆっくりと暖炉の火が消えていくのを見届けてフィズは眠った。

翌朝、フィズは目を覚まさなかった。
いくら猫が鳴いても揺すっても静かに目を閉じたまま起きることはなかった。

「ミスター、約束だ」
いつの日かの、フィズの言葉が頭をよぎった。

猫は彼の帽子を加えて町へ飛び出した。

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「ありがとうございましたー!」
「リド、しっかり頑張れよ」
「うん!でもお客さんがいないと頑張れないから、また来てねー!」
「ハハハ!こりゃ一本取られたなあ!また来るよ!」
その日も、リドはアダムスベーカリーにいた。

「あれ、あの猫はフィズおじさんの所の...??
 ジルおじさん!ちょっと来てー!」

「なんだ、どうした」

「フィズおじさんの猫が来たんだけど...」

「ん?この帽子、町長の...手紙が入ってるな
 おい、フィズさんはどうしたんだ?」

猫はにゃあと鳴いた

「この手紙、お前宛だ、リド」

「え?」

「俺はちょっとフィズさんの家に行ってくる。お前、店頼んだぞ」

「あ、うん!」

リドは手紙を広げた

数年後...

「ミキ、しってるか?」
「何を?」
「今度新人の配達員がくるらしいぞ」
「ああ!知ってるよ!昨日たまたま郵便社で見かけたんだ」
「あれ、リドだぜ?」
「え?リドって、あのリド?」
「ああ、リド・コリンズだ!」
「えええ!あんなに大きくなったのか!気がつかなかったよ。
 なんか、帽子をかぶってたせいか大人ぽく見えたのかも」
「あいつ、この町の町長になりたいんだってさ」
「ふーん、ぼくいいと思うな!」
「ああ...!! 俺もそう思うよ」

リドは、いつの日か手紙をもらった日に預かった赤い帽子をかぶっていた。

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その日の夕方、燃えるような夕日がふと猫の目に映った
その夕日を見ながら猫はフィズとの毎日を振り返っていた

溶けるように落ちていく太陽を、猫はただただ見つめた
陽の落ちた町は静かだった
気づけば町を一望できる小さな丘の上に来ていた

そこではあたたく灯る街灯が猫を照らした
理由はなかったが、猫はその光をじっと見つめた

静寂の中、静かにコツコツと足音が聞こえてきた。
猫の隣に来たのはリドだった。
「やあミスター」
リドと猫は町を見つめた
「フィズさんに会いたいかい?...僕もさ
でも、不思議と寂しくないんだ。
フィズさんが愛したこの町を愛することで
すぐそこにフィズさんを感じられる。
そしてこの町のひとりとして、ぼくはぼくでいれるんだ。」

「ハローミスター」

フィズの声が聞こえた気がした。

おしまい。

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