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分水嶺、ロタワクチン

妊娠する。子供を産む。そうすると、育てなくちゃいけない。

育てるという中には、近所の小児科に予約をとって予防接種させにいくというパートがある。予防接種を受けさせないということもできる。ロタって人生の選択だよねと思うので、これについて書く。

定期と任意

親になって初めて知ったことだが、0歳児はとにかく予防接種を打ちまくる。どれくらいかというと、これくらい。(Know VPD!より)

数えた。0歳児は生後2ヶ月からスタートし、だいたい8ヶ月までに6種類を13回+3回やる。多い。

+3回とはなにか。任意接種と呼ばれる予防接種である。任意というからには、やるかやらないかを親に委ねられている。

予防接種には定期接種と任意接種の二種類がある。定期接種は公費で、無料で打つことができるが、任意接種は自費。

0歳児の任意接種であるロタウィルス胃腸炎の予防接種はどれくらいかというと、……じゃじゃん、23000円〜30000円ぐらい。結構高い! なかなかすんなりとは出せない金額。

選択は急に突きつけられる

毎日毎日育児で疲弊している。産後の入院で「予防接種受けに行ってね」と言われているので、まだ首のすわらないふにゃふにゃの人を連れて、こわごわ小児科の門を叩く。わあ、子供いっぱい。順番に呼ばれ、あれよあれよとチクチク打たれる。当たり前だが赤子は、ぎゃあぎゃあ泣く。おーよしよし、よくがんばったね……。ふいに医者は言う。「ロタワクチン、受けますか? やめますか?」と。

その選択はいきなり突きつけられる。

……いや、ちょっとこれは盛った話で、実際は電話予約の時点で「ロタ受けますか?」みたいな感じなんだけど。

とにかく、まるで高速のベルトコンベアーに乗っているかのように反射で過ごしていた日々にいきなりさし挟まれるチョイス。それがロタ。それが任意予防接種。数学の問題解いてたら、急に現代文の設問出てきたみたいな困惑。「どうしますか」って何?

予防接種を受けないこともできるのか。えっ受けないって何? 受けたほうがいいんだよね?……って、高い?! 

健康を金で買った

ごく簡単に説明すると、ロタウィルス胃腸炎は、乳幼児がけっこう重症になりやすい、感染力の強い胃腸炎だ。 脱水とか。恐い。

なかなか全国的なデータが見つからなかったのだけど、0歳児の30~50%ぐらいは少なくとも受けてるっぽい。※1
体感的にはもう少し多い感じがする。

私は、ロタワクチンを子供に受けさせることにした。金額はでかいけど、感染して重症化するほうがもっと金と時間がかかる。

受けさせないという選択もある。家庭で養育していてほとんど感染リスクがないから、とか。

気軽に人生左右しちゃうかんじ

私には、このワクチンを受けるか受けないかという問いが、ひどく恐ろしいものに感じられる。子供の病気のリスク、下げますか、下げませんか? という理性的な問いではなく、もっと根源的な分水嶺に立たされている気持ち。「あなたは、子供にどういう人生を与えますか?」と訊かれている気分。

いっしょうけんめい産んで、なんとか育てている。状況が先んじて、自分はなんとか追いつこうと息たえだえに走っている。その中で、「人生をどうしますか?」と訊かれる。「えっ?! え? 今?」みたいな困惑。そんな気軽に「ワクチンどうしますか?」とか訊かないでほしい。めっちゃもったいぶって、BGMとか流して気持ちつくった上で質問してほしい。

ロタワクチンを受けるか受けないかという問いは、慌ただしい育児生活の一番最初に突きつけられる、子供の人生についての選択だと思う。保険に入れるかとか、どこの学校に通わせるかとか、習い事をさせるかとか、そのたぐいの。子供の進路にまつわる選択をするとき、私はいつも苦味を覚える。自分はベストだと思って選択する。でも、それが正解かどうかはのちのちになってみないとわからない。「また親の権限をふりかざして子供の進路を決めてしまった」と思う。

はやく自分で意思表示できるようになってくれ、と泣きつかれた赤子を見て思う。

※1
NIID 国立感染症研究所 ロタウイルスワクチンの導入とその影響の評価 https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-sp/2261-related-articles/related-articles-409/4483-dj4097.html
はしもと小児科 ロタワクチンに関する最近の話題http://zousantsushin.jp/2018113729.html



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