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梅雨が終わり、梨の季節

梅雨明けが8月にかかり、ようやく
夏到来。
今年は本当に梅雨らしい梅雨だった、
そんな感想を持つ人も多いはず。
とにかく雨の降らない日がない、
そんな印象の7月であった。

8月に入り、我が家に細長くて重たい
箱が送られてきた。
毎年恒例の梨、このタイミングは
幸水である。
母親の実家が梨農家で、叔父夫妻が
今も栽培を続けているため、毎年
おすそ分けを頂いたり、購入させて
もらったりするのだ。

子どもの頃から、8月と言えば梨の
季節であった。
最初は幸水、やがてそれが豊水へと
切り替わり、9月になると新高という
品種が出て来て梨の季節が終わりを
告げる。

幸水は、みずみずしくてフレッシュ、
スッキリとした甘みの、真夏に最適
な味わいだ。
それに比べて、豊水はより円熟味の
ある甘味。
新高は、ガリガリとした食感と、
甘みの少なさゆえ、幸水・豊水の
兄弟に比べてかなり「格落ち」という
感じだが、長持ちする利点がある。

私の好みは、断然豊水である。
まだ小さい頃は圧倒的に幸水ばかり
食べていた気がするのだが、いつ
しか豊水が出回るようになって
その味を覚え、早くから出回る幸水
よりも、8月のお盆過ぎあたりから
出回る豊水を好むようになった。

そんな私の梨にまつわる懐かしい
記憶を、丁寧な調査で裏付けされた
ストーリーで、まざまざと思い出さ
せてくれた書物が、昨年の冬に
出版された。

出版された12月頃に、自分のFacebook
ページでも紹介したのだが、この本には
とても引き込まれた。

「ブリーダー」と言うと、真っ先に
「ペディグリーチャム」が思い浮かぶ
私だが、実はこの「ブリーダー」、
動物だけでなく植物相手の職業でも
あるということを知っている人は少ない
のではなかろうか?

著者の竹下大学さんは、正にその植物
相手のブリーダー。
2004年に、北米園芸産業の発展に多大な
貢献をした品種を育成した育種家を表彰
する All-America Selections 主催の
「ブリーダーズカップ」
初代受賞者として、世界で唯一選ばれた
というすごい人。

叔父の梨園は、埼玉県鴻巣市という
ところにある。
幸水と豊水は、埼玉県がお隣の千葉や
茨城と品種改良競争を繰り広げる中で
生み出した品種だったと知り、自分が
40数年食べてきたこれら梨の品種に
より一層愛着が湧いてきた。

この本には、梨を含む7つの植物の
品種にまつわるリアルストーリーを、
緻密な取材と読ませる構成力で
見事に描いている。
じゃがいも
リンゴ
大豆
大根
カブ
ワサビ
どの章を読んでも、非常に興味深く、
面白くて、教養になる。

リンゴと言うと、青森の「奇跡のリンゴ」
木村秋則さんを思い出す。

この木村さんも、「絶対不可能」と
言われた完全無農薬リンゴを作るという
偉業を成し遂げた「ブリーダー」だと
言えるだろう。
TVをはじめとするメディアに取り上げ
られまくったので、今や知らない人は
いないくらいだと思うが、この話を最初
に聞いたときは本当に心が震えたものだ。

「ブリーダー」という、植物のチカラを
引き出していく興味深い職業に、是非
思いを馳せてみて欲しい。

ちなみに、日照量が少なくて甘みが
少ないのでは?と心配していたが、
幸いにも杞憂で済んだ。
ご馳走様でした。

己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。