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呑兵衛たぬきです。エッセイ書いたり、詩や小説を書いたり、写真を撮ったりします。仲良くしてね。

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あなたを見つめた3日間

その電話がかかってきた時、僕は本当にどうしようもない奴だという事実が、避けようもなくやってきた。二日酔いで鉛のように重い体をなんとか動かし、スーパーへ入ろうとした頃のことだったと思う。いつも通り気の抜けた声で電話に応じると、母さんが震えた声で言った。 「陽ちゃん、お父さんがね、倒れたの。心肺停止なの。」 * 電話の向こうで母さんは救急隊員に呼ばれ、通話がきれた。その後も何度か電話がかかってきて、同じように途切れた。 分かったことは、とにかくお父さんが死にかけていることと

    • 君が愛しくなるまで。

      幼馴染といえる友達は、一人しかいない。 あの頃そいつは暴力的で、無理やりストーキングに付き合わされたり、とてつもない癇癪を起されたりなど、「友達」という言葉が呪いに感じるくらい、避けたい人間だった。 人間味をもって読んでもらいたいから、仮名をつけよう。風太(ふうた)だ。 彼が無茶苦茶だったのは小学生の頃だけで、中学生になるころには随分付き合いやすくなっていたようにおもう。 それでもやっぱり自分は風太が苦手で、それでいて嫌いにはなりきれなかった。 僕は小学3年生から中学に上

      • ベンチで眠るおじさんの幸福

        涼しくなってきた。まだ日中は暑いし、クーラーをつけることも多いけれど。 でも、少なくとも出勤退勤のドライブ時は、窓をあけるだけでとても気持ちがいい。 特に仕事が終わって、夕暮れのなかで冷えた風を感じると、それはもう幸せだ。生活や仕事のなにが辛かろうが、とにかくその瞬間は幸せなのだ。だから秋はいい。 なにせ、暑がりだ。涼しいのが好きだ。夜、風呂上りに涼みに出れることのなんと気持ちのいいことか。さっきそれをやりに公園に行ったら、疲れもあって横になりたくなった。なので、おりゃー

        • 沈む風船

          田んぼに映る空へ 風船がとんでいった あの紐に まだすこし 体温が残っているから すこしだけ わたしもいなくなる アメンボも 蛙も 空を泳いでいるのに それに気づかないまま 冷たい風のなかの 幼い夏だけが 雲をおいかけていく さよならと 言わないせいで なにもおわりに なっていない わたしの風船  ずっとむこうへ 消えてった。 

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        あなたを見つめた3日間

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        記事

          薄毛とは負け戦である。

          薄毛とは負け戦である。 我が軍はかつての輝きを失い、今や老兵ばかり。国土は減りつづけ、若い兵はいつの間にか去ってゆく。 大国と言われた黄金時代など見る影もない。今はただ、無情な太陽が荒野を照らすのみ。 どうしてこうなってしまったのか。私は、王であったというのに。 δ 王は無力であった。微かな違和感が徐々に膨れ、確かな疑念に変わった頃にはもう、国は蝕まれていた。 他国へ援助を求めても「諦めろ」と門前払い。臣下達の目の色が薄くなっていくのを肌で感じながらも、何もできなかっ

          薄毛とは負け戦である。

          醤油

          醤油のなかに 汚い 汚いものが溶けている 刺身や コロッケなどに ぽたぽたとふりかけて ぱくり 口から わたしに戻ってくる 汚い 汚いもの 部屋の空気の すみっこのほう ぢくぢく 腐りかけ ごくり 喉から 鼻へ また戻っていく 汚い 汚いもの 醤油よ 愛はあるか おまえの 黒い塩分のなかの そのかけらに  光はあるか 刺身や コロッケなど  部屋の空気や わたしのすみっこは ぼとぼとと 染まって しょっぱくなってしまった わたしよ 愛はあるか

          夢と綿毛

          産毛の浮くような、心地のいい陽射しで目が覚めた。あぁ、また酔いつぶれてしまったのかと思えば、見覚えのない野原があたたかく輝いていた。 遥か広大なその美しさに目を奪われていると、耳元に幼い声がやってくる。 「ワクワクするねぇ」 声のほうに顔をやろうとして、動けないことに気づいた。金縛りかと思ったけど、体が揺れている気もする。いや、というか、飛んでいってしまいそうだ。この体の軽さはなんだろうとおもっていると、急に歓声があがった。 まるで渡り鳥の群れのように、いくつもの綿毛

          夢と綿毛

          エスカレーターが怖い

          いつからエスカレーターに乗れるようになったんだろう。全然覚えていない。でも、幼い頃あの怪物が恐ろしかったことは、今も覚えている。 * とにかくリズムがつかめなかったんだ。ぬるぬると生まれ出でる階段達に、ずっと置いていかれる気分だった。大縄飛びに入れない感覚に近いかもしれない。でも、生き物に見えるぶんこちらのほうが難易度が高い。 ・・・巻き込まれかけている。そんな感覚が背後から自分の足に絡まってきて、どうしても踏み出せなくなってしまう。そのうち乗れると知っている親や姉はと

          エスカレーターが怖い

          お別れの日

          4年間住んだアパートの退居がおわった。ガランとなった部屋は、内見で一目惚れした時とおなじように輝いている。同じ部屋なのに、それはどこか遠くの光のようで、あぁここはもう僕の家じゃなくなるんだなと、感じる。 11時半に掃除がすんで、嫁さんとふたりで管理会社の人がくるのをまった。退去立ち会いの予定はあと30分後。そのあとは玄関をあけることができない。それが、なんだか不思議だった。 * 「結婚してはじめての家が、ここでよかったよね。」 穏やかな声でそう言われて、頷く。ほんとう

          お別れの日

          揺れる水色

          紫陽花が濡れている。蒸した森やコンクリ、それらが溶けた空気が佇んでいて、たまにふく風がそれを遠くへ広げていく。 ・・・梅雨の声が聞こえる。傘にあたる雨音に混じって、離れたり近づいたりしている。けれど、追いかけはしない。 熟してきた夜。 冷えた湿気が肌に触れ、体温をすこしさらっていく。そしてゆっくりと染み込んでくる、思い出。 いま、心は何色だろう。この花は鮮やかに滴って、どこか泣いているようだけれど。それを見つめるわたしは、同じじゃない気がする。どれだけ綺麗なものに触れても

          揺れる水色

          溢れる心地を飲み干して

          天気が酔っぱらっていた。コンビニで唐揚げ棒を買って出たときのことだった。いつのまに雨になってたのかと思ったら、やけに酒臭い。水溜まりには泡がたっている。一度店内の戻り、ビニール傘を買った。 勢いのいい雨音が頭上で響く。傘をさして歩いていると、飛び出し注意の子供の看板がひとりでに動き出していた。おいおい、本当に飛び出しちゃだめだろと、見当違いのツッコミが頭のなかに浮かぶ。看板は飛んだり跳ねたりしながら、機嫌よくどこかへ走っていった。途中、転ぶのが見えた。 匂いや白い泡からも

          溢れる心地を飲み干して

          カビが生えるほど閉まっておいて

          父さんが亡くなって、死は予期せずやってきても不思議じゃないと実感した。長年介護職をしているってのに、やはり仕事上の死など対岸の火事だ。 僕は18の頃に肺を患って一度死にかけているが、ケロっと退院して今に至る。ここまで10数年、一般社会人の一生分はアルコールを摂取してきたとおもう。齢30にして、すでに高血圧や不整脈としてツケを支払わされている人生。拾った命を雑に使っている。親不孝者だが、その片割れが死んでしまったぶん、罪も半分としてほしいなーなんて。 笑えない冗談は置いとい

          カビが生えるほど閉まっておいて

          今週も呟きで失礼します。次にあげる文章は、今までで一番力を込めて書いたものです。どうか読んでいただければと願います。

          今週も呟きで失礼します。次にあげる文章は、今までで一番力を込めて書いたものです。どうか読んでいただければと願います。

          特定の酒を好きになる理由は、なにも味だけじゃない。 変えがたい酒に乾杯。

          特定の酒を好きになる理由は、なにも味だけじゃない。 変えがたい酒に乾杯。