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2019/12/05 江戸川乱歩『貼雑年譜』(君が僕を知ってる 02)

午後、友人Kくんと河原町三条の丸善で待ち合わせ。お互い時間前に到着していたのに、「着いたよー」とメールも送らず浮かれて棚散策をしていたら結果的に待たせることになってしまった。

ちょっとお茶して、清水三年坂美術館へ。以前、超絶技巧展を見逃したわたしは、Kくんの感想を聞く。今日の彼はとにかく安藤緑山の牙彫をわたしに見せたかったらしい。展示されていたバナナと貝に舌を巻く。彼がわたしに見せたがったのがよくわかる。確かに好きです、ああいう箍が外れたような作品。

「THE 京都」な二年坂を寄り道しながら歩いて、シェリーを飲みに行く。途中で寄った店で鳥獣戯画の蛙の香立を「誕生日プレゼント」だともらったばかりなのに、江戸川乱歩『貼雑年譜』が「お祝い」として差出されて驚いた。

乱歩大人のスクラップ帳『貼雑年譜』は、講談社江戸川乱歩推理文庫の特別補巻として出版された。その後、東京創元社から精巧な複製(限定200部)も出たが、こちらはおいそれと手を出せるものではない。だから、わたしのような者が見たいと思えば、先の講談社版を頼る他ない。

気になりながらも機を逃し、ずっと求めずにいた件の一冊の話をしばらく前にKくんにした。それを彼は憶えていて、贈物にしてくれたそうだ。わたしがあまりに喜ぶので、彼も驚いていた。「そんなに喜んでくれるならあげた甲斐があるよ」

『貼雑年譜』を肴にシェリーを飲む。昔の出版広告の煽り文句や乱歩のちょっとした一言に笑いながら飲む。わたし達もいい歳した大人になったけれど、していることは出会った頃と変わらない。そうであることの居心地のよさは、長く友人であるからこそだ。彼もまた「わかっていてくれる」、わたしにとっては得難い大切な「ともだち」のひとり。

ほろ酔いで店を出て、フランソアでお茶を飲む。月がきれい。川端通りを歩く。「よいお年を」と言いそびれて別れた。だからまた、そのうちに。

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