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「糞土師」という生き方

読みは「ふんどし」
その命名からして人を食っているが、
ご本人は至って大真面目、
さわやかな笑顔がまぶしい。

「野ぐそ」歴36年

信念を持ってひたすら野ぐそ生活。
お陰で奥様にも逃げられた。
それでも野ぐそを続ける。
今年は古稀を迎えるはずだ。

その人の名前は、
伊沢 正名(いざわ まさな)さん
Facebook上で知人がシェアしてくれた
のをきっかけに知ることが出来たのだが、
この人はすごい。

糞土研究会「ノグソフィア」
こちらを主宰されているが、
ご本人はネット難民とのことで、
ケータイもなければネットもしない。
あくまでも前近代的な生き方
徹している。

「地球にやさしい」
なんて言っている 企業のSDGsや
メセナ、フィランソロピーといった
活動が、本当にちっぽけに見えて
くるほど、その思想は本格的。

当初、自然保護運動をしていた氏は、
屎尿処理場建設の反対運動に出会い、
結局人間は自然を保護したいのでは
なく、自分に都合の良い自然だけが
欲しい
のだという気付きを得た。

「人が自然に返せるモノで、
自然が喜ぶモノはウンコだけ。」

他の人工物は、確かに自然が分解する
にはとても手間がかかる。
菌類が速やかに分解してくれるのは、
ウンコだけ
だろう。

人だけでなく、自然全体が、食べて
排泄するという行為を通じて循環の
一部を担っているのであり、人が
その流れを「ごみ処理」の名の下で
断ち切るべきではない。
そんな強い信念を持って、いまだに
野ぐそを続けていらっしゃる。

最初は紙でお尻を拭いていたらしい。
しかし、ある時自分が野ぐそした場所
を掘り返す機会があり、紙の分解が
圧倒的に遅い
ことに気付いた氏は、
以降紙で拭くことを止めたそうだ。

代わりに、「葉っぱ」で拭くことを
始め、2017年には
『葉っぱのぐそをはじめよう』
という書籍まで出している。

葉っぱの中には、高級トイレット
ペーパーもかなわないような素晴らしい
拭き心地 のものもあるとか、
蕗(ふき)の語源はお尻をふくこと
から来ているのではないかと思うほど
使いやすいとか、とにかくここまで
野ぐそを極め尽くしていることに、
ある種の感動すら覚える。

5年前にり患した舌癌との闘病で、
「糞土思想」を深めたという伊沢さん、
極めるとはこういうことだ!
という姿勢を見せられて、
妙に興奮を覚えてしまった。

さすがに、今の生活で野ぐそを
取り入れることは出来ないし、
そもそも疫学的、衛生的に問題が
ありそうだが、氏の考えに触れて
「当たり前を疑う」
ことの大切さを改めて思う。

また、自分も頭のどこかで常に
眉唾だと思っていた
「地球にやさしい」
という欺瞞を、スパッと一刀両断

している点は、大いに学ばせて
いただいた、感謝である。


己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。