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31に行かなくてはならない

31に行かなくてはならない。アイスクリームを買いにいくのだ。

本当は夕方に行くはずだった。もとは子どもたちが食べたいー!と言ったのだけど、土曜出勤している妻へのおつかれプレゼントにもなるなーと思って買いに行くことを決めた。みんなお出かけの格好をして玄関に出たら来客が。

「すいません、この子が遊びに来たいって言って…」近所に住んでいる甥っ子とその父(妻の妹の夫)が来た。

私はフリーズした。

子どもたちは甥っ子と遊ぶのは大好きだ。それがいちばん良い選択肢のはずだ。しかし、31を買いに行こうと決めたのだ…

十数秒とまった。

その間に隣の家の子どもも出てきて一緒にあそぼー!と言いだした。私は子どもたちと31に行くことを止め、子どもたちは外でみんなで遊びだした。とっても楽しそうで良かった良かった。

私はめちゃくちゃイライラした。

このイライラは説明できない。アイスクリームなんて今買っても買わなくてもどっちでもいいし、子どもたちは今を楽しんでいる。しかし、イライラするのだ、初めに31に行くと決めたから!


そう、私は急な予定の変更に激弱だ。理由はわからない。たぶん幼い頃からそうだった。急な変更に納得ができなかったとき、涙が出そうになる。心をぎゅっと掴まれて思考が停止する。フリーズする。

小学生のとき、隣町にカードダスの新作が出ていることを知った。親に買いに行くと決めたことを伝えると反対された。車通りが多いところだし、何より遠かったから。私は親の目をぬすんで家を飛びだしカードダスを買いに行った。

長らく楽しみにしていたFINAL FANTASY TACTICSの発売日が来た。なんとその日は台風が直撃していた。買いに行くと言うと親は反対した。私は親の制止をふりきってゲームを買いに行った。看板が飛んでてけっこう危なかった。

大学生のバイト時代、みんなでどこにご飯を食べに行こうかと考えていた。私はラーメンを食べることに決めた。他の全員はうどんがいいと言った。私は一人でラーメンを食べに行った。でも、食べてる途中でとってもさびしくなってみんなに「やっぱりうどんにしたら良かったわー」とメールを入れた。みんなからの返信は「死ね!うつ病!」だった。ひどい。


子どもが産まれて私は変わらないといけなくなった。子どもの予定は変わる。体調も気持ちもコロコロ変わる。大人の都合は二の次で、生活が子ども中心に変わった。

私の人生は「子どもが幸せであること、楽しいと感じること」が最上位になった。だから、子どもに関わる予定の変更はまったく苦じゃなかった!私はたぶん成長した!

私の仕事も予定の変更はつきもので、たくさんの人と関わる仕事であるので、臨機応変を求められ続け、私もそれに対応することができた。私はきっと成長した!


雲行きが怪しくなってきたのは、子どもたちも少し大きくなり、ご近所付き合いイベントが発生するようになってからだ。

祭りなど、子どもが参加するのはいい、とてもいい。しかし、急に親もこう動いてくださいと言われるのはよくない。前もって連絡があれば幾分かマシなのだけど、ここでの急な予定変更がきつくなった。

甥っ子、子どもたちにとって「いとこ」が近隣に引っ越してきた。わたしは心配していた。連絡なく急に訪問されるのは勘弁してほしかった。それでやろうとしていたことができなくなるのはきっとフリーズしてしまうから。そしてそれは現実となった。

妻は言う「最近こだわりマシになってきたよね」
そりゃそうだ…我慢してるからな!!
私は我慢をするようになった。

みんなが好きにするのならそうすればいい。
私は我慢する。


前から妻には本当の思いを伝えている。
「甥っ子家族嫌いなわけじゃあないんだ。子どもたちはもっとたくさん楽しく遊んでほしい。そうじゃなくて、嫌いなのは急な予定の変更なんだ!」

でもきっと伝わってないと思う。人の気持ちを真に理解することなんてできない。人は相手の表情(目と口の動き)を読み取ってその心情を想像することしかできない。甥っ子家族が突然来たとき、きっと私の顔は嫌な顔をしている。

急な予定変更や反対をふりきってこだわりを貫いたとき、さまざまなことを考える。たいていは後悔する(なんでこんなことにこだわってたんだろう)って。そのこだわりが合理的でないことはよくわかってる。今日じゃなくてもいいし、もっと安全な方法があるのも。だから後悔する。


なぜだったか。
目的は重要ではない。
心がそれを実行するように叫んでるんだ。

なぜだったか。
夜、寒いけど自転車にのって駆け出した。
とにかく31に行かなくてはならない。

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