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「ラーメン大好き小泉さん」感想

「ひとりアドベントカレンダー」2023/12/05 更新分
この作品に出会ったのは病院の中だった。
一時期体調をぶっ壊して一ヶ月ほど入院したのだけれど当時はコロナ真っ盛り。
面会はおろか病院の外にも出してもらえずストレスの溜まる入院生活を過ごしてた。
娯楽が何もない。
おまけに飯もマズい。おっさんのイビキASMRを隣のベッドから頂いたりもした。ここは純白のプリズンか?
申し訳程度に本だけはたくさん置いてあったけれど偉人のコミカライズだとか女性誌だとかイマイチ読む気になれないラインナップばかりで辟易したのを覚えている。
一応「ONE PIECE」はあったけれど、魚人島編の途中からいきなりワノ国編が始まった。 麦わらの一味が突然、東映太秦映画村で外ロケを始めたではないか。俺は今何を見せられてるんだ?
あまりに退屈で仕方ない。
そんな時本棚の奥で偶然見つけたのがこの「ラーメン大好き小泉さん」だった。

最高だった。

話の内容はジト目系金髪ミステリアス美少女女子高生「小泉さん」がただひたすらラーメンを美味しそうに食べる。本当にただそれだけ。

なんだけれど取り扱う話題の幅が兎も角広く、「二郎」「家系」などの今どきベタなジャンルはもちろんのこと全国のご当地ラーメン、「一蘭」「スガキヤ」などのチェーン店。
インスタント麺や、冷やし中華やつけ麺など一般に想像する「ラーメン」から少し外れてるものも網羅し果てにはどんぶりの話までする。
そしてそれら全てに対する造詣が兎角深い。

皆さん知ってますか?ラーメンサラダって札幌グランドホテルのピアホールで振る舞われたものが元祖で、北海道では定番メニューらしいですよ。

この作品を読むとちょっとだけラーメン博士になれた気がする。
僕は悪いヲタクなのでこう言う時少しでも知識をつけて100%を味わおうと考えてしまうのだが、
一方で作品の中ではそんな難しいこと考える必要はないとも主張しており

「ラーメンを美味しく食べられるのならそれで良いじゃないか」
とおおらかな姿勢を一貫して取っている。
ラーメンは自由なのだ。

そんなラーメンの魅力は文字だけではなく画にも表れてて
ラーメンやキャラの作画の良さはもちろん、
コマ割りやページの使い方が巧みで、さらさらと読めるのにしっかりとラーメンのおいしさが伝わってくる。
鳴見なる先生は漫画が上手い。

そしてこの作品の真骨頂は背景にある。
ラーメンの周り、店内やその土地などが醸し出す空気感が合わさることで一層「美味しそう」だというイメージが掻き立てられる。
ラーメンはそのどんぶりの中だけで成り立つものではないのだ。

この作品はそんな「ラーメン」という文化そのものを愛してやまないことがこれでもかと伝わってくる。
「好き」が溢れてる作品のなんて素晴らしいことか。

さらにそのラーメン愛は作品内にとどまることを知らない。
ここで鳴見なる先生のX(旧:Twitter)を紹介しよう。

自作の宣伝以外は本当にラーメンの話しかしない。
この方は「ラーメンについての作品を描く漫画家」ではなく「漫画の描けるラーメン狂い」なのだ。
おそらく「ネタ切れ」という概念は存在しないのだろう。
これからも打ち切られない限り無限に麺を啜るし、それを漫画に出力し、仕切れないものはX(旧:Twitter)にまろび出してしまうのだろう。
先生は生粋のナチュラル・ボーン・ラーメニストなのだ。


今回はそんなラメラメの実の全身ラーメン人間 鳴見なる先生の「ラーメン大好き小泉さん」に退屈で仕方なかった入院生活から救われたと言うお話でした。

今日はもう遅いけれど、夕飯はラーメンにしようかな。
近所の町中華はきっと閉まってるだろうからコンビニ麺になってしまうかな。でもそれで良いのだ。
ラーメンに上も下もないって小泉さんはきっとそう言うだろうから。

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