音や味のこだわりって結局同じなのかもしれない。たまに下をむいてしまう。
昨日は趣味である弦樂団の練習。
始まりはチューニングから始まる。オーケストラならばオーボエのAの音で各々の楽器をチューニングする。
弦楽合奏ならばチェロの音にコンマスが合わせ、そのAを全員が合わせる。
例えば変な話、その音が正しい440Hzの「A」でなかったとしても
その音に合わせるのだ。
「違う違う!!」とその「A」でなく正しい440HzのA音に一人がしたとしたら他の弦も「A」と相対的な音で合わせていくから
結局一人だけ、どの弦の音も全体とは合わなくなる。ゆえに合奏をするとハーモニーは乱れる。
私が子供のころからお世話になっていたヴァイオリンの先生は、「耳」で音に親しみ、感受性や表現力を重視する方だった。
いわゆる「絶対音感」が養われる。「相対音感」もそう。
しかし、耳を養うがあまり楽譜が読めないw
今でこそマシになってきたが、いまだに新しい曲を弾けるようになるには読譜より耳コピの方が早い。
そんなこんなで相対的な音からはみ出る音にはかなり敏感で、聴くと鳥肌がたつ。勿論自分の技量不足で不満が溜ることもある。
自分がその絶対音感があることに自覚がなくて、楽器弾いてればみんなも当然あるだろうと思っていた。が、実際そうではないことを知ったのはつい最近。
Aの調弦をするとき、コンマスの音と合ったら音を出すのを止めるというルールがある。
全体の音がやんだら、ほかの弦の調弦をするのだ。
私は今、見習いコンマスなのでそれぞれの音が合っていくのを聴いている。
しかし
「お前、それ絶対あってないだろう!」というAの半音近く高い音で調弦を止める人がいたりする。
そしてそのままほかの弦も相対音感で合わせていく。
当然D,G,E線の音も高くなる。
しかし、誰も何も表情を変えず淡々と調弦をする。
え、自分がおかしいの?
見習いコンマスは自信のなさからそれが言えなかった。
そして合奏は、楽譜に書いてあるf(フォルテ)やp(ピアノ)を自分の解釈で弾くのではなく、こちらも相対的なものとなる。
他のパートから出る音の大きさを聴きアンサンブルとして成立するよう、音を出していく。
一人で弾くfと何人かでアンサンブルするときのfは違うことが多い。
私は音が大きめなので、必然的に音をすこし落とす必要がある。
周りをお構いなしにバリバリ弾くのは違うのだ。
弱さや自信のなさは改めてそこで足を引っ張る。
後ろからゴリゴリ。ゴリゴリ。。。
どんどん私の顔は引きつる。音が大きいので入りを間違えたりされると
たまに引っ張られてしまう。。。
それで私のパートがアンサンブルを乱したら、私の責任なのだ。
ちゃんと、言おう。
相手が年上だろうが経験がたくさんあろうが、どうしても自分に自信が持てなかったとしても
自分の感覚を信じよう。
どうしても私は10年以上のブランクがあるため、引け目を感じてしまう。
それでもブランク空けてから13年は楽器を弾いているのだから。
と、弱っちい私は心に決めたのでした。
そしてこれは焙煎の部分でもたまに登場する。
日本であれ世界であれ、コーヒーの今の流れはスペシャリティ文化が根強くなってきており、酸=コーヒー豆の持つ個性でいかなる優れた風味特性を持つか、という点にフォーカスが当たっている。
私がするローストは2回焙煎する、いわゆる「ダブル焙煎」というものだ。
それをすることはもちろんメリット・デメリットがあり
メリットは飲みやすくなるということ。飲み終わっても口に残ることがなく、すっきりとした味わいがご好評いただいている。
デメリットはその豆が持つ個性が若干弱まることだ。
そういう意味では今のコーヒーの流れには逆行しているところがある。
それでも、シングル・ダブルと両方飲み比べた上で、今の焙煎方法を選んでいる。
デメリットである抑えられる風味特性をどれだけ損なわれずに煎り上げられるか、を日々研鑽している。
たまに同じ業界の人と話すと、ダブル焙煎を止めることを勧められる。
手間も掛かるし、目減りも多くなるし、利幅が減るのだ。
自分の働きを時給換算したときに明らかに効率が悪い。
そして「今風味が素晴らしいコーヒーがたくさんあるなかで、敢えてそれを抑える意味が分からない」となるのだ。
しかし、言ってしまえば、私は他でもコーヒーを飲むが
いかに素晴らしいコーヒーでも味が強すぎて、全部飲めないのだ。
そして弊社のコーヒーを好むお客様も、そういうコーヒーや、劣化したりの間違った「不快な酸味」を嫌い、当店にやってくる。
別に他を下げるつもりはなく、一口目は「こんなに美味しいコーヒーがあったのか!」と感動することも沢山ある。
ただ、全部飲めないだけ。
どれだけ手間がかかり非効率でも、長く、どれだけでも飽きずに美味しく飲める味づくりを目指している。
それを誇りに思いやっている、のに。
どうしてもその業界でも目上だったり職歴が長かったりする人に何か言われると、胸を張って持論を言いきれない弱さがある。
職歴7年を引け目に感じてしまう自分。
これではヴァイオリンと一緒だ。
コーヒーに限ってはうちのコーヒーを支持してくれる沢山のお客様がいる。
この、自分の自信のなさをいい加減脱却し
チキンな自分を卒業したい。
どんな大きな場所でも「うちのコーヒーは一番です」と胸を張れるように。
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