臨時記号のシャープとフラット、歌い方の違い
フラット、367に付きがち。シャープ、45に付きがち。 by 僕
どうもぴーなっつです。
臨時記号のシャープとフラット、あなたはちゃんと使い分けてますか?歌い分けてますか?
(調号で既にシャープついてるから、ここにさらに臨時記号でシャープにするとダブルシャープになって読みづらいから、ここはフラット/ナチュラルで表記しよ!)
みたいな適当な決め方してませんか?
そんなの悲しいよ… 臨時記号のフラットとシャープだと音の意味合いが違ってきちゃうんだからさ…
違いがわかる人間になろうぜ。
っていう話です。
ということで今回はハーモニーの観点から臨時記号について語ります。
(想定読者層…歌ってハモることがある人たち)
(以下、数字は調号に準じた移動ドと対応)
例) 1=ド 5♯=ソ♯
僕、いまアカペラサークル入ってるんですけど、基礎練習の一環で153でハモるっていう練習をやるんですよ。
まず1の人が音を出す。この時わりとしっかりめに出す。すると倍音っていうのが鳴るんですね。(倍音については各々おググりください。)
倍音が豊かなしっかりめの発声をすると、1の音を出しているのに5や3の音が聴こえるんですね。
次は5の人が音を出します。すると1の倍音と共鳴していい感じにハモりが生じます!
同様に3の人も音を出してハモります。
ハイ、いい感じ。
ここで注意点があって、3の人は特になんですけど、1の人よりもしっかりめの発声をしてしまうとハモりにくくなることが知られています。
これ、わりと倍音から考えたら当たり前の話。3の人がしっかり声を出しすぎると、7と5♯の音がなる訳なのですが、この音は基本的に1や5とはハモりずらい音なわけよ。
なので153ハモりの基礎練習のときは3の人は「1の倍音と調和してるんだぞ、倍音を引き立てて1の人を主役にするぞ」っていう気持ちで、1の人に寄り添う発声をするのがよいんですね。
つまりね、
1の人は"3の人にハモられてる"。
3の人は"1の人にハモってる"。
"ハモりハモられの関係"。
関係に非対称性が一応あるよってことは覚えておきましょう。
っていう前置き。
さてシャープとフラットの話に戻ります。
シャープとフラットの性質の違い、私なりに説明しよう!
フラット… 誰かからハモられがち。
シャープ… 誰かにハモりがち。
っていうことです!(ドン)
結論から言うと、こういうこと。
フラットがついてたら、倍音鳴りめのしっかりした発声で歌おう。("ハモられる"意識で)
シャープがついてたら、他の人の倍音に寄り添った発声で歌おう。("ハモりにいく"意識で)
結論はもう言っちゃったのであとは興味がある人だけ読んでください。
せっかくなので理由を詳しく掘りますね。まずフラット。
6♭、つまりラのフラットってあるじゃない。結構よく出てくるのだけどなんでよく出てくるかっていうと、この音の倍音で1(ド)が出てくるからなのよね。1っていうと調の主役の音でしょう。その音が自然にハモりにいける音なのだからやっぱりよく出てくるのよね。
だから楽譜で6♭が出てくるとこ見ると大体一緒に1も出てくるのよ。
同様の理由で3♭(5にハモられる関係)、7♭(2,4にハモられる関係)は頻出フラットなのです。メロディラインが1234567をウロウロしてる時にハモりで出てきても何ら不自然じゃないのはこういうハモりハモられ関係があるからなんですね。
また、特に7♭でよくみられるけど、セブンスコードとして出てくることも多いです。
つまり1357♭、コードでいうとI7のコードで出てくることがよくある。
このとき、7♭はハモられの関係にある24が一緒にいるわけじゃないし、むしろ1の倍音としての在り方が求められるから強く出しちゃダメ。という話もあります。
でもね、臨時記号がフラットである以上、倍音はある程度あった方がやっぱ綺麗にハモります。(てか1の七倍音なんて存在感めちゃ薄いし音高も厳密にはセブンスではない。セブンス鳴らすときも1の七倍音として歌うより九倍音が1になるような意識で歌うべきだと思う、しいていうなら。ここ深く話すと長くなるしやめとこう)
そしてですね、往々にしてセブンスには、次のコードとして完全四度上のコードを呼び出す力があります。(ツーファイブ、セカンダリードミナント、属七などで調べてみてくれ)
この効果の理由の一つは、セブンスの三倍音によるものです。7♭が鳴ってたら三倍音で4の音も結構聴こえるので次のコードで4系のところに行きやすいのよ。
そういうのもあるので簡潔にまとめると、フラットはわりと倍音鳴らしめで歌うのがハーモニー的にはちょうどいいよってこと。
次シャープね。
平均律的には6♭と同じ音になるのだけど、5♯っていうのも頻出臨時記号です。これは、3の倍音として鳴っている5♯を強調するため、"3へのハモり"として頻出なのです。6♭が1とのハモられの関係で出てくることを考えると実に対照的ですね。
さて、5♯が出てくる時にその音をしっかり倍音鳴らした発声でお届けしてしまうと、実はとても良くないことになってしまいます。
3に対して5♯でハモっている時のことを考えましょう。1234567のふつうの調制ではサブキャラだった3の倍音が引き立ち、展開を感じさせるいい和音が鳴りますね。3の倍音を確認してみると、7と5♯です。
あれ?5♯が急に倍音鳴らしめのしっかりした発声をし始めましたよ!あらあらお盛んなこと。どんな音が聴こえるでしょうか。
まず聴こえるのは三倍音、2♯です!あらあ3と半音差、ふつうに良くはないですね。メジャーセブンスといえば聞こえはいいものの、調制外の音だしそんなのが勝手に鳴っちゃうのはお世辞にも褒められません。
次に五倍音、7♯!つまり1ですね。7と半音差!嫌な音。。。こんなのが勝手に鳴り出したらたまったもんじゃないです。
…はい、こんな感じです。こんな倍音ならむやみに鳴らさない方がいいのはわかるよね。臨時記号シャープってのは下の音との繋がりをわざわざ明示してくれてる書き方なので、むやみに倍音を鳴らさず大人しく3に寄り添って引き立ててあげましょう。
あと一応覚えるべきシャープを挙げておくと、4♯(2にハモる)、1♯(6にハモる)とかだね。どんどん寄り添ってください。
そういう感じ!
ここで再掲。
フラットがついてたら、倍音鳴りめのしっかりした発声で歌おう。("ハモられる"意識で)
シャープがついてたら、他の人の倍音に寄り添った発声で歌おう。("ハモりにいく"意識で)
はーい、言いたいことを言えたのでここで終わりです。
といいつつもうちょい詳しく話したくなったので話します。シャープとフラットの由来的な部分に触れつつ根本的な話を。
まずね、全音半音ってあるけどこの全音って何か知ってますかね。これはピタゴラス音律的には周波数が9/8倍となる二音の関係として表されます。この音高差が古来より旋律の基準として用いられてきたので、"全音"なんていう基準めいた呼び方をします。よくわかんないかもだけどとりあえず全音離れた音があったら 低い方の音の倍音が高い方の音と調和してるんだな ってくらいの認識を持っといてください。
あと全音二個分の差の場合、5/4倍音にとても近い。なのでこれもまた一つハーモニーの基準となっています。三度ハモりっていう言い方や、コード理論で1 3 5 7 9 11…みたいに一個飛ばしでハーモニーを積み重ねるのはこれが理由の一つですね。
ところで調の1234567って、まあ言っちゃえばドレミファソラシドって、すごく綺麗に聴こえるように調節されていて自然に耳に入ってくる音色になってるけど、
なんか変なとこに半音挟まったりしてるよね??
ミとファの間、シとドの間が半音差だったりするよね。これはまあ、しょうがないんですよ。。。だって綺麗に聴こえるんだもん。。。(深掘りしたい方は勝手に調べてください)
まあいまはですね、全音っていうのは音の倍音の関係から導ける音の幅で、ハーモニーを作る上で基準となったりするけど、半音はいわば帳尻合わせ的に生じちゃった音の幅なんだなあって思ってください。
つまり、音の幅として、全音の方が本質的なんです。
(ハーモニーの観点の話です。メロディの観点では半音もわりと大事です。また今度気が向いたら話します。)
でね、ミとファの間が半音なのはね、普段はいいんだけど、時にはミの全音上の音も使いたくなるよね…
ハーモニー的にやっぱりたまに使いたくなるわけですよ。そこで登場するのがシャープなんです。
ファのシャープって、ファの半音上って意味だと思ってたでしょ?でも実はね、より本質的には、ミの全音上ってことなの。
だからこそファのシャープなの。ファはミの一つ上っていう意味合いがあるでしょ。そういう意味でファにシャープを付ける。ソのフラットで表記すると意味合いが違ってきちゃうのよね、ソにはミの二つ上っていう意味合いが出てきちゃうから。
そういうふうにして、シャープは誕生しました。
ソのシャープが出てきたらそれは、ファ♯の全音上って意味。そしてミの全音二つ上っていう意味。
そして全音上っていうのは倍音の関係上本質的に、下の音に"ハモりにいく"という意味合いをもっている。
シャープ…他の音に"ハモりがち"。
なんて言いかたをしたけど、これは実はある意味シャープの定義でもあるんですね。
じゃあフラットはどうでしょう。ふつうにシャープの逆です。全音下、という意味合いが出てくる。
ミとファは半音違いだけど、ファの全音下をハーモニー的に使いたくなる時がたまにやってくるわけ。そういうときにミのフラットを使う。
ミのフラットはミの半音下って意味?いやいや、ファの全音下の音なんです。ソの全音二個下の音なんです。そういう意味なの。
ハーモニー的に基準になるのは半音ではなく、あくまでも全音なのです。
まあそういうわけで、
フラット… 他の音に"ハモられがち"。
なんです。
ファの全音下っていうことは、九倍音がファになるということ。五倍音がソになるということ。
だからこそ、"ハモられがち"。
というか、"ハモられるべくして"誕生した臨時記号、なんです。
そういうことで、再再掲。
フラットがついてたら、倍音鳴りめのしっかりした発声で歌おう。("ハモられる"意識で)
シャープがついてたら、他の人の倍音に寄り添った発声で歌おう。("ハモりにいく"意識で)
以上で、ほんとのほんとに最後になります。
フラットとシャープで意味が違う理由。
わかっていただけましたでしょうか。
音の音との関係性を深く理解することで、ハーモニーをより深い意味で感じられて、もっと楽しく歌うことができるようになります。
みんなで楽しいシンギングライフを送りたいですね!
それでは!
2019/9/19 ぴーなっつ
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